Treasure Data CDPとZendeskで実現するCX向上
顧客満足度が経営に与える影響が大きくなる中、これまでのコールセンターよりも対応範囲を広げたコンタクトセンターを設置してマルチチャネル化やCX向上に取り組む企業が増えています。
コンタクトセンターの業務を効率化するCSプラットフォーム「Zendesk」の公式パートナー、株式会社エクレクト(以下、エクレクト)代表取締役の辻本真大氏が、コンタクトセンター体制構築に重要な要素とZendesk導入によるCX・EXの向上事例を紹介しました。また、後半ではトレジャーデータ株式会社の奥寺徳久を交えて、Treasure Data CDPとZendeskの連携によって可能になるデータドリブンなコンタクトセンター体制について語りました。
※本記事はトレジャーデータ株式会社が主催した「PLAZMA 20」(2021年10月開催)のセッションをもとに編集しました。
辻本 真大 氏
株式会社エクレクト
代表取締役
大学卒業後、株式会社シャノンにて、MA部門責任者、支社長などを歴任。その後、株式会社マネーフォワードにて、マーケティング、法人セールス・アライアンス部門責任者として従事。数多くの企業と接する中で、顧客との信頼関係こそ企業・サービスを支える土台だと気付く。そのような想いの中、Zendeskと出会い、今後の企業と顧客の関係性に必要なプラットフォームであると確信し、Zendeskを広めるべく株式会社エクレクトを創業。
奥寺 徳久
トレジャーデータ株式会社
シニアセールスマネージャー
シャノンにて国内マーケティングオートメーション事業及び大型カンファレンスシステム全般の導入コンサルティング、2015年〜オラクルにてマーケティングシステムMA、DMPのセールス従事、その後SalesforceにてB2Bマーケティングのプロダクトセールスマネージャーを経てトレジャーデータへ入社。金融機関をメインに全組織のデータ活用ビジネス基盤の提案を主として活動し、現在はTreasrue Data CDP for Serviceを専任で活動。
<目次>
最新レポートに見る、カスタマーサービス業界の現状
辻本:弊社エクレクトは、「Zendesk」の公認パートナーで、アジア太平洋地域においてNO.1の導入実績を誇ります。ベンチャーから大手の企業まで、幅広くDX化の取り組みの支援をしており、特にカスタマーサービスの領域においては非常に多くの支援実績があります。
まず、「Zendesk」の提供元であるZendesk社の最新調査レポートから、カスタマーサービス業界の現状をご説明します。
コロナ禍もあり、カスタマーサポートへの問い合わせ数は非常に多くなっています。2020年の週平均問い合わせ数は依然と比べて20%以上増加し、なお今も増え続けています。
これにより、問い合わせに対応するオペレーターが感じるストレスも増大しています。一方、顧客側は自分自身にパーソナライズされた対応をしてほしいと、当たり前のように期待しています。
しかし、オペレーターはパーソナライズのために必要な情報にアクセスができないために、なかなか思うような対応ができないという現状がこのアンケート結果からも汲み取れます。
ネガティブなサポートやネガティブな対応をされた際、2人に1人が「もうこの会社と付き合いたくない」と感じる、という調査結果もあります。サービスや製品に確実な差別化ができていれば顧客を引き留められるかもしれませんが、そうでなければ対応ひとつですぐに切り替えられてしまうのが現状です。
カスタマーサービスのDXは、CXとEXの両方を考慮すべき
辻本:変化の激しいウィズ/アフターコロナの時代、人々のライフスタイルもワークスタイルも変化しています。このような状況の中でCX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させようとするならば、CXの取り組みだけでは不十分です。CXに取り組む従業員の満足度、いわゆるEX(従業員エクスペリエンス)を高めていかなければ、CX向上には結びつきません。
CXとEXをつなぐ架け橋となるのがDXです。顧客と従業員、両面を考えてDXに取り組む必要があります。しかも単純にデジタル化をすればいいだけではなく、「トランスフォーメーション」ですので、ビジネス自体を変革させなければいけません。
