Treasure Dataでエバンジェリストを務める若原強が各界注目のゲストを招いて対談する「PLAZMA TALK」。今回のゲストは、慶應義塾大学医学部特任助教、かつ日本サウナ学会代表理事という、医師でありながら筋金入りの「サウナー」でもある加藤容崇さんです。今回は、サウナ×デジタルを加藤医師と考えていきます。本対談は3回に分けて配信いたします。
第2回目は、サウナ自粛中の全サウナーに朗報の、自宅のお風呂で(ある程度)サウナを代用できる入浴法、健康状態を高い状態に維持するために、サウナが効果的である理由など、 サウナーもサウナーでない方も必聴の実践回です!
Topics
健康について整理/異常値や病気というのは目標が低すぎる/健康状態を高い状態に維持する、というのが健康であるということ/「サウナは凄いよくってですね(笑)」/食生活や運動の習慣を全員が取り入れるのは難しい/「努力がいらなくて取り入れやすくて安くて簡単な取り組み」とは?/サウナはただ入るだけ!/経験や才能、努力、習熟度に左右されないサウナ/日本は世界で一番公共サウナを有する国(330万個)/「サウナインフラは世界一」/「サウナはおっさんが我慢比べしている場所じゃない」/サウナのイメージを変えたい/10歳以上であれば大丈夫/新型コロナウイルスとサウナ自粛/深部体温の観点で考えれば家庭のお風呂で代用は可能/40〜41℃で15分がひとつの目安/炭酸が発生する入浴剤もおすすめ/二酸化炭素の効用/おうちお風呂ならではの楽しみ方もできます
Yasutaka Kato: Project Assistant Professor, Keio University School of Medicine / Representative Director, Japan Association of Sauna
Tsuyoshi Wakahara: Evangelist, Treasure Data
Recording: 2020/04/15
※収録はオンラインにて行っています。一部背景に環境音が入っている箇所あります。ご了承ください。
若原 加藤さん、今、サウナに入って体に起こることをいろいろご説明いただいたわけなんですが、また別の観点でお話を伺えたらなと思います。今ちょうど新型コロナウイルスの文脈で、健康を維持するということに対して世の中的にいろいろ意識が高まっている時期とも言えるのかなと思いますので、「健康を維持するということ」「サウナを楽しむ」「サウナ浴をするということの関係性や関連」などについてもご見解をお聞かせいただけないかなと思います。
加藤 わかりました。
健康について整理 / 異常値や病気というのは目標が低すぎる
加藤 一応コロナウイルスに関しては、僕は感染症の専門家ではないのでコメントはしないんですけど、一つ言えることは、今回コロナウイルスで重症化する人というのは、ご高齢の方とか基礎疾患をお持ちの方とか、要するに健康でない方なんですよね。
ここで、健康ということについて1回整理したいと思うんですが、いろんな人に「あなたは健康ですか?」と聞くと「健康です」という返事が来ると思うんです。じゃあ「なんで自分は健康だと思いますか?」という質問をすると、「今まで病気一つしたことがない」「健康診断に行っても異常値が一つも出ないから自分は健康です」という回答が一番多いんです。
基本的に異常値とか病気というのは、非常に低い目標なんですね。なので、生まれつきの状態がすごく健康だとしたら、だんだん落ちてきていて、越えてはいけないボーダーラインを越えたという状態が、検査値に異常が出るとか、病気と診断されるとか、そういう状態だと思うので、そもそも目標が低すぎるんですよね。
健康状態を高い状態に維持する、というのが健康であるということ
加藤 ここ越えないから健康なんじゃなくて、そもそも「健康」って何かというと、病気をしないことではなく、「健康状態を高いレベルに維持する」ということが基本的には健康を維持するということなので、健康に対する意識を変える必要があるかなと僕は思っています。
若原 そういう意識がより大事になってきたときに、サウナに入ることというのはどんなふうに上手く活用できますか?
