トレジャーデータでマーケティングを担当している堀内です。 今回はトレジャーデータのパートナー企業であるデータアーティスト株式会社(東京都港区芝、以下データアーティスト)を訪問し、取締役副社長の作左部 勇次郎さんに、「TREASURE CDP」と連携を開始した「DLPO(ディーエルピーオー)」についてお話しをお伺いしました。
データアーティストはコア技術として人工知能を事業の中心に据え、LPO(Landing Page Optimization:ランディングページ最適化)やディープラーニングを用いたマーケティングメッセージの自動生成などを事業展開されている、まさに「AIカンパニー」! 今回は「TREASURE CDP」と「DLPO」との連携により実現できる機能についてお話いただきました。
LPOからスタート、社会課題の解決やAI人材の育成にも力を注ぐ
作左部 本日はよろしくお願いします。
データアーティストは、人工知能、いわゆるAIの技術を軸に、デジタルマーケティングのソリューション開発を行っている会社です。並行して、社会課題化している医療現場や製造業に関する業務効率改善といった、AIの活躍が期待されている領域にソリューションを提供するといったことも行っています。
会社自体は2013年に設立して、今年で5年目です。
堀内 トレジャーデータと同時期なんですね。
作左部 そうですね。もともと母体となる会社がありまして、SEOやLPOを行っていました。データアーティストはそのLPO事業を引き継ぐ会社として設立しました。ですので創業時にゼロスタート、というわけではありません。
コア技術として機械学習とか、今で言うところのAIをやっていたので、それをLPO以外の領域に活用する事業を徐々に広げてきました。現在は今後の事業展開を見据えて資本を増やしながら進めているという感じです。
私は役割としては主にセールスとマーケティングを担当しています。アルゴリズム構築など技術的な部分は代表の山本が担当しています。
これはAI全般に言われていることですが、AI事業のキーファクターは大きく3つあります。パフォーマンスを最大化するそもそもの部分であるアルゴリズム、読み込ませるデータの質、そしてそれを効率的に回すための計算基盤です。
データアーティストがこの中で最も強みとしているのがアルゴリズムです。正直ここが強くないと意味がないので当たり前ですね。代表山本の出身が、AIブームの火付け役とも言える東大の松尾先生の研究室出身で、いわゆる松尾研のメンバーを多く登用し、アルゴリズムを強化しています。
また、ユニークな点として、AI開発部長であるアマルがモンゴル出身で、モンゴルの学生との交流や人材育成を行っています。
堀内 モンゴルですか!?
作左部 はい。あまり知られていないのですが、モンゴルは国策として数学のバックグラウンドが強いんです。あとは先日の日経でも取り上げられたのですが、新潟総合学園という、専門学校として初めてAI学科を設立した専門学校と提携しました。モンゴルの件と合わせて、将来的なAIエンジニア人材の教育、育成を行っています。
そのようにしてアルゴリズムの部分、アカデミックなところ、研究にも力を入れながら、長期的なオフショアとしても取り組んでいます。
複数要素を組みあわせたA/Bテストが、独自ロジックで可能に
作左部 具体的な事業内容ですが、大きく2つの事業を行っています。
ひとつはマーケットプラッフォーム事業、いわゆるLPOです。もうひとつは、アドホックに案件ベースで行っているAIの受託開発事業です。
堀内 今回「TREASURE CDP」が連携するのはマーケットプラットフォーム事業分野の、「DLPO」というソリューションですよね。
作左部 そうですね。
はじめに申し上げた通り、LPOはデータアーティストが設立前から手がけている領域で、10年位経つんですね。いわゆるオウンドメディアのA/Bテストとか、もうちょっと深く掘った内容の解析であるとか。ターゲティングやパーソナライズと言われている、ユーザーごとに最適なページに導き、最適なコンテンツを配信するツールを提供しています。それが「DLPO」です。
堀内 一般的なLPOソリューションと、データアーティストの提供する「DLPO」の違い、特徴的な部分をさらにくわしく教えていただけますか?
作左部 一番特徴的なのは、「多変量テスト」ですね。
一般的なA/Bテストは、順を踏んで、まずビジュアルをA/Bテストしましょうとか、ボタンをテストしましょうとか、説得コンテンツの順番とか、その中身をテストしましょうといった感じで進めます。要素、項目のひとつひとつをテストしていきますよね。
我々の場合、それらの要素や項目を同時に組み合わせてテストすることができます。それが「多変量テスト」です。
堀内 1度のA/Bの中で、複数項目を盛り込んだテストができると。
作左部 はい。とは言えそれは組み合わせの妙とかあるよね、という方もいらっしゃると思うですが。あとは、組み合わせていたらそのバリエーションはいくつできるんだと。確かに単純に組み合わせていたらその数は膨大なものになって、一個一個のサンプリングの数でいくと追いつかないという課題がありますよね。
ですが我々はいくつかロジックを持って、代表的なパターンから残りの組み合わせパターンを予測することができます。そのロジックによって、少ないサンプリング数でもたくさんの組み合わせのコンバージョンレートを予測することができます。
堀内 例えばAの時に、LPの要素の中で文言が効いていましたと。絵を変えて、配置も文言も変えているけれども、文言が一番、このセグメントには効いていたと。それで別のセグメントにはBの絵が効いた、そういったことは多変量、つまり複数要素を変えたとしても、それらの相関というか因果が割り出せるということですね。かつ次のA/Bテストをするときに、複数要素を変えたとしてもその結果を予測することができると。
それが可能なのは、裏側で分析のロジックやこれまでの経験を持たれているからですか?
