What was/is CRM? (CRMとは何か?その本質と到達点)
経営戦略としてのCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の概念が確立されたのは、1998年のことです。そこから20年を経て、何が変わり、何が変わっていないのか。そして、私たちは「今」何をすべきか。
CRMの考え方が生まれた背景から、顧客の変化と技術の進化を辿り、今後の企業やコンタクトセンター、BtoB営業、マーケティングのあり方について紐解きます。
※本記事はトレジャーデータ株式会社が主催した「PLAZMA20」(2021年10月開催)のセッションをもとに編集しました。
三谷 宏治 氏
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院
教授
1964年大阪生れ、福井で育つ。東京大学 理学部物理学科卒業後、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、アクセンチュアで19年半、経営コンサルタントとして働く。92年 INSEAD MBA修了。2003年から06年 アクセンチュア 戦略グループ統括。2006年からは子ども・親・教員向けの教育活動に注力。現在は大学教授、著述家、講義・講演者として全国をとびまわる。K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授の他、早稲田大学ビジネススクール・女子栄養大学 客員教授。放課後NPO アフタースクール・NPO法人 3keys 理事を務める。『経営戦略全史』(2013)はビジネス書2冠を獲得。永平寺ふるさと大使。3人娘の父。
三浦 喬
トレジャーデータ株式会社
代表取締役社長
2014年1月、トレジャーデータ株式会社に入社し、日本法人の立ち上げに貢献。2018年より日本事業における営業・事業開発・カスタマーサクセスの責任者として、カスタマーデータプラットフォームの確固たるポジションを確立させる。2019年にはソフトバンクと博報堂との合弁会社であるインキュデータ株式会社の設立に携わり、2020年より日本を含むアジアパシフィック全体の営業/事業開発の責任者を担当。2020年10月に社長執行役員、2021年6月に代表取締役社長に就任、現在に至る。
<目次>
CRMの本質とは
三谷教授はCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)を、「企業活動のうち需要側に関するすべての活動」と定義する。反対に供給側のすべてと言えるのが、「サプライチェーンマネジメント」だ。
CRMは「既存顧客とのリレーションを保つこと」といった意味合いで使われたり、マーケティング、セールスの次のプロセス、と理解されたりすることが多い。三谷教授はこうした傾向に対し、「CRMというネーミングが誤解を生んだかもしれない」と指摘する。本来CRMは、「サプライチェーン・マネジメント」に対する「カスタマーチェーン・マネジメント」とも呼ぶべきで、セールス、マーケティング、サービスなどの顧客接点と同列ではなく、すべての対顧客活動のベースとなる概念だ。
CRMを理解する2つの視点
三谷教授は本質的なCRMの理解を進めるため、「顧客・企業のリレーションモデル」と、それを整理した「CRMピラミッド」のフレームワークを提示する。
一般的に顧客と企業のリレーション(関係)において、企業は基本となる戦略を策定したうえで、顧客側から情報を収集してデータベースを構築、CRMの実行に必要な知恵を抽出していく。そして得た知見を戦略へ反映させ、顧客への個別対応に取り組む、といった循環が成り立つ。
このフローを、上位概念から階層的に整理したのがCRMのピラミッドだ。まず最初の顧客接点は、第3の階層(上掲スライド参照)のマーケティング、セールス、サービスの3分野だ。顧客との接点を持ち、何らかの働きかけをするプロセスである。それらを効率的に実行するシステムとして、「MA(マーケティングオートメーション)」や「SFA(セールスフォースオートメーション)」「SA(ストアオートメーション)」「コンタクトセンター」などがある。