「サウナは凄いよくってですね(笑)」
食生活や運動の習慣を全員が取り入れるのは難しい
加藤 サウナは凄い良くってですね(笑)、例えば「運動を何分以上しましょう」「野菜を何グラム以上食べましょう」とか、ぶっちゃけて言うと「頑張ればできる人」「できない人」っていると思うんですが、結構ハードル高いと思うんですよね。
運動習慣も、ある人だったらいいと思うんですが、「忙しい人」や「交代勤務の人」など、全員が全員できるわけでもないし、少し余裕のある人しかそういう習慣って取り入れられないと思うんですね。今回コロナウイルスってみんな平等にリスクに晒されますから、それじゃいけないと思います。
「努力がいらなくて取り入れやすくて安くて簡単な取り組み」とは?
サウナはただ入るだけ!
加藤 一部の人が健康で、大部分の人が健康じゃない、という状態だとよくないと思うので、「努力が要らない」「取り入れやすい」「安くて簡単なもの」という条件が必要だと思うんです。なので、運動は非常に大事だし、食事習慣も大事ですが、実現が結構難しくてみんなが達成できない状況です。
ただ、サウナって「入るだけ」じゃないですか。経験も必要ないし、そんなに時間も金も必要ない。サウナ代がちょっと掛かりますけど、1回1,000円とか2,000円とか掛かりますが、あちこちにあるし、どこのスーパー銭湯にもある。なので、かなりお手軽な健康習慣だと思うんですよね。
お風呂のついでにサウナもどうですか?っていう。お風呂は、みんな大体毎日入ると思うんです。そこにサウナを組み込むだけでいろんな病気を予防するような健康効果があるので。サウナだったら、運動何分以上とかよりは取り入れやすいんじゃないかな、と思うんですよね。
若原 確かに。入るだけと言えば本当に入るだけですし、入り方にあまり上手い下手もない世界ですしね。
経験や才能、努力、習熟度に左右されないサウナ
加藤 ヨガとか瞑想って、ウェルビーイングというか、それも大事だと思うんですけど、「習熟度によって効果が違う」ということが論文報告されていまして、経験とか才能にかなり左右されるらしいんですよね。サウナはその点、才能も何も関係ありませんから。
若原 先程教えていただいた、手順を目安に入れば、ある程度皆さん同じ効果が得られるということですね。
加藤 はい。
日本は世界で一番公共サウナを有する国(330万個) / 「サウナインフラは世界一」
加藤 サウナは「努力も才能も必要ない」というすごくお手軽な健康習慣で得られます。しかもインフラも整っている。実は日本って世界一の公衆サウナを有する国ですから。
若原 数的に?そうなんですか?
加藤 家庭用サウナの数を含めるとフィンランドのほうが全然上です。フィンランドは330万個サウナがあると言われているんですが、多くは家庭で個人で持っているサウナだと思うんです。
日本は公衆サウナをこんなにたくさん持っているという面で多分世界一位だと思うんですよね。なので「サウナインフラは世界一」だと思います。あとは「きちんと安全に入る方法」「健康に対する効果が強い入り方」をみんなに広めれば、手軽にみんな健康に慣れるという、非常に良い習慣なんじゃないかな、と思います。
「サウナはおっさんが我慢比べしている場所じゃない」 / サウナのイメージを変えたい
若原 そう考えると、今サウナの見られ方って、ブームになっているとはいえ、まだまだいろいろな見られ方があるような気がしていて。「おじさんが入るものでしょ?」「暑くてつらいんですよね」とか。
そういう見られ方をされちゃうのは非常にもったいない気がしますね。活用して、健康を享受できるやり方というか、暮らしの要素にもっとなっていってもよさそうな気はしますね。
加藤 イメージが今のところあまりよくないので、なんとかイメージを変えていければなと思いますよね。
若原 先程、名前を挙げられた松尾さんとか秋山さんも、そういったイメージの改善みたいなことに非常にいろいろ活動されているというのもありますもんね。
加藤 そうです。「おっさんがハアハアして我慢比べしている」というイメージがやっぱりよくないので。
10歳以上であれば大丈夫
加藤 それこそ女性とか、本当に小さい子どもは高温で負担がかかっちゃうのでよくないんですが、10歳以上であれば問題ないです。なので、家族みんなで楽しめる、享受できるような健康習慣にしていきたい、みんなで今そのイメージを変えている最中、といった感じですね。
若原 なるほど、よくわかりました。ちなみに今、私自身もそうなんですけど、外出規制がかかる中、サウナに行くのを自粛しているサウナ好きの方々も少なくないと思うんですね。そうなったとき、例えば、自宅のお風呂で同じような、もしくは近しい経験、体験、変化を得られるやり方って何かあったりするんでしょうか?