作左部 おっしゃる通りですね。
ターゲティングやパーソナライズの前提を担う「TREASURE CDP」
堀内 今回の「TREASURE CDP」との連携について詳しく教えていただけますか?
作左部 「TREASURE CDP」には、「DLPO」でターゲティングや、ユーザーごとにコンテンツをパーソナライズしていく前提として、ペルソナを作成してユーザーをセグメントしていくためのデータをストックします。
ストックしているデータを元に、「TREASURE CDP」内でユーザーに対してセグメントを振り、そのセグメントを「DLPO」側に連携します。オウンドメディア側のほうではセグメントに適したページを出していくことになります。
堀内 Cookieを「TREASURE CDP」で貯めて、例えばユーザーをビール好き、サワー好きというようにセグメントを振っていく。オウンド側、この場合はWebサイトのランディングページですね、そこにビール好きというセグメントのユーザーが来訪した際に、ビール好きセグメント用のA/Bテストを行い、最適化を行っていくということですね。
作左部 そうですね。
堀内 実は4年くらい前からずっと、「DLPO」とは、こういった取り組みはできるだろうと思っていました。
作左部 構想というか、概念としては連携した方が良いよねというのはあったと思うんですよね。ようやく追いついてきた感じですね。
3rd Partyデータでは正解のエビデンスを持てない
作左部 実は我々は、「TREASURE CDP」との連携以前にも、広告系のパートナーと連携してきました。ただ、それだと取ってきているデータに偏りがあったんですね。3rd Partyデータの特性上仕方ないのですが、あくまでも広告のためのデータというか。パーソナルなデータが入っているものは少なくて。
3rd Partyデータ前提だと、A/Bテストにも「正解の定義が、きちんとしたエビデンスに基づいていない」という課題がありました。
堀内 正解データがないと、本当に正しいかどうかわからないセグメントにA/Bテストを行い、ある意味A/BテストにA/Bテストをかけるようなことになってしまいますね。
作左部 これまではセグメントが正確ではない、つまりユーザー像が明らかになっていない状態がありました。そのような状態だと、最大公約数のユーザーに対して勝ちパターンを探しに行くとか、3rd Partyの限られたデータのなかでパーソナライズしていきたい、という取り組みにならざるを得ません。
一方で我々のオウンド側での活用という点を考えた時に、広告の文脈にあわせてランディングページで最適化するという手段もあるのですが、それだと短期的な施策になりがちなんですね。クライアントにとって施策が継続的な案件に繋がりにくい。そういった悩みがありました。
1st Partyデータの利活用で、正しいユーザー像に近づける
堀内 「TREASURE CDP」には、ユーザーのCookieとID、そして購買のデータを持たせて、それを繋ぐことで実際にユーザーが商品を購入したかどうか、そのユーザーはどの商品が好きなのか等のセグメントを精度高く設定することができます。広告系のDMPとの違いを2つあげると、ひとつにはまずセキュリティを強化して個人情報に準ずるデータも一元的に管理することができるようになったこと、もうひとつは「TREASURE CDP」は1st Partyのデータが中心であることですね。
作左部 そうですね。
堀内 1st Partyのデータであれば、ある種正解データを持てますよね。正解データを持った上で、それに基づいて設定したセグメントにA/Bテストを行う。セグメントによってどのクリエイティブが正しいとか好きといった評価検証ができる。
作左部 「TREASURE CDP」との連携で期待していることは、つまり1st Partyデータを利用することで、A/Bテストの精度が高まるということです。
「TREASURE CDP」にストックしている1st Partyのユーザーデータ、いわゆる顧客データに連携できるようになると、正しいユーザー像を明らかにした上で、A/Bテストの検証ができるようになります。その検証自体もキチンとした正解データにもとづいて見える化できる。まさにクライアントが期待していたところですね。
連携によりクライアントの期待に応えることができ、クライアントには短期的な施策で終わるのではなく、もっと中長期的な施策として「DLPO」をご活用いただけるようになると考えています。それはこれまでにはできなかった取り組みですね。