しかし、重要なのはこの上の層である。知識の階層「顧客インサイト」が、マーケティング、セールス、サービスを統合している。各部門が別々に分析するのではなく、顧客接点のすべてから得た情報を一つにまとめたうえで顧客を理解し、識別していこうという考え方だ。そして、その頂点が顧客戦略となる。
「当然と思われるかもしれないが、マーケティング、セールス、サービスの垣根を超えて顧客戦略を立てている企業は、実はほとんどない」と三谷教授は指摘する。組織の壁にとらわれることなく、顧客との接点を統合するのが、三谷教授が提唱した元々のCRMのフレームワークだ。
CRMを実行する3つのステップ
CRMの目的はさまざまな文脈で語られるが、突き詰めれば「顧客からより多くの収益を上げること」に集約される。三谷教授は、収益を向上させる「3つのステップ」を提示した。
前提として、商品力についてはR&D部門が担当しているので、今回のCRMでは触れない。CRMは、まず顧客LTV(ライフタイムバリュー)の検討からスタートする。LTVには「個客シェア」「顧客範囲」「商品範囲」「顧客時間」の4軸がある。
「個客シェア」とは、一人ひとりの顧客の支出の中で、自社の商品やサービスがどれだけシェアを持っているか、という指標(詳細後述)。一定程度シェアを持つ顧客の人数が「顧客範囲」。さらに一人に対して、販売する商品を増やせれば「商品範囲」が広がり、何度も買ってもらうことができれば「顧客時間」が増える。
自社の資源をもって開拓できるのは、4軸のうちどこなのか? 開拓の余地が大きい軸に絞って、どんなニーズに対応し、何を提供すれば、顧客に対して自社の価値が上げられるかを検討する。そして、マーケティング、セールス、サービスといったすべての顧客接点を通じて、どのように価値を届けるかを考える必要がある。
「個客シェア」で顧客をより緻密に理解する
ここから、三谷教授は「どの顧客LTVを狙うのか」「どんな価値を提供するのか」「どうやって価値を提供するのか」というステップについて、詳しく解説していく。まずは顧客LTVで非常に重要な考え方となる「個客シェア」を押さえておこう。
市場全体において自社が占める商品のシェアは、多くの企業が把握しているだろう。では、一人ひとりの財布の中で、もしくは個々の会社に対して、自社がどれくらいの割合を獲得できているか、理解しているだろうか?
ほとんど自社がシェアを取れているお客様、反対に、全く食い込めていない未カバー客はわかるだろう。しかし、その中間はあいまいだ。シェアが取れているお客様は規模の小さな企業であることが多い。グラフの横軸は顧客の規模を表しており、購入する商品のうち何割を自社から購入しているのか把握し、それをどこまで伸ばせるのかを考えることがポイントだ。
顧客からの収益機会を増やす際、バラツキ分析が有用だ。顧客を並べて見ると、左の図のように、大きな顧客ではシェアが低く、小さな顧客ではシェアが高いといったことがよく起こる。ただ、個客シェアが高い小さな顧客で学んだことは、大きな顧客には通用しない。バラツキの上に位置する会社に着目し、その学びを下の会社に適用して、全体の底上げをすることができる。
あるいは、右の図のように、バラバラとなるケースも存在する。直接販売は、力を入れているのでシェアが高い。間接販売では、ほとんど個客シェアがわからないだろう。一度しっかりシェアを把握して、中規模の顧客のシェアが低いことがわかったとしよう。その場合は、直接販売に切り替えることで、シェアをぐっと高めることができる、という仮説が立てられる。
さらに、「特にB2Bのビジネスでは、購買プロセス分析が面白い」と三谷教授が示したのが、次のスライドだ。企業と顧客の関係が何もない状態から、収益に至るまでのステップを、顧客と自社の視点で表現している。
これを実際に数値で管理するのが、「パイプライン管理」だ。それぞれのステップにどの程度の顧客が存在し、プロセスが進むごとに、どのように変化していくのか。潜在顧客を100として、そのうち認知している顧客は85%、関心を持つ顧客は70%、実際に問い合わせや申し込みに至る顧客は55%と、どんどん落ちていくのが普通だ。
