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CDPの投資対効果とは?

〜投資対効果を最大化する方法〜

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近年、多くの企業が顧客データを活用して競争力を高めるために、CDP(Customer Data Platform)の導入を進めています。CDPはマーケティング領域をはじめ、フル活用すれば全社的な事業インパクトを創出できる一方で、そこに至るまでは様々なハードルがあり、投資対効果を最大化するには綿密な戦略と実行が欠かせません。

トレジャーデータでは、株式会社MJの宮野淳子氏をお招きして「CDPの投資対効果とは?」と題してウェビナーを開催。トレジャーデータ・前田恵が、ロレアルパリやアマゾンなどでマーケターとして辣腕を振るった宮野氏に、投資対効果を最大化するCDP活用法をお聞きしました。

<目次>

企業と顧客の関係構築にCDPが欠かせない理由

前田:最近のマーケターが直面する主な課題を教えて下さい。

宮野:「売上増」と「業務効率を上げる」。この2点が多いのではないでしょうか。
特に、売上増を図る上でよくご相談いただくのが「顧客エンゲージメントの強化」です。
エンゲージメント強化のためにCRMを推進したり、CDPを入れたりしても投資効果が出ない。さらに、業務効率化にも関わってきますが、CDPなどの「導入費用」だけではなくて「人の業務量」も含めた投資効果が出ないという悩みが多いです。

前田:実際にそのような課題を抱えている顧客に対して、宮野さんはどのように関わっていらっしゃるのでしょうか。

宮野:まずご提案するのが、「顧客をビジネスの中心に置く」ということです。

例を挙げると、私たちは普段生活している中で、友人や職場の上司部下との関係構築を行っています。「人の悩みの9割は人間関係」といわれることもありますが、それをより良くするために「相手を理解する」ように努めているはずです。

人間関係の構築と同様に、企業が顧客に対して関係構築ができれば、CRMは自ずと機能するでしょう。ただ、それを企業が行う場合は、ー対数千とかー対数万といった関係性になります。1人の相手を見て理解するのとは勝手が違いますよね。

そこで必要となるのがCDPです。私は企業と顧客の関係を構築する仕組み、それ自体がCDPであると捉えています。なぜなら顧客を中心に置いて、顧客を可視化してコミュニケーションを取るためのベースをCDPが担っているからです。

投資対効果を踏まえて、顧客と関係構築するためのサイクルを回す

前田:CDPを活用するには何から取り組むべきでしょうか?

宮野:最初に着手するのが「市場の理解」です。自分たちがいるカテゴリーの市場が伸びているのか、小さくなっているのか。また、消費者が何を求めているのか理解を深めます。

さらに競合と自社の評価を客観的に分析します。自社の強みと弱みを浮き彫りにして、弱みの解消が急務であれば早急に解決するプロジェクトを推進しますし、強みを伸ばすのが優先であればそれを推し進めるビジネスモデルを構築する。ここまでできると、顧客ジャーニー上の優先順位やマーケティングで何をするべきかが見えてきます。

そのうえで、顧客との関係を構築するプランを策定します。購買者の方とは1日目から永続的につながり続けることを目指し、顧客エンゲージメントの向上を図ります。これにより新規顧客の離脱を極力防ぎ、獲得効率も上がるでしょう。

最後に、プランに沿った戦略を実行します。この戦略はマーケティング戦略だったり、eコマース戦略だったり、CRM戦略だったりと様々です。広告戦略に関連しますが、MarTech(マーケティングツール)の導入も含まれますね。

この一連の流れの投資対効果を見てPDCAを回し、必要に応じて実行プランを作ったり組織づくりを行ったりするケースが多いです。

前田:今回のテーマは「投資対効果」です。「投資対効果」と聞くと、できるだけ低いコストでツールを導入して早くリターンを出したいと考えがちになってしまいます。

しかし、ツールを導入する前にそもそも何をしたいのか、市場はどうなのか、自社はどうなのかの3点を理解する。その上で適切なCDPを選び、顧客とつながって、戦略を実行するという一連の流れを踏まえて投資対効果を考えることが重要ということですね。

