MAとCDPの違いとは? 組み合わせで描く「マーケティング、次の一手」
MA(マーケティングオートメーション)とCDP(カスタマーデータプラットフォーム)は混同される場合もありますが、両者の役割や機能は全く異なります。
この記事ではMAとCDPの違いを明確にし、両者を組み合わせたより効果的な使い方を解説します。
<目次>
MAとCDPの違いとは?
MAとCDPの違いは大きく分けて2つある。サービスそのもののコンセプトの違いと、扱うデータ範囲の違いだ。それぞれ詳しく解説しよう。
1. サービスのコンセプトの違い
サービスのコンセプト、つまり何のために作られたサービスなのかがMAとCDPでは異なる。MAはマーケティング施策を実行するためのツールの一種で、CDPは顧客データを収集・蓄積・処理するプラットフォームだ。
MAとは、マーケティング施策を実行するためのツールの一種
MAは、リード(見込み顧客)の属性や行動のデータを基に、最適なマーケティング施策を実行するためのツールだ。実行できる施策は主にメール施策だが、種類によっては広告連携ができるMAもある。
MAではリードをスコア付けし、関心度や購入確率が高いリードだけを抽出してメールを送ることができる。リスト全員への一括配信よりもきめ細かなメール施策を行いたい場合に用いられる。
既に名前や連絡先のわかっている見込み顧客を対象とするため、ただWebサイトを閲覧しただけの匿名ユーザーは施策の対象にならない。また、成約してリードから既存顧客になった後はCRMの領域となるため、MAが主に担うのはリードナーチャリング(見込み顧客の育成)だ。
CDPとは、顧客データを蓄積・処理するプラットフォーム
CDPは、リードだけではなく潜在顧客や既存顧客も含めた全てのステージの顧客データを蓄積し、高速処理するプラットフォームだ。データの収集・蓄積と処理に特化しており、CDP自体が何らかの施策を行うことはない。
MAに入っているデータも含め、顧客に関する全てのデータを一旦CDPに集約する。そのデータを高速処理し、データの整形やセグメント抽出等を行ってから各ツールに渡すまでがCDPの役割だ。そこから先はMAやCRM等、施策実行のためのツールの役割になる。
2. 扱うデータの幅の違い
MAは主にメール施策を実行するツールなので、メールアドレスや氏名をはじめとするリードの情報を保存しておく機能が付いている。また、データの一部をセグメントとして抽出し、特定のリードのみにメールを送信する機能もある。
上記のようなMAのデータ取扱い機能がCDPのデータ収集・処理機能と似ているため、両者が混同される場合もあるが、MAとCDPでは取り扱うデータの幅に大きな違いがある。
MAは施策実行ツールであるため、扱うデータは施策の実行と効果測定に使用するものに限られる。例えばリードの氏名やメールアドレス、メール配信履歴、メール開封やクリックの履歴、フォーム入力内容、Web上の一部の行動履歴等だ。
対してCDPには、顧客に関連するデータ全てが集約される。MAに入っているデータは、CDPに集約されるデータの一部にすぎない。MA以外の様々なツールのデータや天気予報等の外部データ、実店舗での購買情報等、オンラインからオフラインまで多種多様なデータを収集できる。また、名前や連絡先のわからない匿名ユーザーのデータも、Webサイトやアプリのログデータを用いて集約することができる。
MAはデータ保有期間に制約があることが多いが、CDPは期間の制限なく活用できるという点も大きな違いだ。幅広いデータを期間の制限なく蓄積すれば億単位のレコード数は当たり前になる。CDPはデータの蓄積と処理に特化することで、大量のデータを素早く処理できる性能を実現している。
例としてTreasure Data CDPが行ったパフォーマンス測定実験では、15億レコード×200カラムのアクセスログデータの処理が56秒で完了した。
MAとCDP、どちらを使うべきか
「MAとCDP、どちらを使えばいいのか」と悩むこともあるかもしれない。しかし、MAは「ツール」でCDPは「プラットフォーム」であり、どちらかを選ばなくてはいけないものではない。むしろ「どちらも使う」のが効果的だ。
CDPには企業が保有するあらゆる顧客データが蓄積されている。その中からデータ処理機能で目的に応じた精度の高いセグメントを作り、MAに引き渡す。渡されたセグメントに対して施策を実施することで、個々の顧客の状況に応じたきめ細やかなオファーが可能になる。
マーケティング施策に効果的なセグメントの例を3つ紹介する。
・自社データ統合セグメント |
・自社+外部データセグメント |
・予測セグメント |
自社データ統合セグメント
CDPに蓄積された自社のデータを総合して分析し、特定の条件に当てはまる顧客のみを抽出する。
例)顧客の属性・保有商品・行動データから「クロスセル商材をおすすめできそうなセグメント」を作り、キャンペーンメールを送信する |
自社+外部データセグメント
自社のデータと外部のデータを掛け合わせて分析し、特定の条件に当てはまる顧客のみを抽出する。
例)来店予定日データと外部の天気予報データを組み合わせて「雨の日に来店予定のセグメント」を作り、キャンセル防止の施策を打つ |
予測セグメント
機械学習モデルで顧客をランク/スコア付けする。
例)直近の成約客のデータを基に機会学習モデルを作成し、「3か月後の成約確率」をスコア付けする。スコアの高い顧客に優先的にアプローチする。 |
MAで施策を実行した後は、メールの開封率やクリック率等の実行結果データをCDPに戻す。こうしてさらにCDPにデータが蓄積され、今後のセグメント抽出や機械学習モデル作成に役立てられるというサイクルができる。
なお、CDPで作ったセグメントを受け渡す先のツールはMAに限らない。CRMやBI等、さまざまなツールとCDPを組み合わせて活用することが可能だ。
CDPからMAにデータを渡すには?
