Treasure Dataでエバンジェリストを務める若原強が各界注目のゲストを招いて対談する「PLAZMA TALK」。
今回のゲストは、「アドレスホッピング」という暮らし方を自身で実践されながら、その暮らし方を発信する「ホッピングマガジン」の編集長も担われている市橋正太郎さんです。今回はアドレスホッピング × デジタルについて考えていきます。COVID-19の感染拡大に伴い、一時的に、一箇所に長く滞在している市橋さん。2年半ぶりの「定住」は圧倒的に楽とのこと。一方でアドレスホッパーの本質である「移動しながら生活する」価値を改めて見直しています。
本対談は3回に分けて配信します。第2回は「クリエイティビティと生産性を高め続ける暮らし方とは?」について伺います。
Topics
人生を自由にするために、選択肢を増やしていく/定住は「圧倒的に楽」/移動生活はインプット型/定住のメリット/毎日同じことをして脳に楽をさせる/ルーティンと惰性/発酵玄米と野菜と味噌汁/ストイックな実験的生活/定住と遊住のハイブリッド/クリエイティブと生産性/移動してインプット、定住してアウトプット/リモートワークはビジネスパーソンのインプットを増やす/アンチテーゼ/クリエイティビティは自然な生き方から
Yasutaka Kato: Project Assistant Professor, Keio University School of Medicine / Representative Director, Japan Association of Sauna
Tsuyoshi Wakahara: Evangelist, Treasure Data
Recording: 2020/04/15
※収録はオンラインにて行っています。一部背景に環境音が入っている箇所あります。ご了承ください。
人生を自由にするために、選択肢を増やしていく
定住は「圧倒的に楽」
若原 今のスナップショットで見ると、定住状態にいる市橋さんだと思うんですけど、世の中の大半の人って自宅に定住しているという状況しか経験したことがない人が多いと思うんです。その人たちの定住状態と、市橋さんの今の定住状態ってちょっと違うと思っていて。市橋さんは、アドレスホッピングして、1周回った上で今の定住状態だと思うんです。そんな市橋さんが、改めて感じている定住する良さなど教えてもらえないかなと。今、外出自粛で家の中にいることが多いので、家にいるって実はこういうことよく見えてるよ、みたいな話とかもしあればぜひお伺いしたいです。
市橋 僕、定住やったとき、選択肢としてめっちゃいいなと思ったんです。それは、1万年前ぐらいに人類がそれを選択したっていうのもなんかわかるなというか。やっぱり、圧倒的に楽。精神や体力的に、行き過ぎると精神的には疲れることはあるかもしれないですけど、体力的には圧倒的に楽なんですよね。余った体力を移動ではなく、生産活動に使えるというのが、人間を発展させた一つのエンジンなんだなと思ったぐらいです。
移動生活はインプット型 / 定住のメリット
市橋 やっぱり、マインドシェアが、移動しているとどうしても外に向きがちなんです。出会う人や、新しい土地、新しい空間のような、外的な情報が多くなるんですよね。つまり遊動生活ってどちらかというとインプット型なんです。すごくインプットが増えるので、センスが良くなったり、アイデアを思いついたりっていうのは、実はアドレスホッピングのほうがあると思います。それを寝かせて、温めて、形として生産していくというフェーズは、圧倒的に定住のほうが向いています。
毎日同じことをして脳に楽をさせる
市橋 毎日同じことをするって大事なんです。決まった時間に決まった人と会議をする、決まった時間に作業をするって、脳がすごく楽じゃないですか。移動しているとどんどん新しいこと入ってきて、ルーティンが皆無なんです。でも、それをあえて「ルーティン化」することで脳の負荷を下げて、それを何か物事を生み出していくところに使えるというのはすごくいいところですね。
若原 1周回った名言感がありますね。
市橋 僕、生産性が3倍から5倍ぐらいになっているんですよ。
ルーティンと惰性
若原 世の中的に言うと、ルーティンってどちらかというとネガティブな文脈で使われるのが多い言葉だと思うんですが、ルーティンがあることの良さって、そういう話を伺うと、やっぱりありますね。
市橋 本当に。実感します。
若原 それを意識的にとり入れていく、というのがいいのかもしれないですね。それがまた、ずっと続いちゃうと違う話かもしれないですけど。
市橋 そうなんです。ルーティンと惰性は全然違うんです。続いちゃっていることっていうのはダメで、意識的にこれを続けるという、意思を持ってとり入れないといけないなと思っていて。
発酵玄米と野菜と味噌汁 / ストイックな実験的生活
市橋 僕、最近とり入れたルーティンで一番いいなと思っているのは、断食です。移動生活は食が結構やばいという話をしたんですが、食生活をこの際完全に見直してやろうと思って、コロナに入る前に「断食道場」へ行ったんです。そこの断食道場は結構面白くて、お粥や白湯などを、苦しい断食じゃなく、緩いファスティングというか、超少食ファスティングというのをコンセプトにやっているところで。つまり、ちょっとだけ食べるんです。かつ、発酵玄米や発酵食とか、日本古来の体にいいものだけをとろうと。お肉やお酒はやめる。そういうのを1週間体験して、これ本質的だなぁと思ったので、今も1カ月ぐらい続けているんですが、そしたら僕、体重がもともと75kgあったのが、今63kgまで落ちたんです。
若原 すごいですね。一気に落ちましたね。
市橋 かつ、何の苦しさもなく。普通、1日生きていると、眠くなるタイミングってあるじゃないですか。全くそれがなくなって、消化に使わないので、すごく元気なんです。
若原 それは具体的には、今どういうものをご飯として食べているんですか?