顧客の状況を全社で理解するまでの道筋

前田:CDPをマーケティング部門以外でも活用する場合、何が求められるでしょうか。

宮野:例えば「顧客理解」といっても、部門ごとで意味合いが異なります。その状態のままだと全社で最適化が難しいため、まずCDPに関わる関係者の目線合わせが必要です。

そして、このように目線を合わせるためにもCDPを活用します。成功している会社はCDPで顧客を可視化して、その情報をマーケターだけでなく、社長から現場の営業まで全員が理解をしているのです。それに応じて業務最適化もできますし、業務も自ずと効率化されます。これにより投資対効果が全社的に上がっていくのです。

前田:宮野さまがご支援したお客様がどのようにCDPを活用して成功したのか、事例など教えていただけますか?

宮野:パン屋などを手掛ける、ある食品会社をご支援した際の事例です。

この食品会社は、店舗は数多くあるものの、店舗のPOSデータと顧客データを取得できていませんでした。いわゆる「レジを通過するだけだった」顧客の情報を取得するため、スマートフォンのアプリでポイントが貯まるようにしたり、Eコマースを最適化して顧客の行動を可視化したりするところから着手しました。

現在では、全てのデータをTreasure Data CDPに集約させ、顧客との接点を作るためのプッシュ通知などを配信するMA、顧客を分析するBIを連携させるアーキテクチャーを組んでいます。

CDP活用というと、主にCRM領域で活用される企業が多いと思います。ただ、リターンを大きく求めるなら、マーケティングの4P全てに関わるように活用したいです。そうすることで、ビジネスの根幹を支えるデータベースの役割まで担えるでしょう。

CDPをマーケティングのあらゆる領域で活用できる体制を整えて、かつ定量調査などリサーチした結果も踏まえて顧客の姿をより明確に可視化できたら、どこで・何を・いくらで販売するか、そのためにどのようなプロモーションを打って顧客との関係を構築するか最適化させます。

実際にこれをどのように実現させるのか、フローでご説明しましょう。

購買前の状況では、メディアでプロモーションを展開するなどして来店を促します。そして、来店された顧客にはアプリのダウンロードをお願いして、クーポンを発行したり、ポイントを付与したりします。そして、再購入いただいた際にポイントを付与するなど行い、これらのデータを全てTreasure Data CDPに格納します。

各店舗の売上の要因にはさまざまなものがあります。商品ラインナップや接客などはその一例です。しかし、これを本社から見ようとすると非常に難しい。本社の営業からエリアマネージャー、さらに店舗スタッフを通じて把握するのは現実的ではありません。

この課題を解決するのが、CDPの活用です。例えば、アプリを使ったお客様には購入のタイミングでポイントを付与しますが、アンケートに回答いただけるとさらにポイントを付与するようにしました。これにより店舗ごとの顧客エンゲージメントが明らかになり、商品ラインナップや接客したスタッフの状況が可視化しました。

CDPを活用して店舗ごとの最適化をすることで、経営層も含めて顧客の状況をほぼ全て理解できるようになり、全社最適化が実現できました。

CRMを劇的に変化させる「CDPのインパクト」

宮野:CDPを活用したCRMについてもお伝えします。一般的には、購買回数や休眠期間によって顧客をセグメントすると思いますが、この食品会社では6回以上、30日以内に購入してくださる方々をロイヤルカスタマーと定義しました。

顧客データを分析しますと、このロイヤルカスタマーが売上の約50%に貢献していることが明らかになりました。このようなインサイトもCDPを活用すれば自動的に上がってきます。

またロイヤルカスタマーが、店舗ごとでどのような商品を購入しているかも可視化できます。例えば、東京のロイヤルカスタマーは食パンを購入する傾向があったのですが、愛知だと、有名なモーニングがあるからか食パンの購入比率が低い。また大阪では単価の低い商品を手前に置いた方が店舗の売上が上がることも明らかになりました。店舗ごとの最適化までできると、全社の売上効率も自ずと高まっていきます。
CDPはデータを集約できるテクノロジーですが、顧客との関係構築をする上でさまざまな角度から活用できるといえるでしょう。

