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成果を最大化させる、営業の生産性向上を実現した2つのヒント

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営業改革やDX推進のために取り組む中、「営業の生産性向上」は重要なテーマです。目指すべき姿が描けていたとしても、具体的な道のりや施策は明確にありません。

「営業とマーケティングの連携は喫緊の課題だ」。シンフォニーマーケティング株式会社の庭山一郎氏はそう警鐘を鳴らします。営業とマーケティング組織の違いと、B2Bマーケティングの基本、そしてマーケティングと営業を連携する最先端のモデルまで、500社を超える企業を支援してきた庭山氏が解説します。聞き手はトレジャーデータの堀内健后です。

(本記事は、2023年3月14日に開催したウェビナーの内容を抜粋、編集して執筆しています)

<目次>

営業は狩人、マーケターは?

庭山:B2Bビジネスのマーケティングで一番大きな問題は、売上に貢献できないこと。その理由は、マーケティング部門と営業部門の連携がとれていないためです。双方とも、連携したことがこれまでなかったわけです。営業はマーケティング部門が獲得してきたアポイントをどう扱っていいか分からず、マーケティングの担当は営業の担当者とどう付き合っていいか分からない。結果的にマーケティングがワークすることはありません。

日本の営業は本当に大変です。例えば新製品が開発されると、ある日突然その製品の販売というノルマが営業に課されます。「どんな会社に売る想定ですか?」と聞くと「それを考えるのが営業の仕事だろう」と言われる。そんな状況は日本だけです。
誰にどんな価値を提供するか。営業が考えることではありません。STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)の問題であり、本来マーケティングの専権事項です。
B2Bビジネスに限っていえば、その営業はリードタイムが非常に長いわけです。それゆえ、商談を獲得し、ある程度の地固めまで進めるのも、海外ではマーケティング部門の役割です。では営業の仕事は何かというと、商談の終盤から案件のクロージング、納品、そして代金回収なのです。

「Sales is Hunter」、これは世界のビジネスでは常識です。数百万円の小型商材なら3カ月以内、大型商材でも最長12カ月以内にクロージングする案件だけを営業が追います。
マーケティングはどうでしょうか? 「Marketer is Farmer」、つまり農耕ですね。展示会に出て、セミナーを開催し、メールやWebのコンテンツをつくり、データを管理するなど、荒れ地を耕し、畑に種を撒くような作業はマーケターの仕事です。
狩猟の営業、農耕のマーケティング。この分類が一般的でしたが、さらに今ではマーケティングとセールスの2分割から、両者の間に入るインサイドセールス、クロージング後のカスタマーサクセスが加わり、4分割に進化しています。

成果を最大化させる、営業の生産性向上を実現した2つのヒント、講演の様子

ところが、日本の営業はマーケティングの仕事も全部やった上で、接待も含めたカスタマーサポートも行います。これほど広範な業務を持たされて、生産性が上がるわけがありません。耐えられなくなって、外資系の企業に流出する人材も少なくないのです。

営業とマーケティング連携の最先端を示す2つのモデル

堀内:営業とマーケティングが分業し連携することが、営業の生産性を高める鍵であるということですね。しかし、ただ分業するだけでなく、そこには一貫した戦略が必要ですよね?

庭山:「ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく『穴』である」。これはマーケティングの巨匠セオドア・レビットが、50年以上前に記した言葉です。まずは、自社の商材が、どんな業種、規模、部門のどんな課題を解決するかを定義することが重要ということです。いわゆる、DoV(ディフィニション・オブ・バリュー)という考え方です。
DoVがなければ、その先のSTPやマーケティングミックス、さらにマーケティングから営業にリードを渡すデマンドジェネレーションもできません。
私たちがお客様と仕事をする際は、こうしたマーケティングの古典的フレームワークをきっちり押さえます。そのうえで、2つのファネルでマーケティングを設計します。

1つ目のファネルは、多くの日本企業が既に持っている営業のファネルです。ファネルの母集団であるSGL(セールス・ジェネレイテッド・リード:営業が獲得したリード)は、多くの場合紹介案件ですので、マーケティングは関与しません。

もうひとつのファネルが、マーケティング由来のものです。展示会やウェビナー、ホワイトペーパーなどのコンテンツでリードジェネレーションを行い、リードの母集団を集めます。そこからインサイドセールスの活動などでMQL(マーケティング・クオリファイド・リード:マーケティング施策を通じて創出した見込みの高いリード)をつくり、さらにSAL(セールス・アクセプテッド・リード:MQLから営業が受け入れたリード)へと進みます。
SALとSGLは受注確度において同格です。それらを合わせて、SQL(セールス・クオリファイド・リード:本格的な営業プロセスへ回す見込み客)と見なします。商談が進むごとに確度が高まり、B案件からA案件へ、そして受注へ至るのです。
SQLの前後で、マーケティング部門と営業部門がリードの個人情報を持っているので、両者を統合する必要があります。そこで活用するのがCDPです。これが、B2Bマーケティングの最先端のモデルです。