市橋 今は玄米を炊いて、それを3日ぐらい寝かせて発酵玄米にしたものを40、50グラム。あとは野菜のちょっとした料理、小皿みたいなものが2、3皿と、味噌汁とかですね。それを1日2食だけ食べるという生活です。
若原 1日、2食なんですね。
市橋 そう。しかも12時と17時、夕方に食べるという感じでやってみていて、ある種実験的にやってみているんですが、そうすると自炊もできるようになるし、量もちょっとなので、そんなに頑張らなくて作らなくてもいいんですよね。、それで、食事のリズムもできて、めちゃくちゃ健康になってきたという感じです。
若原 なるほど。コロナ明けにそれにサウナも合わさると完璧な健康体になりそうですね。
市橋 それ、結構やばいですよ。でも、それもちょっと実験しないといけないんですが、1回断食中にサウナに行ったんですよ。ただ、あんまりととのわなくて。もしかしたら、相性が悪いのかもしれないです。そこを危惧しているんですが。なぜなのかはよくわからないんですけど。結構初期だったので、体が無理しているところに行っちゃったから、かもしれないんですけどね。今はどうかわからないですけどね。
若原 確かに、食との関係は何かあるかもしれないですね。
市橋 サウナって結局、「快感ホルモン」をどれだけ出せるか勝負じゃないですか。それが、酒飲んで出やすいみたいな話とか、欲求を満たすためにとにかく食べてセロトニン出しまくってみた状態と、今みたいにストイックにやって自制的に生きている状態だと、もしかしたら感じ方変わるのかなと思って。逆に今度サウナ行くの楽しみになっています。
若原 その辺、またぜひ教えてください。サウナに行けるタイミングあったら!というか、一緒に行きたいですね!
市橋 行きましょう!僕、全然横でととのっていないかもしれないですけど(笑)。
若原 ありがとうございます。そしたらこのあと、外出自粛の話がいったん落ち着いたあとも、暮らし方のサイクルって変わりそうなイメージありますか?
