CDPとMA連携のメリットとは? データ活用で実現する一貫した顧客体験の提供
MA(マーケティングオートメーション)は単体で利用してもマーケティング施策に大きな効果を発揮しますが、CDPと連携することでより深い顧客理解を得ることができます。
Treasure Data CDPの導入実績No.1パートナーである株式会社Legoliss(以下、Legoliss)でマーケティングプランニング事業を推進する田中毅氏が、CDP×MA連携のメリットと事例を紹介しました。
なお、本記事内の一部解説や紹介事例はBtoC向けのMAを想定したものとなっていますが、CDPとMAの連携の仕組み自体はBtoC/BtoB問わず有効です。
田中 毅 氏
株式会社Legoliss
マーケティングディレクター
ヤフー株式会社、株式会社ウフル、5incを経てLegolissへ参画。過去に上場企業の子会社・合弁会社代表の経験もあり、組織構築とマネジメントを得意とする。ウフルではSalesforce MarketingCloud導入支援部門を立ち上げ、EC、アパレル、生保・金融機関等の案件を中心に、導入実績数国内トップクラスとなる50社以上の導入支援を実施。5incではCOOとしてEコマース広告で国内上位の運用部門の構築を主導。2021年にLegolissに入社し、これまでの経験を活かしたデジタル&データを活用したマーケティングプランニング事業を推進。
※役職は1月24日時点のもの。現時点(公開日)は、執行役員/マーケティングソリューション事業部長/マーケティングオートメーション事業部長
<目次>
CDPとMAを組み合わせるメリット
MAを単体で使用している場合、各顧客接点で得たデータはデータソースから直接MAに送られ、保存される。
それに対してMAとCDPを連携させる場合、各データソースのデータを直接MAに送らず一旦CDPに集約・蓄積し、必要に応じてCDPからMAにデータを連携する形になる。
MAをCDPと連携させるメリットは大きく分けて2つある。「複数のMA環境でのデータ連携が容易になる」ことと「顧客理解のために使えるデータが格段に増える」ことだ。
メリット1:複数のMA環境でのデータ連携が容易
CDPを介さず直接MAにデータを送る場合、会員情報や購買データ、ECサイトデータ等データの種類ごとに多くのデータソースとMAを連携する必要がある。
ブランドや製品、サービス、社内の各事業部ごとに分けて複数のMAを使う場合、それぞれのMAを個別にデータソースと連携することになる。
この環境でMAを入れ替えたり追加したりしようとすると、すべてのデータソースとの連携の設計や設定をやり直さなくてはならない。データソース側に仕様変更があった場合も、複数あるMAのすべての設定を変更しなくてはならない。
事業拡大により連携元のデータソースや使うMAの数、さらにはMAから連携するツールが増えれば増えるほど、データの連携経路は複雑になる。
それに伴い、設計や修正対応の工数はどんどん増えるだろう。外注するならば費用も膨れ上がる。
そうした環境にCDPを導入することで、データの連携経路をシンプルにすることができる。
データソース側に仕様変更があっても複数のMAをそれぞれ修正する必要はなく、連携しているCDPの設定だけを修正すればよい。
MA側は多くのデータソースと連携せずとも、データが集約されたCDPとだけ連携することで必要なデータを取り出すことができるのだ。
メリット2:顧客理解のために使えるデータが格段に増える
MA単体では施策に利用できるデータ項目が限られているが、CDPは企業が保有する多種大量のデータと、天気予報等の外部データを併せて蓄積できる。
つまり、顧客理解のために使えるデータが格段に増えるということだ。
これまで複数のブランドやサービスのMAに分散していたデータを集約することで、企業全体で横串の通った顧客分析と顧客対応ができるようになる。
例えばCDPを介さずにブランドごとに別のMAを使っている場合、複数のブランドの商品を購入した顧客に大量の施策メールが届いて顧客体験を損ねてしまうかもしれない。CDPにデータが集約されていれば、別ブランドでメールを送信した記録を参考にしながら配信の頻度や条件を設定することができる。
豊富なデータを使って顧客理解を深め、その理解に基づいた施策を実行することは、顧客にとってより快適で一貫したコミュニケーションにつながる。
CDPとMAを組み合わせて活用するためのステップ
実際にCDPを導入し、MAと組み合わせて活用するまでのステップを紹介する。
1.社内にあるデータの整理
社内にどのような状態のデータがどれだけあるのかを明らかにし、整理して集約する。
いわばデータの棚卸しだ。存在するのにこれまで活用されてこなかったデータが見つかることもある。
データの状態はさまざまで、フォーマットが統一されていなかったり、場合によっては紙データで記録されていたりもするだろう。それらをすべてCDPに蓄積して活用できる形にする必要がある。