自社はどのステップに改善の余地があるだろうか。 申し込み率を上げる、商談率を改善するなどポイントを絞った対策で、売上が倍増することもあり得る。また、対顧客の視点で、自社の収益機会がどこにあるだろうか。バラツキ分析や購買プロセス分析、あるいは他社のベストプラクティスの研究などにより、見極めることからはじめよう。
「購買エージェント」としての価値提供
収益機会をとらえ、実際に収益を得るには、顧客に対して何らかの価値を提供しなければならない。従来以上の価値を提供してこそ、収益を向上させることができる。
「顧客にとっての価値は、元々は商品そのものだった」と三谷教授。商品を作れば売れる「プロダクトアウト」の時代は、それだけでよかった。しかしモノが増えると、市場の視点を持つ必要性が生まれる。「マーケットイン」の考え方だ。
さらに進んだ概念が「マーケットアウト」であり、三谷教授流でいう「カスタマーアウト」だ。市場を十把一絡げにするのではなく、顧客をセグメントごとに見て、その顧客のために世の中を見る。これが、顧客に寄り添う「購買エージェント」であるという考え方だ。
さらに三谷教授は「購買エージェント」の考え方を掘り下げ、2種類の価値を提唱する。ひとつは文字通り顧客それぞれの購買行動の代理人(購買エージェント)になること、もうひとつは顧客同士もしくは社会との関係構築の代理人(関係エージェント)になることだ。
購買代理人の価値としては、買いたいときに情報提供する「ジャストタイミング」、関連する商品をすべて一箇所で提供できる「ワンストップ」、(自社都合ではなく)中立的に顧客ニーズに合った商品を提案する「マッチング」などがある。さらにニーズを先回りして提案する「レコメンデーション」、顧客の本来の目的を実現するために商品をセットで提供する「メタプロダクト」(例:テントを買う顧客はキャンプの体験をしたいのであり、それを実現するものを提供する)などもあるだろう。
また、「実はなかなか難しい(三谷教授)」のが、顧客への個別対応「カスタマイゼーション」だ。特にリアルな商品の場合、難度は上がるが、どれだけ個々のニーズに応える商品を提供できるか。購買エージェントとしての価値を上げるポイントだ。
関係エージェントは顧客と顧客(CBC型)、あるいは顧客をまとめて企業とつなぐ(CBB型)役割を果たす。三谷教授は7つの類型を挙げた。
「クラブ型」の好例であるクラブツーリズムは、同じ趣味を持ったメンバーを集め、旅行という商品につなげるモデルだ。相談したい人とされたい人をマッチングする「相談型」、ヤフオクやメルカリのような「フリーマーケット型」もある。働きたい人と採用したい人をつなぐリクナビNEXTなどは「サービス受給型」、無料でも評価をしてくれる人からレビューを集めて提供する食べログやアットコスメは「商材評価型」。ここまではCBC型の関係エージェントだ。
CBB型には、買いたい人を集めて別の企業に働きかける「共同購買型」、顧客と企業が一体となり商品を作る「共同開発型」がある。7つの類型はいずれも、経済的メリットとともに社会的な価値を顧客に提供することがポイントだ。
CRMの質を上げるのは人的資源
次に三谷教授は「どうやって価値を提供するのか」のステップを解説した。「顧客戦略」「顧客インサイト」「業務プロセス」「ソリューション」といった、CRMのピラミッドの4階層を振り返る。重要なのは、目的とプロセスの統合だ。
また、「顧客インサイト層」を別にしたこともポイントだ。「顧客戦略」は通常は年単位で策定する。しかし、日々変化する顧客データを分析すれば、ズレが生じることがある。月単位、週単位、日単位で微修正が必要なものは分離して、戦略の陳腐化を防ぐのが「顧客インサイト」の階層だ。
ここでは、組織としての顧客インサイトの分析力が求められ、三谷教授は人的資源の重要性を強調する。ツールのデータから顧客インサイトを導き出し、仮説を立てていく能力が求められる。「ソリューションありきではない」と三谷教授。誰にどのような価値を提供するのかが根幹だ。