定住と遊住のハイブリッド
市橋 そうですね。ゆっくりめに移動してみようかなと思いますね。1カ月ぐらいとかで。ちょうどコロナのタイミングがあって、ホテルが長期貸しのプランを始めたりしているんですよ、1カ月とか3カ月とか。そういう環境変化もあり、1カ月ぐらいがちょうどいいのかなって、最近思い始めていますね。
若原 じゃあ、結構サイクルが長くなるかもしれないってことですね。
市橋 そうですね。明確にインプットとアウトプットで生活スタイルを変えるっていうのがわかったので、アウトプットを出し切ったら、1回移動しまくるタイミングを持つ。そして、また貯まってきたなと思ったら、定住っぽく過ごしてアウトプットを頑張ってやるなど、そういう柔軟な感じで行けるといいなと思ってます。
クリエイティブと生産性
若原 クリエイティブな仕事をする人などは、そういうスタイル、向いているかもしれないですね。自分の仕事のサイクルに合わせて、暮らし方も上手くシンクロさせるというか、そういう暮らし方は面白そうですね。
市橋 アーティストの方とか結構多いんですよ。最近、The fin.(ザ・フィン)というアーティストがいるんです。彼ら面白くて、1曲作るごとに場所を変えるんです。この曲はロンドン、この曲は千葉、この曲は埼玉で作る、という。そういうのが結構出てくるんですよ。
若原 その暮らす町が変わるだけで、得られるインスピレーションとか全然変わりそうですもんね。
市橋 そうなんですよね。湘南乃風の若旦那さんも、絶対1年に1回は引っ越ししているって言ってましたし、作家さんも、昔はホテルにこもって書いて、終わったら解放されるみたいな感じじゃないですか。そういう「場所」と「クリエイティブ」の関係は、やっぱりあるのかなと思うんですね。
若原 そう考えると、最近「多拠点居住」な言葉も、よく目にするようになってきましたね。よく言われるのは、都会と田舎のいいとこどりみたいな話がありますが、もっと前のめりにというか、自分の生産活動に合わせたサイクルという捉え方が結構面白そうですね。
移動してインプット、定住してアウトプット
市橋 そうだと思いますね。これからの人間は、知的活動をせざるを得なくなるじゃないですか。しょうもないのはAIが全部やってくれるので。そうなると、いかに自分のクリエイティビティを上げたりとか。クリエイティブと生産性って相性悪いじゃないですか。効率良くしようと思ってできるものじゃない、というか、出てくるの待ちのようなところがあると思うんです。でも、アイデアの作り方のような本がありますが
、そういうの見ていても、1回たくさんインプットして、それをいったん全部忘れて、寝かして、頭が勝手に整理してくれるのを待つみたいな。それに結構近いと思うんですよね。バーっと移動して、いろんな人に会って、いろんな話聞いて、バーっとインプットして、それを1カ月ぐらい定住して寝かして、発酵させてみる。そういう暮らし方が、もしかしたらこれからの時代に合っている暮らし方なのかもしれないですね。
若原 確かに。あと自然なんでしょうね。
リモートワークはビジネスパーソンのインプットを増やす / アンチテーゼ
若原 僕も含めてかもしれないんですが、今もビジネスパーソンの大半は、どちらかというとフルリモートワークになって、通勤時間とかもなくなって、余裕ができたから本を読むようになったとか、オンラインセミナーに参加するようになったという人が多い気がしているんです。要は、インプットが増えている人が多いなと思ったんです。もしかしたら、そういうインプットの仕方とか、逆に言うと普段はインプットする時間がなくて、ひたすら追い立てられて仕事をこなしている、みたいにも言えるじゃないですか。その状況の中、そもそも不自然な面もあるのかなっていうのを今のお話を聞くと思います。
市橋 ありますよね。本当にそうだと思って。知的生産者を追い立てるというか、卵産め、みたいな感じのテンションでマネージメントするスタイル、あるじゃないですか(笑)。産め、って言われても、出ねえよ、みたいな(笑)。あのスタイルへのアンチテーゼかもしれないです。
若原 確かに。出ないものは出ないよ、って感じですよね(笑)。
市橋 だから、適切なインプットとアウトプットのバランスを保つ。それを、今リモートワークでできた時間でやる、っていうのもいいと思いますし、生活の中に組み込むいうか、移動というのを組み込んでしまって、何も考えなくても勝手にインプットされる状態を作っちゃうとか、そういうような話だと思いますね。
クリエイティビティは自然な生き方から
若原 良い悪いの話ではないのかもしれないですけど、アドレスホッピングしながらインプットして、また次のサイクルで、一定の定住期間を設けてアウトプットするっていうのと、割と自然にそのサイクルが回る感じが、お話を伺っているとあって。インプットもいろんな人に会って、どんどん集まっていくじゃないですか。それを、落ち着いた時間に振り返ってまとめようか、っていう気に自然になりますね。その自然さから生まれるクリエイティビティってやっぱり大事だなと思うので、そういうサイクルも、それが別に絶対的に正しいっていうわけではないかもしれないですね。あらゆる仕事に対してそうじゃないかもしれないですけど、そういう手段が上手くはまるなと思う仕事とか状況においては、すごく有効な手段になるのかなっていうのは改めて思いました。
市橋 そうですね。
若原 ありがとうございます。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
第2回は以上です。いかがでしたか?
市橋さんのトークの続きは、最終回 アドレスホッパーのライフログは魅力的なデータの宝庫(ゲスト: 市橋正太郎さん第3回) へ続きます。