Webとリアルを融合させたサービスが増加する中、個人の属性や嗜好だけでなく、周辺環境が人の行動に影響を与えていることも忘れてはなりません。株式会社ONE COMPATH(以下、ONE COMPATH)では、そうした環境データに着目し、マーケティング施策に新たな価値を生み出そうとしています。
Webとリアルの融合における課題
Webとリアルを融合させてコンシューマーに価値を提供するサービスが増えている。ユーザー側もWebとリアルを意識することなく縦横無尽に動き回っているため、この両面をどう捉えていくかが今後のWebマーケターの課題だ――こう話すのは、ONE COMPATH メディアサービス本部 メディア事業部 マネージャーの森谷尚平氏である。
ONE COMPATHは、日々の暮らしに寄り添うワンマイルイノベーションを目指し、地図検索サービス「Mapion」や電子チラシサービス「Shufoo!」などを提供している企業だ。
「Webはトラッキングしやすくデータも豊富です。一方、リアルな世界はトラッキングが困難で、データも不足になりがち。そのため、生活者のリアル行動をどう捉えていくのかが大きなテーマです」と森谷氏は語る。
最近では、リアルの特性を持ったサードパーティDMPを活用する企業も出てきており、パーソナル特性のリッチ化も進んでいるというが、そこには限界があると森谷氏は指摘する。それは、ロイヤリティが高いユーザーであればリッチな特性を取得できるが、人数が限られるためだ。また、サードパーティデータにも精度や突合率の限界がある。さらに、データがリッチになればなるほど個人情報の取り扱いリスクも増大する。
また森谷氏は、パーソナル特性以外にも行動を決定する要因があると語る。例えば、周辺環境に伴う要因だ。気象やエリアの特性、さらには流行や世論に伴う行動決定要因もある。
そこでONE COMPATHでは、パーソナル特性以外の外部環境データも活用し、さらなる価値を生み出そうとしている。
エリア環境データを用い、マイクロエリアターゲティングへ
新たな価値を提供するにあたって鍵となるのが、同社のエリアデータマート「TORIMAKU」だ。これは、人を取り巻くエリア環境データを提供するサービスである。具体的には、気象データやジオデモグラフィックデータを、1kmメッシュ単位あるいは市区町村町丁目などの細かい粒度に分類し、マーケティングに活用できるような数値に正規化して提供する。
「例えば、特定の商品カテゴリーに対し、この地域では1世帯あたりどの程度消費しているのかといった推計消費支出データを算出できます。そのデータに基づいて、地域ごとに異なるマーケティング手法を検討することも可能です」と森谷氏は説明する。
データの具体例として森谷氏は、静岡県における市区町村別のアルコールに対する消費額を挙げた。同氏の示したデータによると、熱海や伊豆といった地域ではウイスキーや日本酒の消費が多く、静岡中央ではワインの消費が多いというデータがある一方で、焼酎は静岡全域で消費されているという。この結果について森谷氏は、「静岡はお茶が有名な地域なため、全体的に焼酎のお茶割りがよく飲まれているのではないでしょうか?」と分析した。
また、静岡県の西側では東側よりアルコールの消費が少ないことも判明。さらに調査を進めると、自動車の購入支出額が西側で高いことも判明した。
こうして位置情報を伴うデータから、「マーケティングの効果が高いエリアと低いエリアを割り出し、TORIMAKUのエリア傾向と組み合わせることで、エリアごとに施策を立てます。これにより、日本全国どの地域でも1kmメッシュ単位や市区町村単位でのマイクロエリアターゲティングが実現できるのです」と森谷氏。現在ONE COMPATHではこうしたターゲティングを実証実験中だという。
顧客データにサードパーティデータを組み合わせるだけでなく、さらに外部環境データや外部行動要因を組み合わせることで新たな価値が生まれる――これをTORIMAKUによって実現しようとしている。