なぜ多くのDXは失敗に終わるのか? – 欠かせない「人と組織の変革」
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)が多くの企業にとって重要な課題となっている一方で、成功している数はまだ多くありません。なぜ、DX推進プロジェクトは頓挫してしまうのか。
トレジャーデータ株式会社で、データ活用に取り組む様々な企業をサポートしている、カスタマーコンサルティングのメンバー・黒柳が語ります。
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黒柳 将
トレジャーデータ株式会社
Senior Manager of Customer Consulting2018年にトレジャーデータに参画し、大手通信会社のABM戦略におけるCDP導入および施策実行、自動車メーカー等へのデータ活用のコンサルティング業務に従事。シニアマネージャーとしてカスタマーコンサルティングユニットを率いる。
<目次>
はじめに – DX推進できる人材のスキルとマインド
前回は『DX推進できる人材のスキルとマインドとは』という記事の中で、プロジェクト組織の一員にデータサイエンティストのようなスペシャリストは必要不可欠ではあるが、下記のようなことを取りまとめる推進役も欠かせないということを触れました。
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- ミッション・ビジョンの擦り合わせ
- プロジェクトスコープの明確化
- 目標達成基準の定義(ロードマップ、マイルストーンやKPI化)
さらに、下記のようなこともプロジェクトの成否を握る鍵であるとも述べました。
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- 状況変化による柔軟な対応(不確実性の出現に対する対処)
- 人材・費用などのリソース調整
- 社内外のコミュニケーションによる相互理解
- プロジェクト利害関係者に対する参画意識の醸成(ステークホルダーマネジメント)
これらを踏まえて、今回はDX推進が上手く進まない/頓挫する原因について触れていきます。
DXの多く失敗に終わっている
2019年9月26日に『DX実行戦略 – デジタルで稼ぐ組織をつくる』の出版に合わせて、『デジタルイノベーションカンファレンス』が開催されました。その際に『既存企業はどう生き残るか 〜 デジタルで稼ぐ組織への転換』をテーマした特別講演が行われ、著者のマイケル・ウェイド教授が下記のようなセンセーショナルな話題を提供しました。
全世界の企業が取り組んできたデジタルトランスフォーメーションの95%は失敗に終わっている。
公益社団法人 日本マーケティング協会発行の機関月刊誌『マーケティングホライズン(2020年9月号)/DXの虚と実 Do or Die?』では、『Why Digital Transformations Fail(なぜデジタルトランスフォーメーションが失敗するのか)/2019年7月出版』の著者であるTony Saldanha氏のインタビュー記事として下記のようなマッキンゼーの調査結果が紹介されました。
全産業のデジタルへの変換は1.7兆ドル規模の大きな市場だが、今なお実に70%にものぼる試みが失敗に終わっているという。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する明確な定義は捉え方によって非常に難しく、概念も非常に広いことから、何をもって成功とするのかは状況によって異なってくるので単に数値だけを鵜吞みにするわけにはいかないでしょう。しかしながら、いずれの内容もDXに取り組もうとしている企業にとっては軽視、もしくは無視することができないものであるに違いありません。
DXの成功を阻害する要因
では、どのような原因でDXは失敗するのでしょうか。
デル・テクノロジーズ株式会社は、2020年11月の『日本企業のデジタル トランスフォーメーション(DX)への取り組みの現状と課題』として、グローバル調査『Digital Transformation Index(デジタル トランスフォーメーション インデックス)』の最新結果を発表しています。その文中ではDXの成功における阻害要因のトップ3が紹介されています。
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- 予算およびリソース不足:32.5%
- スキルおよびノウハウの不足:27.5%
- データプライバシーおよびサイバー セキュリティーに関する不安:27%
ここで言われる「スキルおよびノウハウ」とは、データサイエンティストのようなスペシャリストの持つスキル・ノウハウだけを指すわけではないでしょう。
前述のインタビュー記事ではTony Saldanha氏は以下のように述べています。
明確な目標の設定とそれを達成するための統制が取れたプロセスが欠けていることが、この失敗率の高さの主な原因になっているとみている。
また、2018年12月に経済産業省(METI)が公表した『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』の文中では、以下のような失敗ケースが掲載されています。
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- 戦略なき技術起点のPoCは疲弊と失敗のもと。
- 仮説を立てずに実行すること、失敗を恐れて何もしないこと。
- 事業部門がオーナーシップを持たず、情報システム部門任せとなり、開発した ITシステムが事業部門の満足できるものとならない。
- ベンダー企業が情報システム部門としか話ができず、事業部門と話ができない。
つまり、「既存の枠組みを超え、自ら変化しながら、目標に向かって取りまとめる推進役」としてのスキル・ノウハウこそが不足していると言えるではないでしょうか。
個人だけでなく組織も変革する必要がある
アビームコンサルティング株式会社による2020年12月の『日本企業のDX取り組み実態調査』では、下記のような調査の結果を成功と失敗の分岐点としてレポートされています。
成功した企業と失敗した企業を分ける要因のうち特に着目すべきは、「全社員へのデジタル教育」、「デジタル知見を有した経営陣による意思決定」、「デジタルとビジネス・業務知見を有した推進組織の組成」であり、それらがDXの成功と失敗の分岐点である。
上述の内容と合わせて、DX成功には下記の5つが重要であるともコメントを添えています。
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- 明確なDXビジョン
- 思い切ったヒトとカネの投資
- デジタル知見を有した経営陣の覚悟
- アジリティとダイバーシティのある組織
- デジタル教育と変革の意識付け
上述のいずれのレポートや発表を見ても、前回の記事で触れた「DX推進におけるスキルセット、マインドセットを醸成できるか」が成功をつかみ取ることにつながるように思われます。個人のスキル・マインドの変革と共に、それを育成する組織としての変革も求められているのです。
トレジャーデータができること
トレジャーデータ のカスタマーデータプラットフォームTreasure Data CDPは、DX領域において、あらゆるデータを収集・加工して主に深い顧客理解を可能する手段にすぎません。しかしながら、その活用の目的をはっきりさせ、プロジェクトに関わる人の目線が合うことで最大限に効果を発揮することになります。カスタマーサクセスチームの持つノウハウを提供して、支援させていただくことで少しずつでも着実なDX推進につながれば幸いです。
また、トレジャーデータでは、Treasure Data CDPを導入いただいている企業様に向けて、技術的側面、操作方法のポイントをお伝えするとともにプロジェクトの全体設計などに関するノウハウを公開し、DX人材の内製化をサポートするカリキュラム「Treasure Academy for CDP Masters」をご用意しております。ご興味があればぜひお問い合わせください。
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