堀内:営業とマーケティングにおけるリードの扱いが明確に示されていますね。

庭山:もうひとつ、世界のマーケターが注目しているのは、データに基づいた部門間の高度な連携です。
一番のベースには経営戦略があり、それを実現するためにマーケティング戦略が存在します。その上に乗るのがデマンドセンター。具体的に営業の案件を創出する機能です。このデマンドセンターにCDPを導入し、全社の個人情報を、部門間を超えて統合します。その枠の上に、マーケティングと営業はもちろん、プロダクト(開発・製造部門)が連携しています。
全社で統合された同じ情報を見て開発と製造を行い、プロモーションをかけ、コールして、最後に営業が刈り取る。このHigh-Perfoming Revenue Engineと表現していますが、これが確立された企業の収益は19%も早く成長し、15%も営業利益率が高くなる、ということがわかっているのです。

成果を最大化させる、営業の生産性向上を実現した2つのヒント、講演の様子

堀内:経営戦略とマーケティング戦略、そしてCDPを活用したデマンドセンターを土台として、生産性の高い営業のあり方がよく見えてきました。

販売パートナーを活用せよ

堀内:営業とマーケティングの連携について、さらに具体的にお聞きします。
営業単体のファネルと、マーケティングが関与するファネルを見せていただきました。マーケティングがつくったリードからの最終受注金額は、どの程度の割合になるのが適当なのでしょうか。

庭山:市場によってかなり変わります。日本国内で、ある程度の規模と歴史がある企業であれば、マーケティング由来の売上は25%が限界です。例えば売上1兆円の会社で、2,500億円以上をマーケティング経由で生み出すのは、ほぼ不可能でしょう。

堀内:それだけ受注するために、マーケティングはどれほど多くの商談を獲得しなければならないかを考えてしまいます。

庭山:そうですね。実際はマーケティング経由で、全体の10%も受注できれば大成功でしょう。

ただ、海外市場ならその割合は高まります。

堀内:新規の市場だからでしょうか?

庭山:それもありますが、ポイントとしては販売パートナーです。日本企業は販売パートナーの使い方が得意ではないのです。ここに大きな伸びしろがあると考えます。

例えば、ある国で強い販売ルートを持つ販売代理店のパートナーと、1社独占の状態で契約しているケースがあります。こういった場合、代理店側はそのパイプラインを見せず、顧客情報もシェアしない、ということが少なくありません。通常考えれば、独占契約であれば企業側にパイプラインは開示するべきですし、それができなければ、独占ではなく複数社で競合する必要がありますよね。

堀内:パイプラインが見えなければ、市場を理解してプロダクトを開発するような連携はできませんね。海外進出時の新規開拓など、生産性の向上に重要な視点のひとつだと思います。

マーケティング予算に正解はない

堀内:マーケティング由来の売上を一定程度確保する場合、適切な予算はどのように導けばよいでしょうか。

庭山:B2Cのビジネスでは「売上の3%が広告宣伝費の目安」などと言われますが、私はマーケティング予算にセオリーはないと考えています。
例えば、あるB2Bの事業部の売上が全体で1,000億円、そのうち20%をマーケティング由来でつくるとします。SALからのクロージング率が10%だとすれば、マーケとしては2,000億円分の商談案件をつくれば、理論上200億円の売上に貢献したことになります。
そのためには、いくら予算が必要でしょうか。目標から逆算して予算を決めるべきですが、売上だけでなく全体的な数字を考慮して、整合性を取っていく必要があるでしょう。極端な例ですが、売上が200億円でも粗利が80万円だった場合、それを獲得するために150万円使ってしまったら赤字ですよね。
マーケットシェアが1位なのか、2位、3位なのかでも、マーケティングの手法はまったく異なります。あらゆる要素を加味しながら予算を決めなければ、施策はワークしません。

堀内:マーケティング予算のうち、何に優先して配分すればよいのでしょうか?

庭山:これは世界共通なのですが、マーケティングは「Content is King」です。最後はコンテンツで勝負が決まります。Webサイトも、ホワイトペーパーも、動画もケーススタディも、メールのタイトルまで、コンテンツは絶対に手を抜いてはいけません。

ただ、インフラが整備されていない状態でコンテンツに力を入れても意味がありません。まずはMA、チャット接客、ウェビナーソリューション、CDPなど、コンテンツの配信システムやデータを整えることにコストを使うべきです。

堀内:私たちも動画配信ツールやMAには年間数百万円のコストをかけていますが、そうした最低限のインフラコストは欠かせない、ということですね。

庭山:その通りです。そこから先はコンテンツです。いいコンテンツは、その会社の信用を非常に高めます。営業に効くことを優先したものではなく、本当に困っている人の課題を解決するようなコンテンツが重要です。

今、具体的な課題に直面しているペルソナを想定して作るコンテンツは、ターゲットに強く響きます。役に立つコンテンツを提供してくれた会社を嫌いになるはずがありませんし、アウェアネスも上がります。

堀内:営業や製造部門と連携する理想の姿に向けて、マーケティング、そして全社で行うことが明確になるお話でした。本日はありがとうございました。


<スピーカー>

庭山 一郎

庭山 一郎 氏

シンフォニーマーケティング株式会社

代表取締役

1990年にシンフォニーマーケティングを設立、代表取締役就任。製造業、IT、卸売業など300社を超えるBtoB企業のマーケティングプロジェクトを手がけ、その経験から国内・海外向けのマーケティングコンサル、運用支援と研修サービスを提供している。中央大学大学院ビジネススクール客員教授。著書に「BtoBマーケティング偏差値 UP」「究極のBtoBマーケティング ABM」ほか多数。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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