ファッション・アパレル業界において、接客を最適化する際、統合された形で蓄積されるデータは大きな役割を果たします。トレジャーデータにてアパレル業界を担当している田中省吾は「PLAZMA 2019 JAPAN IT WEEK 春」でのセッションを通じて、Data Management Platform(DMP)とCustomer Data Platform(CDP)の違いを説明しながら、店舗やECサイトを包含したオムニチャネル販売におけるCDPの活用例を説明しました。
DMPより利用用途も応用範囲も拡大したCDP
トレジャーデータは日本では2014年から販売活動を展開しており、全業種に導入されている。トレジャーデータのソリューションTreasure Data CDPの特徴は、顧客が持つさまざまなデータをクラウドに保存し、統合するだけではない。データをアウトプットして各種施策に生かし、その結果をまたデータとしてインプットするサイクルを回す仕組みを通じて「顧客にまつわるデータをマネジメントする」という思想を具現化していることだ。また、コネクタを介してサードパーティが提供する多彩なツールや外部データと容易に連携できることも利点となっている。
今、トレジャーデータに限らず、データ活用の領域で注目を集めるキーワードがCDPだ。これはDMPの「発展系」と表現できる。「DMPとCDPとでは入れられるデータのバリエーションが異なります。このため広告に限らず、CRMや在庫管理といった応用的な用途にも対応できます」と田中は説明する。
ではなぜ、昨今CDPが注目されているのだろうか。田中は「ばらばらの環境で保存されている顧客に関するデータを1つにすることで、『接客力』を向上させようという狙いから必要とされています」と述べた。つまり、今目の前にいる顧客の属性や過去の購買履歴を元に、店舗にある商品の中から最適なものをレコメンドしていく上で、データが大きな武器になるということだ。
そしてトレジャーデータのTreasure Data CDPは、国内のCDP市場でも、またMARTECHの調査によるグローバルCDP市場でもベストCDPを獲得している。
Best Cutomer Data Platform 2019 受賞
マーケティングテクノロジーにおける世界最大の祭典 The Marketing Technology AWARDSにて
オムニチャネル戦略のポイントはデータ統合
田中は次に、アパレル業界における活用例を紹介した。
アパレル業界でCDPが注目を集める背景には、データを元に最適な接客を実現したいというニーズがある。「アパレル業界に限らず、同じ企業でも部門ごとにばらばらにマーケティングツールを導入し、ばらばらにデータを収集していく結果、データが『サイロ化』されてしまっています。
このばらばらのデータを1人のお客様の情報資産として統合し、分析、活用するのがCDPを活用したオムニチャネル戦略のポイントだという。
オムニチャネル化が進む中、購入履歴を1つのIDにひも付け、店舗で購入してもECサイトで購入しても同一の料率でポイントを付与するといった取り組みはかなり浸透してきた。一方、FacebookやLINE、メールマガジンなどさまざまなチャネルを介した顧客に対するマーケティング施策となるとまだばらばらで、連動にまでは至っていない。そこで「Facebook、LINE、メルマガなど、各種マーケティング施策・ツールで発生するデータを統合し、様々な切り口でセグメントを設計、細かく分類したセグメントは即ち顧客ひとりひとりへのパーソナライズされたコミュニケーションとなり、ブランドに対する顧客のLTV向上につながる」と田中は述べた。
実際にTreasure Data CDPでは、1つのID、1人にユーザーに関連したさまざまなデータをつなげ、一元的に管理していくことができる。そして顧客の属性情報や購買履歴といった「事実データ」と、いつメールを開封したり、広告をクリックしたりしたかという「行動データ」を一元的にひも付け、新規獲得からリピーター、優良顧客になっていく各ステージで最適なレコメンド、接客を行っていけるのだ。
顧客データに基づいた最適な接客を実現できる
田中は続けて、ばらばらなデータをTreasure Data CDPに統合することで生まれるいくつかの活用法を紹介した。
例えば、これまではレポートを見ようにも、個別に管理していたデータを人手でかき集め、Excelを使って手動で作成するという手間がかかっていた。時にはその作業だけで2、3日要するといった具合だ。
だがTreasure Data CDPにデータを統合し、サービスの中に組み込まれているダッシュボードツールを活用すれば、一連の作業を自動化して工数を削減でき、しかも常にアップデートされた状況を見ることができる。「レポート作成にかけていたリソースを、ダッシュボード上のデータを読み解いて仮説を作り、施策を実行していくPDCAサイクルの部分にあてられるようになります」と田中は話す。
また、施策を立案し実行する場合にも、購買履歴に基づくセグメントにECサイト上のアクセスログ閲覧履歴を掛け合わせることで、顧客をより個別に捉え、効果的なアプローチを取っていくことができる。
例えば、「オムニチャネルで購入しており、ECサイトも特定の商品に偏ることなく閲覧している顧客」なら、ブランドのエンゲージメントが高いと推察できるため、積極的にメールマガジンで告知施策を展開できるし、「購入は店舗のみで行い、ECサイトでは特定の商品しかチェックしていない顧客」なら、おそらく試着後に購入するかどうかを決めるため、その情報を店舗にフィードバックしてフォローすることができる。こんな具合に、「セグメントの細分化、再定義をできるのがデータ統合です」と田中は述べた。
CDPを使う醍醐味は、やはり外部データをシンクできるところにあります。事実データと行動データを掛け合わせるだけでなく、サードパーティの位置情報や属性情報などを組み合わせ、そこに分厚く属性をエンリッチメントしていくことで、アクションをより細かく研磨していくことができます(田中)
機械学習で「データから未来を予測する」ことも可能になる
Treasure Data CDPはさらに、機械学習を組み合わせた機能も提供している。手元にあるロイヤルカスタマーの属性やチャネル、コミュニケーションに関するデータをもとに学習し、全ユーザーの中から近い属性・行動のユーザーをスコアリングして抽出できるという。これを活用すれば、無作為にまんべんなく広告などのコミュニケーションをするのではなく、効率的なマーケティングアクションを展開し、結果を出していくことができる。
「個人的にはこの部分が、『なぜデータを蓄積するのか』に対する答えの1つだと思っています。機械学習は、データの量が増えれば増えるほど精度が上がっていきます。データを蓄積した上で機械学習を行うことで、今までになかった新しい売上を作り、データから未来の需要を予測する仕組みを作っていくことができます」(田中)
Treasure Data CDPには他にも多くの機能があるが、トレジャーデータはさらに「カスタマーサクセス」という担当を1社に1名張り付けて、顧客の課題に合わせて運用を提案し、時には他社の成功事例や指標の出し方なども紹介しながら活用を指南している。最後に田中は「CDPの活用に限らず、顧客のマーケティング全般を支援していくのがわれわれの1つのテーマです」と述べ、引き続き顧客の課題解決を支援していくとした。