ではカスタマーサービスのDX化はどのように進めるべきでしょうか。下の概念図をご覧ください。
ひと昔前のカスタマーサービス(コールセンター)は、購入済みの顧客のみを対象として対応をしていました。図の中央の円の中で、濃い緑色になっている部分です。
しかし現在のカスタマーサービスは、認知からエンゲージメントまで、図中で薄い緑色になった部分も含めた全ての顧客に対して対応をしています。どこにでも顧客とコンタクトする場があるということで、コンタクトセンターとも呼ばれます。
それと同時に、実際に顧客に対応する従業員の体験も向上させる必要があります。冒頭で、問い合わせ数が増えて従業員が疲弊しているというアンケート結果もありました。従業員の負担を軽減して働きやすくするためにも、CSプラットフォームが必要になってくるわけです。
新しい時代のCSプラットフォーム「Zendesk」の紹介
辻本:新しい時代のCSプラットフォームに何が求められるのか、5つの要素を下に示しました。
1. | オムニチャネル、OMO対応 |
2. | 高いカスタマイズ性とユーザビリティ |
3. | 自動化機能 |
4. | チームコラボレーションを促進する機能と拡張性 |
5. | 自動化と深い顧客理解を支えるBI/データ基盤 |
顧客にとって都合の良いチャネルで問い合わせ応対をできるオムニチャネルやOMO対応は、もはや当たり前ですがまだまだ実現できていない企業も多いと思います。オペレーターが操作しやすいUIや、ルーティンワークの自動化も重要です。
対応中にはオペレーター自身で解決できない場面も多々あるので、管理者や別部署とのチームコラボレーションによって最適解を顧客に提供しなくてはなりません。そして、データをうまく使って顧客体験に生かしていく。これら5つが次世代のCSプラットフォームに必要な要素であると考えています。
「Zendesk」は、上記5つの条件を全て備えたCSプラットフォームです。カスタマーサービスに特化したクラウドのソフトウェアで、10万社以上にグローバル展開をしています。顧客と企業とのコミュニケーションを一括で管理できるコミュニケーションプラットフォームと呼んだ方がいいかもしれません。
「Zendesk」は、上図のように幅広いカスタマーサービス領域をカバーします。今回はその一部分として、Treasure Data CDPとのデータ連携を紹介します。Treasure Data CDPとの連携により、コンタクトセンターに溜まっていないデータを基に顧客を理解したり、次のアクションに活かしたりできるようになります。
Zendeskの導入事例(東京電力エナジーパートナー株式会社)
辻本:東京電力エナジーパートナー様は、非常に長い歴史のある企業です。問い合わせチャネルは電話のみで、拡張性や柔軟性がないのが課題でした。この課題を細かく分解し、課題解決のために以下の施策を行いました。
顧客が自身で閲覧できるFAQサイト(セルフサービス)を整備し、電話だけではなく、オムニチャネルの対応もできるようにしました。EXにつながるオペレーターの支援とクラウド活用も行っています。
強力なAPI連携や使いやすいUI、複雑なビジネスロジックへの対応が、Zendesk選定のポイントです。小さく始めて拡張していけるところと、使いやすさが評価されました。
上図はZendesk導入後のシステム概略図です。まず、電話のみだった顧客接点がオムニチャネル化されており、電話もAmazon Connectでクラウド化しています。セルフサービス(FAQ)には、幅広い年齢層の要望に最適解を提示できるようAIを導入しました。
現在のZendesk利用状況が上図です。月に20万件チケット数(問い合わせ数)をこなすことができています。エージェントは、いわゆるオペレーターと考えてください。約1,000種類の自動化機能も使用しています。
Zendesk導入による成果
成果の一つとして、まずチャットの導入・活用によるCXとオペレーション効率の向上を紹介します。チャットの一次応対はAIが行い、そこで解決しなければ有人チャットにつなぐという二段構えの仕組みです。これによりオペレーション効率が2倍、顧客満足度が1.3倍になりました。この二つの両立はなかなか難しいのですが、両方達成できています。