CRMの目的は収益強化であり、どんな収益機会があり、どのような価値を提供するのか見定め、マーケティング、セールス、サービスといった顧客接点をどのように強化していくかを考える。「この一連のプロセス全体がCRMだ」と三谷教授は強調する。
経営戦略としてCRMを進める上で、多くの組織が陥りがちな「7つの落とし穴」を示し、プレゼンテーションを締めくくった。その一つが、特定の部門だけでの取組みになってしまうことだ。
CRMはビジネスモデルの革新でもあり、部門ごとの取り組みで終わらせるべきではない。CRMのピラミッドが示しているように、マーケティング部門主導のCRM、サービス部門だけのCRMといった取り組みは、基本的にはあり得ない。情報システム部門が主導のCRMプロジェクトになってしまうこともあるが、意思決定権のない部門が仕組みだけ整えても機能しない。
かといって、すべてを経営者が統括するのは不可能だ。既存のビジネスモデルを変えるという視点が求められる。
PEST分析で導く3世代のCRM
続いてトレジャーデータの三浦が、マクロな観点からCRMシステムの変遷を解説した。ここで用いたのは、政治、経済、社会、技術の視点から環境分析する「PEST分析」だ。1990年代、2000年代、2010年代以降と、3つの世代に分けて解説する。
第1世代(1990年代)は、「情報武装化」が叫ばれていた時代。手書きの文書などアナログの情報をデジタル化していくことが命題だった。経済的にはバブルが崩壊し、World Wide Webが登場した、インターネットの黎明期でもある。テクノロジーは、メインフレームやオフコンから、サーバーシステム、クライアントシステムにダウンサイジング、オープン化していった。そんな背景の中で、CRMパッケージが登場した。
第2世代(2000年代)は、政府のブロードバンド構想のもと、各家庭に光回線のネットワークが広がった。後半にはリーマンショックが起こり、そのさなかで初代iPhoneが登場。スマホが普及し、さまざまなアプリやソーシャルメディアが生まれ、顧客接点が増えていった。
そんな中で、テクノロジーとしては、クラウドサービスが登場。ブロードバンド構想から発展し、クラウドで外部のシステムにネットワーク接続する環境に変わっていった。このような中、現在でも使われているようなCRMや、SFAのソリューションが登場し、それらを統合したシステムが活用されはじめた。
第3世代(2010年代以降)に入ると、企業にとって使えるデータの種類が増える反面、個人情報の取り扱いに関して、社会の意識が高まっていった。GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)、日本では改正個人情報保護法など、法規制が整備されていく。経済的にはコロナ禍のインパクトが大きい。
これまでも、オムニチャネルという観点でリアルとデジタルの連携が模索されてきたが、OMOという観点で、社会は一気にデジタルに軸足を移している。テクノロジーとしては、第2世代までは過去を分析するものだったが、ビッグデータにAIや機械学習を適用することで、未来を予測できるようになってきた。
そんななかで生まれたのが、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)。2011年に創業したトレジャーデータのTreasure Data CDPは、グローバルでNo.1CDPベンダーとしての評価を受けている。
Treasure Data CDPは、属性データや、行動データなど、さまざまなデータを統合することで、より深い顧客理解を実現する。購買・解約というCRM領域だけでなく、SCM(サプライチェーンマネジメント)領域の需要についても、過去の分析だけでなく、未来も予測し、意思決定を高度化・効率化するプロダクトだ。
さらに、「Beyond Marketing」をコンセプトにプロダクトを進化させ、2021年9月には法人営業向けの「Treasure Data CDP for Sales」、コンタクトセンター向けの「Treasure Data CDP for Service※」を発表した。