新型コロナウイルスとサウナ自粛
深部体温の観点で考えれば家庭のお風呂で代用は可能
加藤 完全にサウナと一緒は無理なんですよね。それこそ火傷して死んじゃいますから。お風呂で90℃まで上げたら本当に死んじゃうので(笑)、完全にサウナと一緒にはならないんですが、深部体温という指標で見るとお風呂でも一部代用が可能なんですよね。サウナの代わりにお風呂でも可能です。
40〜41℃で15分がひとつの目安
加藤 医学的には、大体40℃から41℃のお風呂15分と、60℃のちょっとぬるめのサウナ15分で、大体同じぐらいの深部体温の上昇効果というふうに言われています。
41℃よりも温度を上げちゃうと、家庭用のお風呂だと自動でお湯が循環するので、足だけ熱い。いろいろ試したんですが、体は暑くはなるんですけど、出てくるお湯が当たる足がひたすら熱くて不愉快でよくない。長い時間入っていないといけないので、温度を上げすぎるのはおすすめしません。
炭酸が発生する入浴剤もおすすめ / 二酸化炭素の効用
加藤 その代わりに、僕がおすすめするのは、炭酸で発泡するようなバブや、炭酸が発生するような入浴剤がおすすめです。それを併用すると、深部体温が上がりやすくなるんですよね。
炭酸は、お湯の中に溶け込んで二酸化炭素が出るんですが、二酸化炭素って実は「血管を開く」作用があるんですね。二酸化炭素は、基本的に体の中で要らないものじゃないですか。速く流して酸素にしたいので、血管を開かせる作用があるんですね。なので、逆に表面の血管が開いて効果的に体が温まるので、併用するといいですね。
若原 なるほど。40℃から41℃のお湯に、炭酸が発泡するような入浴剤を入れて15分ということですね。
加藤 はい。足元が熱いのが嫌じゃなければ、もっと湯船の設定温度を上げても大丈夫です。
おうちお風呂ならではの楽しみ方もできます
加藤 僕の場合、41℃前後、42、41、40℃ぐらいで、バブを併用することにしました。それで、水シャワーを浴びて外で休憩するというのを1セットにして、2、3セットするのがいいかなと思います。
若原 それ、確かに気持ちよさそうですね。
加藤 意外と代用できるんですよね。
若原 自宅のお風呂が楽しみになりますね。
加藤 はい。しかも自宅ならではの良さが実はあって。お風呂の中でマンガ読んだり。蓋を閉めて、タオルを置いて、iPadなどを持っていって映画とか見るとか。自宅じゃなければできないような楽しみ方もできるので。
若原 確かに。完全にプライベート空間ですもんね。
加藤 サウナ室でやろうと思ったら贅沢な環境なので、逆にそれを利用して、もっと普段のサウナ室でできない楽しみ方ができるんじゃないかな、と思っています。
若原 そう考えたら、代用として渋々やっているというよりかは、むしろ「新しい体験を楽しむんだ」というポジティブな捉え方もできますね。
加藤 はい、そう思います。
若原 お聞きの皆さんの中でサウナ好きの方、ぜひ試していただきたいなと思います。
加藤 そうですね、ぜひ。
若原 ありがとうございます。
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最後までお読みいただきありがとうございます。
第2回は以上です。いかがでしたか?
加藤さんとのトークの続きは、最終回 「ただしくととのう」ために。サウナとデータの関係性 (ゲスト : 加藤容崇さん第3回) へ続きます。