2.データ取得経路の整理
常に新しく入ってくるデータを継続的にCDPに蓄積できるようにするためには、どこからデータが入ってくるのかを整理する必要がある。
ステップ1で整理したデータはどこから取得したものなのかを明らかにし、CDPとつなげる準備をする。取得経路の例は下に示した。
併せて、今後有用なデータを取得できそうな経路も考えてみるとよい。
例えばウェビナーや製品紹介動画からは視聴履歴や視聴者属性のデータを取得できる。把握したい顧客行動やその取得方法を検討することで、よりデータを充実させられるだろう。
3.CDPにデータを集約する
整理した内容を基に、CDPとデータソースをつなげてデータを集約する。
社内のデータだけではなく、必要に応じて外部データも格納すると、施策・分析に活用できるようになる。
集約したデータを基にCDPで顧客セグメントを作り、それをMAに渡して施策を実行するこの段階で、ようやくCDPとMAの連携が実現する。
MAにもセグメントを作る機能はあるが、扱えるデータ項目が限られている上に、データが古い可能性もある。取得経路から常に最新のデータが入ってくるCDP側で作ってMAに渡したほうが、より”今の”顧客の状態に合わせたアプローチが可能になるはずだ。
4.施策結果・フィードバックをCDPに戻す
連携が実現したからといって、そこで気を抜いてはいけない。
顧客はメールを開封したのか。URLをクリックしたのか。施策の結果をCDPにフィードバックすることで、次の施策につなげるサイクルを作ることができる。
CDPによる社内横串の体制では、他サービスで実行した施策のフィードバックも蓄積される。そのデータも含めた分析によって、次回以降はより深い顧客理解を基に施策を実行できるということだ。
CDP×MAの連携事例
CDPとMAの連携で成果をあげている企業の事例を2つ紹介する。
事例1:消費財メーカー
ある消費財メーカーでは部門やブランドごとにデータの管掌が異なり、使用しているMAもばらばらだった。そのため、各部門・ブランドからメールがそれぞれ届き、企業全体で一貫した顧客体験を提供できずにいた。
そこでCDPを導入してデータを集約し、部門間のデータ取り扱いをサポートする担当部門を設置することにした。
CDPに集約したデータを各部門・ブランドのMAに連携して施策を行う他、ダッシュボードにも連携して必要な情報を各部門からリアルタイムで閲覧できるようにした。
その結果、ブランド・サービスを横断して会員登録状況や購買データを確認できるようになり、一貫した快適な顧客体験を提供できるようになった。
事例2:衛星放送事業者
ある衛星放送事業者ではCDPに会員情報等のデータを集約し、視聴傾向データからどのようなコンテンツが好きなのかセグメント分けをしてメール施策を行っている。幅広いデータを用いてより精度の高いセグメントを作ることができるのも、CDPの利点だ。
また、この事業者では元々顧客からのコールセンターへのコール内容を音声認識ソフトでテキスト化し、Q&Aや社内データを検索しやすくするシステムを持っていた。そのテキストデータもCDPに集約して解析することで、トークスクリプトやメール内容の改善に活かしている。
連携を支えるLegolissの導入・運用支援
上記2つはいずれも、Legolissがパートナー企業としてCDPのインプリメント・運用支援を行った事例だ。CDPのインプリメントはもちろんのこと、運用支援ではトレーニングを含めたスキルトランスファー(技能や技術の共有)からスタートし、取り扱いに慣れて一歩進んだ取り組みをしたい場合のサポートも行う。
事例1でデータ取り扱い部門を作る際にも、Legolissが部門間調整等をサポートした。多くの企業でCDP導入支援をしてきた実績とノウハウがあるからこそ、部門をまたいだサポートができる。
Legolissの田中氏は「経験的に、(他部署から)データを出してもらったら、それを活用して得た顧客情報や施策の結果をフィードバックするのも大事」だと話す。部門をまたいだ連携には良好な協力体制が不可欠だ。一方的にデータを提出してもらうのではなく、得た果実は共有するのが大切になる。
CDPに集約したデータ分析結果をダッシュボードで必要に応じて参照できるようにしたのも、顧客理解を深めるためであるのはもちろんのこと、データ提出に協力してくれた各部門への成果共有の一手段でもある。
データの数だけ活用の可能性は広がる
CDPとMAの連携は、メンテナンスの工数削減だけでなく一貫した顧客体験にもつながる。
施策のフィードバックも活用してPDCAを加速すれば、より顧客にフィットした体験に近づいていく。
社内には、まだまだ顧客理解と施策実行に使えるデータが眠っている可能性がある。MA導入を検討している方も、既にMAを単体で使っている方も、CDPでの幅広いデータ活用を検討してみてほしい。