電話をクラウド化したことで、他の仕組みと連携しやすくなったという利点もあります。音声のAI機能と連携し、AIによる事前ヒアリングをテキスト化して予めオペレーターに共有するという取り組みも行われています。
先程ご紹介した通り、セルフサービス(FAQサイト)にもAIを導入しています。以前は顧客がFAQ内を検索しても50%が0件ヒットでしたが、その割合が6%に改善しました。「ここに来れば疑問が解決する」と思ってもらえればFAQを見る人も増えるので、PV数も2.5倍になっています。
一般公開されている顧客向けFAQの他に、オペレーター向けのクローズドなFAQも存在します。Zendeskの管理画面に実装しているアプリケーションで顧客向けと社内向けのFAQを一気通貫で検索することができ、そこで見つけられたナレッジを基に顧客対応をするという仕組みです。
チームコラボレーションにはSlackを活用しており、「#教えて管理者チャンネル」とZendeskを連携することで即座に回答できない質問をSlack上にエスカレーションしています。そこで管理者から得られた情報を基にオペレーターが顧客に回答するというスピード感のある対応が、CX向上につながります。
Zendesk導入プロジェクトの進め方
東京電力エナジーパートナー様には莫大な量の既存業務があり、電話対応を行っていたコールセンターも大規模なものでした。Zendeskの導入を進めるにあたり、既存の組織からは切り離して新しい取り組みだけ行う環境を作り、そこで上手くいったものをどんどん横展開して広げていく、いわゆる「アジャイル」型で進めました。これにより、非常にプロジェクトがスムーズに進みました。
先程、新しい時代のCSプラットフォームに求められる5つの要素を紹介しました。この5つの要素を東京電力エナジーパートナー様の事例ではどのようにカバーしたかを下図に示します。
オムニチャネル対応とユーザビリティはZendeskの基本機能でカバーできます。自動化機能とコラボレーションについても基本機能でカバーできますし、必要に応じてSlack連携等の拡張も可能です。
データドリブンはZendeskとTreasure Data CDPの連携でカバーしており、ここがタイトルにもある「Treasure Data CDPとZendeskで実現するCX向上」の部分です。
対談:Treasure Data CDP×ZendeskでCXが大きく変わる
ここからはトレジャーデータの奥寺が加わり、Treasure Data CDPとZendeskの連携によるデータドリブンなコンタクトセンター体制が、どのようにCX向上につながっていくのかを話しました。
辻本:電話がつながらない、たらい回しにされる、という課題はZendeskだけで部分的に解決することはできますが、より顧客に即した体験を提供するとなると幅広いデータ活用が必要になってくると思っています。このあたり、奥寺さんはどう思われますか。
奥寺:我々が「超直近ログ」と呼んでいるデジタルの購買行動やトランザクションのデータを、エージェントがオペレーションとして意識せず利用できる環境があると、よりロイヤリティの向上や収益につながりやすいのではないでしょうか。
辻本:そうですね。よりそこが求められてきていると思います。ロイヤリティを高めれば顧客はファンになっていきます。ファンになれば「またここで買おう」と思いますし、「この企業は私のことをわかってくれている」と感じれば、多少何かあったとしてもそこで買いますよね。デジタルの力を活かすことによって、それをブーストすることができます。
奥寺:ただし、全てのデータにアクセスできるからといって利便性が上がるわけでもないと思っています。データの上手な活用の仕方と、Zendeskを含めた活用のためのインターフェース、両方のバランスを見ながらデータ活用体制を作り上げるのが我々CDPプレイヤーとエクレクトさんの役割分担になるかと思います。
辻本:そうですね。要はデータをどう使える状態にするのかが非常に大事だと思っています。生データを見ても何のことだか分かりません。ZendeskとTreasure Data CDPが連携することによって、データの分析結果や次のアクションに生かしやすいデータが加工されてエージェントに対して届くと。そうすると、次にどうしたらいいか、こういう傾向があるのか、とぱっと分かるようになりますので、「使えるデータにする」というのが非常に重要なポイントかなと思います。
