お客様像の分析に欠かせない「コンタクトセンターの履歴データ」活用術
コンタクトセンターは、データの宝庫です。お客様の生の声を知ることで、多様化するお客様像の分析や、商品・サービスにおける課題の早期発見などにつなげられます。
この記事では、コンタクトセンターの最も重要なデータである「お客様との履歴(CRM log)」について、その分類、運用の注意点、活用例などを、トレジャーデータ株式会社のカスタマーコンサルティングのメンバー・寺本が紹介します。
-
寺本 敬太
トレジャーデータ株式会社 Customer Consulting2020年にトレジャーデータに参画。生命保険会社の契約促進プロジェクトのPMとして、既存顧客や見込み顧客のデジタル行動データやチャネルデータをもとに施策からDB設計などCDP導入プロジェクトを支援。
<目次>
コンタクトセンターにとってのログ(log)の重要性
前回は「コンタクトセンター×データ活用で実現する「理想の顧客体験」」という記事の中で、CRM system概要をご紹介しました。今回はより現場に近いお話として、コンタクトセンターの最も重要な要素である「お客様との履歴」=「CRM log」の概要をご説明いたします。
ログ(log)は、コンタクトセンターの最大の資産と言っても過言でもありません。対話履歴や対応履歴、Caseと呼ばれることもあり、どのようなコンタクトチャネルであっても、お客様の生の声を残すという意味ではCRMにおける一番の価値となります。
ここでいう「CRM」とは、「Customer Relationship Management system」の略で、顧客管理システムを意味します。マーケティング領域におけるCRMと混同されがちですが、LTVやアップセル・クロルセルなどを目的としたマーケティング目線でのCRMではなく、純粋なマーケティング指標としてのCTRやCVR、またはお客様の満足度評価としてよく使われるNPSやアンケートなど、数値では表せないお客様像の分析や、リコールにつながりかねない商品・サービス課題の早期発見などに活用可能な貴重な情報群です。
CRMにおけるログの分類
CRM systemの多くは、それぞれの顧客マスタに商品やサービスが紐付けされて過去の対応履歴まで遡ることが可能になっています。顧客対応履歴としてのログは、大きく下記のデータに分類されます。
1.対話履歴(VOC)
VOC(voice of customer)と言われるもので、お客様の問い合わせ内容が含まれています。チャットやメールなどの場合は純粋なお客様の声として扱うこともできますが、例えば自動入力ではない電話対応の場合はお客様の声をオペレーターが手入力するので、どうしても個人の差異や意思などの一定のバイアスがかかります。そのため、よりフラットなVOCを取得できるような運用定義を定めておくことが重要です。
2.販売履歴
お客様マスタと紐付いている場合、お客様が購入した商品やサービスについての履歴が残っています。オペレーターはこの履歴を参照しながら対応を行い、いつ購入したのか、修理やサービス履歴などの参照はもちろん、サブスクリプションサービスの場合はいつ休止/解約したのか、それまでに問い合わせがあったのかなどのタッチポイントの解析としても活用できます。
3.販促履歴
DMやメールマガジンまたは商品に同梱している販促物などをいつ、どのタイミングでお客様に送ったかの履歴です。この履歴がお客様マスタと紐付いていない場合はメールアドレスや住所などで同一マスタとして紐付ける必要がありますが、企業と顧客の接点として「どのセグメントのお客様にどのタイミングで販売活動をしたか=タッチポイントを持ったか」を図る履歴として非常に重要な要素になります。
4.オペレーション履歴
お客様の購入商品に対するオペレーション履歴です。特に①の対話履歴と混同されることが多く、注意が必要です。
ダイレクトマーケティングの領域で特に重要になってきますが、お客様からのお問い合わせの結果から商品/サービスの購入/解約操作や、販促履歴のDM/メルマガ停止、修理手配など、お客様からのお問い合わせの結果として「何をしたか」がわかるように履歴を残しておきます。データ分析の際に具体的な商品/サービスの操作logと紐付けるため、データクリーニングの際に煩雑にならないよう注意して入力運用をする必要があります。
分析に耐えるデータ構成にするには
上記のように、CRM logにおいて様々なお客様情報がありますが、データとして抽出した際に、CRM systemの構成や運用により、全て同一カラムとなって出力されているパターンが散見されます。
特に①対話履歴と④オペレーション履歴が同一フォームにであったり、運用上明確に記載を分けていなかったりすることがあります。そのため、オペレーターによって混同して記載していることが多く、同一カラムで抽出された際に文言や構成がバラバラになり、これらを分ける作業がとても膨大になります。例えるなら、Excelの一つのセルに①と④の内容が混在して記載されているイメージです。その後の分析のことを考えると「分析に堪える運用ルール作り」はしっかり準備をしていきましょう。
また、特に対話分析(VOC分析)においては、構文解析/形態素解析/意味解析など様々なテキストマイニング技術があります。しかし、そもそものデータソースとなる入力文言の定義がオペレーター毎に不明瞭になっていたり、コンタクトセンター毎に違っていたりします。
(例)
お客様:「トレジャーデータのサービスを教えてほしいのですが」
という問い合わせに対する対話履歴
- 入力例A:トレジャーデータと契約したいとのこと
- 入力例B:TREASURE DATAと連絡を取りたい
- 入力例C:TDと連携したい
例えばこのような簡単なお問い合わせでも、対話履歴の残し方は複数パターン存在してしまい、形態素分析の際にばらつきがでてきてしまう可能性が高いのです。文言の統一はもちろん、お問い合わせの種別(契約/解約/修理/問い合わせのみ)フラグや定形文の徹底などを実施し、より少ない工数でデータ分析が可能なようにコンタクトセンターと連携をとることが重要です。
トレジャーデータでのCRM情報活用例
このように、CRM logの内容を把握し、CRM systemとマーケティングデータを使ってデータ統合をすると、お客様の購買前や購入動機だけでなく購入後の行動分析にも”使える”データが集まります。
Treasure Data CDP内で共通キーにて分散されたデータを紐付ける事により比較的簡単にデータ統合が可能であり、またBIなやMAなど各ツールへ連携することコンタクトセンター内だけに留まらず、マルチチャネルでのタッチポイントの構築も可能です。
今回はデータ分析の重要な要素となるCRM logの内容をご紹介しました。
マーケティング領域ではクリック/CVなどの指標、CRM領域ではCRMでの各KPIにプラスしてお客様からのお問い合わせ内容を含めたデータが取得可能です。
お客様対応における両輪であるマーケティング+CRMのデータ統合を実施することにより、お客様像の見える化やタッチポイントの改善に向けたデータ構築が可能となりますので、皆さまのご参考になれば嬉しく思います。
▼あわせて読みたい
組織内のデータ統合・活用を進めたい企業様を対象に、CDP導入のご相談も承っております。
> 導入相談ルームはこちら
この他、カスタマーサクセスチームによるナレッジ記事はこちらからご覧いただけます。