※2021年10月12日からのグローバルでのサービス展開に伴い「Treasure Data CDP for Contact Center」は「Treasure Data CDP for Service」へプロダクト名称を変更しました。イベント開催時は旧名称でしたが、記事では「Treasure Data CDP for Service」として記載しています。 |
Treasure Data CDPによるデータ活用はマーケティング領域で進んでいだが、三谷教授が指摘するように、顧客との接点はセールスやサービス(コンタクトセンター)もある。「あらゆる顧客接点からデータを収集し統合することで、マーケティング領域だけにとどまらない、最高の顧客体験を実現できる」と、三浦は新プロダクトのあり方を展望する。
三浦のプレゼンテーションに対して、「今まではマーケティングやセールスが、別々に顧客を理解してきた。しかし、それらを統合して顧客戦略を立てれば、マーケティングの投資をセールスで回収するような考え方が成り立つ」と三谷教授。「初めてCRMの書籍を上梓してから20年、ついにこの考え方を実行する時代が来た」と感慨深く振り返った。
CRMから優れた経営戦略を導くには
三谷教授は三浦に対し、前掲の「CRMの落とし穴」に関して、日本企業の現状とトレジャーデータの取り組みを聞いた。
「この数年、DXの弊害になっているのは、組織、セクショナリズム、チャネルミックスだ」と三浦。トレジャーデータのお客様は、大手企業が多く、複数のブランドを運営する企業が少なくない。または、Web、店舗、コンタクトセンターと、複数のチャネルで顧客接点を持っているのが当たり前。データ活用は、ブランド、チャネルごとに、それぞれ行っているのが現状だ。
三浦は「この分断はCDPというツールで打破できるが、組織の壁を越えるモチベーションがある組織は多くはない」と指摘する。統合的なデータ活用を実行するインセンティブ設計が求められる。三浦は、企業にはCRMピラミッド(三谷教授)の上層「顧客戦略」に注力し、組織を構築してほしい、と力説する。では、企業の経営戦略としてCRMを構築する上で、重要なことは何か?
三谷教授は、商品軸と顧客軸の2つの市場の見方を提示し、顧客軸で見ることの重要性を述べた。
商品軸では「何がどれだけ売れたのか」、顧客軸では「誰にどれだけ売れたか」が売上になる。「ほとんどの企業では商品軸で議論が始まる」と三谷教授は指摘する。売れそうな商品を見つけ、買ってくれる顧客を見つけ、売り込みを行う。商品軸では「見込み客を探すムダ、買わない人に推すムダが生じる」というのが三谷教授の主張だ。
買いたくない人に、いくら値下げをしても、買わせることはできていない。しかし、顧客軸で見れば、「誰がお金を使っているか」「その人の中で自社のシェアは」「どんな商品をどうすれば買ってもらえるか」という議論になる。市場を顧客軸で見る手間はかかるものの、買ってもらえる商品を探し、作るところから、じっくり準備ができる。
実際のビジネス環境では両方の視点が必要だが、「社長の問いかけで、商品オリエンテッドか、顧客オリエンテッドな会社なのか、方向性が決まる(三谷教授)」。経営者が「何が売れていないか」と聞くのか、「誰が買ってくれそうなのか、誰が買っていないのか」と聞くのか、どちらだろうか? 経営戦略・顧客戦略を策定する経営者自身が、顧客視点が重要であることを社員に示せなければ、本質的なCRMを進めることは難しい。
最後に、三谷教授は、CRMに取り組む組織、人への2つのメッセージを述べた。1つは、「競合や他の人と違ってこそ、戦略であり、意味がある。共通の答えはない」ということ。企業が持つ商品、潜在顧客は企業によって異なり、その掛け算で戦略が生まれる。やりやすい戦略は簡単に追いつかれる、または潰される。「暗闇のなか新しい道を行く」そんな覚悟が必要だ。
2つ目は、「日本と海外で比較すると、日本人は、ワーカー・作業者ではなく、みんなが創意工夫をするエンジニアのように働くことができる」とも述べた。CDPのようなツールで、データ収集や活用が多くの人にとって容易となり、従業員が会社や人の能力をどのように引き出していくのか。これが企業に共通する課題となるだろう。