奥寺:CRM領域では、元々Treasure Data CDPの得意領域であるデータ加工や連携を、より業務的な範囲でリアルタイムに返していくというのが強みになるかと思います。我々の新プロダクト「Treasure Data CDP for Service(※)」や「Treasure Data CDP for Sales」でも、一緒にやっていける領域があるのではないでしょうか。
※イベント開催時は旧名称「Treasure Data CDP for Contact Center」でしたが、2021年10月12日からのグローバルでのサービス展開に伴い「Treasure Data CDP for Service」へプロダクト名称を変更しました。文中では新名称で記載しています。 |
辻本:そうですね。次のスライドがまさにそういうところだと思います。従来のコンタクトセンターでも、マルチチャネル化はできるんですよ。でも次のステップを目指すならば、下図の右側にある通り、データを用いて「ネクストベストアクション」を提示してあげる必要があります。
奥寺:コンタクトセンターと顧客の接点は電話だけではない、というのがキーだと思っています。Web、FAQ、チャットなど、いかなる接点においてもデータを用いてきちんと顧客を理解し、接客・応対ができる環境を作っていくのが非常に重要なのではないでしょうか。
辻本:そうですね。電話でも、メールでも、チャットでも、顧客にとって1人の「自分」は変わらないので、チャネルごとに分断された対応をされると違和感があるのでしょう。チャネルごとに分断されたデータを統合し、かつマーケティングやEC等他の部門で得た情報も連携できれば、顧客にとって「『自分』を理解してくれている」と感じられる体験を提供できるようになります。
奥寺:いわゆる初回の顧客接点から二次三次も含めて、CRMが母体にならない領域のデータもやはり見ていかなくてはいけないと思っています。データの取り回しと加工はCDPで行いつつ、活用自体はZendeskであったりMAであったり、いわゆるCMSも含め、得意な部分を役割分担して一気通貫で行っていく必要がありますね。
辻本:そうですね。まさに今回の協業の意義はそこにあります。データを活用したくても活用できる形に変えられないという課題を持つ企業は多いので、トレジャーデータさんの持つ知見やデータの加工・分析技術が活かせるでしょう。さらに、コンタクトセンターにおいてデータ活用が有益なのはもちろん、コンタクトセンターで集めたデータを他部門で有益に使える可能性も考えられます。それらも含めた相互連携というところが非常に重要になりますね。
奥寺:一方的にデータを送りつけるだけではなく、データをきちんと流通させていくという役割がすごく重要ですね。データを活用してプラスアルファでの期待値を顧客に提供し、満足度を上げていくことができると「データを活用できている企業」に変われるのではないでしょうか。
辻本:そうですね。我々も顧客の声をうまく生かしていきたいと思っています。Zendeskはあらゆるチャネルでのコミュニケーションを一元的に管理できますが、その声を次に生かしていくためのベストプラクティスは現状まだ確立されていません。Treasure Data CDPとの連携は最適解になり得る可能性を秘めているので、ぜひこれからも進めていきたいですね。
奥寺:顧客接点をマネジメントしてCX向上につなげるコンタクトセンターという組織は、これから日本の中でもどんどんできてくるのではないかと思っています。我々の得意なデータの領域はもちろん、他の領域は皆さんと協力して、様々なエコシステムの中で体制を変えていけるとよいのではないかと思いました。
辻本:Treasure Data CDP×Zendeskの組み合わせで具体的にできることとして「LTV向上」「顧客応対の適正化」「予測による事前対応」の三つを挙げています。こういった取り組みとして一緒に進めていきながら、より多くの顧客にフィットできるCX向上を目指せればと思います。
奥寺:そうですね。ぜひ一緒に進めていければありがたいです。本日はありがとうございました。
「CDP for Service」について詳しい情報をお知りになりたい方は、ぜひ資料をご覧ください。