前田:全社で取り組みを進めると、ここまでの成果が得られるわけですね。一方でマーケターからすると、全社で推進となるとかなりハードルが高いと感じてしまいそうです。全社を巻き込んで取り組みを進めるヒントやアドバイスはありますか。

宮野:私がご支援する場合は全てプロジェクト化します。その中にマーケティング部門の担当者もいれば、IT部門やファイナンス部門の担当者もいる。そういった方たちを全て巻き込んで、あらゆる関係部署がオーナーシップを持って進められるようにします。

押さえておきたい「CDPの選定基準」

前田:プロジェクトの肝になるCDPの選定について、アドバイスをお願いします。

宮野:アメリカを中心に、CDPはマーケターにとって非常に重要なツールであり、今後なくてはならないツールであるという認識が広がっています。そのため多くの企業がCDPをリリースしていますから、選定が難しくなりつつあるのは事実です。

その中で、まずお伝えしたいのが投資対効果を出すことを見据えて「どこまでCDPで網羅するのか」という点です。

例えばデータウェアハウスのように主にIT領域で使いたいのか、もしくはマーケティング領域で活用して企業成長を目指したいのか、広告効果まで見たいのか、CDPの活用範囲は非常に広いため、どこまで使うかでリターンが変わってしまいます。

その上で具体的な選定基準をお伝えすると、まずその国における「市場シェア」が挙げられます。例えば外資企業の場合、本国本社からツールを指定されることがありますが、他社ツールとの連携なども踏まえると、日本で導入する場合は本社の意向より日本の市場シェアを優先すべきである場合もあるでしょう。

次に「セキュリティ」です。これは言うまでもありませんが、例えば特にセキュリティ要件が厳密なヘルスケアカンパニーの場合は、HIPPAのような規制にも準拠しているか確認したいところです。また広告の最適化にも関わるので、メディアとのクリーンルーム連携が可能かも把握しておきたいですね。

あとは「データ処理速度」。先ほどお伝えした顧客可視化にはかなり分析が必要です。これに1週間かけていたのを、2秒で終わるCDPなのか、5分かかるCDPなのか。処理速度もツールによってかなり異なりますので、選定基準として押さえておくべきです。

さらに「使いやすいUI」も大切なポイントです。例えば、お客様相談室の担当者でも使えるようであれば、Webの行動履歴なども踏まえて対応ができますのでCRMの改善につながります。この領域まで視野に入ると投資対効果も大きくなるでしょう。

最後に「課金形態」です。データ量による課金やクエリを回すごとに発生する課金や、データ加工および広告接続に対する課金などがライセンス費用に含まれない、いわゆる隠れたコスト(Hidden Costs)としているツールベンダーもあります。これらを加味しないと投資対効果は合いません。これは確実に、導入前に確認しておきましょう。

CDPをフル活用すれば「新規事業」も創造できる

前田:今後の展望についてどのようにお考えでしょうか。

宮野:CDPを活用してリターンを生み出せるか、これに尽きると思います。

これは投資になりますから、企業がやるからには、それによって得られるメリットを最大化することが求められます。だからこそIT領域だけにとどまらず、できれば全ての領域を網羅した設計にしたいですね

CDP導入後は売上アップと業務効率化の両面で活用するのが重要で、顧客の可視化やニーズの把握につながります。さらに取り組みが一歩進むと、新商品やサービスの開発にもつながり、企業にホワイトスペースをもたらす新規事業のプランまでできると考えています。

前田:ありがとうございます。宮野さんがお話しいただいたことを一つひとつクリアすれば、成果が出るのは間違いないと思いますが、一方で最初から全てを取り組むのは少しハードルが高いかもしれません。そこで、今こそAIの力を使ってCDPを活用することが求められています。トレジャーデータも「AI-powered CDP」と銘打って、これからお客さまのデータ駆動型経営をより推進できるようサポートしてまいります。

宮野:CDP自体の進化も見逃せませんね。トレジャーデータも新たな取り組みがあるようで非常に楽しみです。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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