主なMAの場合、Treasure Data CDPには連携に必要な「コネクタ」があらかじめ用意されており、データを渡すためのツール間連携機能を開発をする必要はない。
コネクタを自社開発する場合、環境にアップデートがあるたびにメンテナンスや改修も自社で行わなくてはならない。例えばFacebookAPIならば90日ごとにアップデートされているので、年に3回はメンテナンスが必要になる。
Treasure Data CDPにはMAを含む各種ツールとのコネクタが170以上実装されている。メンテナンスはトレジャーデータが行うため、企業はスピーディに導入でき、データ分析や施策の立案に注力できる。
CDPとMAの連携による成功事例
CDPで作成したデータセグメントをMAに連携して施策を実行することで、実際に成果が上がった事例を3つ紹介する。
適切なセグメント抽出でコンバージョン率が2.8倍
この企業ではCDPに蓄積されたデータのうち顧客の属性・保有商品・行動ログを用い、投資信託をおすすめできそうな条件に当てはまるセグメントを抽出した。さらにそのセグメントをMAに引き渡し、投資信託の口座開設を勧めるメールキャンペーンを実施した。
キャンペーンの結果、その顧客が口座を開設したかどうかのデータはCDPに蓄積される。次からはそのデータを用いてセグメントを作ることより、口座開設した顧客には初回積立購入や積立金額アップのキャンペーンを実施する仕組みだ。
この仕組みにより、一部のキャンペーンではCDP導入前に比べてコンバージョン率が2.8倍になった。施策内容の工夫による効果もあるが、CDPで生成したセグメントの精度が高かったことも成果があがった要因のひとつだ。
CDPとMAの組み合わせで提案を行う仕組みは、営業スタッフの負担軽減や対面販売のリスク低減にもつながる。
雨の日対策でキャンセル率改善、来社率8%アップ
この企業では、派遣登録面談のために来社してもらう際、雨の日のキャンセル率が高いのが課題だった。そこで自社が保有する面談予定データと外部の天気予報データから「来社面談予定日が雨予報の候補者」セグメントを作成し、来社特典としてAmazonギフト券がもらえる旨の告知入りリマインドメールを、面談前日にMAから自動送信することにした。
すると、施策実行前と比較して雨の日の来社率が8%アップした。多店舗で展開する業態では、それぞれの店舗で8%上昇すればかなりのインパクトになるだろう。
機械学習による予測セグメント利用で成約率が3.3倍
この企業では、成約客のあらゆるデータを教師データにして機械学習モデルを作り、3ヶ月後に成約できそうな度合いで見込み顧客をスコア付けした。さらにスコアの数値によってA・B・C・Dにランク分けし、4つのセグメントを作った。Aランクは確度が高く、Dランクは低い。
これらのセグメントをMAや販売店のCRMに連携し、確度の高いセグメントには販売店での個別対応、低いセグメントにはMAで興味関心を促進するメールキャンペーンと、それぞれに適した対応を行った。
これにより、Aランクの成約率が3.3倍に向上した。販売店が確度の高い見込み顧客への対応に注力できたことが要因だろう。自動車は単価が高い商材なので、この取り組みだけでも約50億円の売り上げ増となった。
深い顧客理解に基づいたマーケティング施策のために
ここまで解説してきたように、MAは主にメール施策を実行するためのツール、CDPはデータを蓄積・処理するためのプラットフォームだ。2つを組み合わせて使うことで、より高い効果を発揮する。
データ分析による深い顧客理解と、その理解に基づくマーケティング施策のために、ぜひ両者を組み合わせて活用してほしい。