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LINEヤフーが目指す“ファン”に寄り添った新たな「エンタメDX」

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LINEヤフーが「F1日本グランプリ」とコラボし、ファンとの繋がりを深める取り組みを開始。データ活用で、F1ファン向けの新たなコンテンツやサービスを提供し、エンタメ体験を向上させる。

【この事例のポイント】
・LINEとヤフーの合体によって生まれたLINEヤフー。双方の強みを生かす新事業の創出に取り組んでいるが、その1つが「エンタメDX」だ。
・3日間で23万人以上の集客力を持つF1日本グランプリ。開催日以外のところでもコミュニケーションを強化し、F1ファンとのより深い関係をどう構築するかが課題だった。
・Treasure Data CDPとLINE エンタメアカウントを組み合わせることで、パーソナライズしたマーケティングの施策が可能になった。今後は新規ファン獲得にもつなげていく。

<登壇者>

鈴鹿サーキット
2024 F1日本グランプリ 大会組織委員長
上甲 哲洋氏

LINEヤフー株式会社
マーケティングソリューションカンパニー
経営企画・事業開発統括本部 事業開発本部 本部長
宮本 裕樹氏

<目次>

「エンタメDX」で体験価値向上と収益増を両立させる

LINEとヤフーを含むグループ再編によって、2023年10月に誕生した「LINEヤフー」。ポータル、検索、eコマース、SNS、メッセンジャー、広告など、多様な領域で事業展開する巨大IT企業の誕生として、ニュースでも大きく取り上げられた。事業開発本部に所属する宮本 裕樹氏は、新規事業創造の最前線で様々な可能性を模索している。新規事業のキーワードとして挙げるのが「エンタメDX」。デジタルの力、テクノロジーによって、新しいエンターテインメント体験の創造を目指すという。

「以前はヤフーのプラットフォームを使った情報発信が中心でしたが、今回の両社の合体を機に、LINEの強みを活かした新しいエンタメ体験を提供しよう。そう考えたのが始まりです」(宮本氏)

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「推し活」という言葉があるように、エンタメの楽しみ方も多様化している。そうしたコミュニティで重視されるのは、数よりもユーザー同士の関係性の深さだ。「1000人、100人でもいいのですが、あるコンテンツに対して高い熱量を持つ、コアなファン同士がつながるプラットフォームを構築したいと考えています」と宮本氏は語る。

イメージは、企業や店舗が使うLINE公式アカウントのエンタメ版だ(図1)。ファンやファンクラブと、情報を拡散させる各種メディアの間にLINEエンタメアカウントを置き、エンタメ体験のハブのような役割を持たせる。このアカウントには2つの機能があり、1つはファンとの交流、新しいファンとの出会いを生むコミュニケーションツールとしての機能。もう1つは、対話型コマース、メンバーシップ、トークルーム広告など、ビジネスツールとしての機能。この2つの機能により、エンタメ体験の提案と収益性の両立を目指している。

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図1 LINEヤフーが目指す「エンタメDX」の中心は「LINEエンタメアカウント」。ファン同士がつながると同時に、様々な形で拡散されている情報にもキャッチアップしやすくなる。コアなファン、新規ファン、どちらでも利便性、価値を感じてもらえるように設計される

コンテンツ提供側からファンへの情報配信については、顧客データ基盤にTreasure Data CDPを置き、属性、ファン歴、推しメンバーなど、パーソナライズしたコミュニケーションも積極的に行っていくという。

「エンタメDX」を体現した事例の1つが、F1日本グランプリとのコラボレーションだ。モータースポーツの最高峰ともいわれるF1グランプリは、185カ国で放送され、2023年シーズンの累計視聴者数は15.4億人にもなる、世界的なエンタメ・コンテンツでもある。2024年F1日本グランプリの大会組織委員長、上甲 哲洋氏は「世界各国を転戦するグランプリシリーズでも、日本グランプリは人気投票でトップ5にランクインするほど、海外での注目度も高いモータースポーツイベントです」と語る。

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デジタルの力でファンが集い、楽しみ、つながる場を創造

2024年、F1日本グランプリが開催された三重県の鈴鹿サーキットには、金、土、日の3日間で約23万人が訪れ、決勝レースのある日曜だけでも約10万人が来場したという。「来場者の約20%が外国人」というところに、いかに世界的に注目度が高いレースなのかがわかるだろう。ただ、顧客体験という面では課題もあるという。

「1シーズン24戦の開催ですが、日本での開催は年に1回です。開催される3日間は、20万人以上のファンが国内外から訪れ、ファン同士の交流も活発になり、盛り上がります。しかし、レースが終わって日常に戻ると、家庭、会社、学校でF1の話題で盛り上がれる状況はあまりありません。1年後の日本グランプリまで『ファン同士でのF1トークはおあずけ』となってしまうわけです。こうした状況を変えるような、F1のファンベースの広がりが長年の課題でした」(上甲氏)

その大きな要因として、F1ブーム時代からのファンである40代、50代、60代が今もファン層の中心で、下の世代を取り込めていない点がある。当時との大きな違いは、デジタル・テクノロジーが飛躍的に進化していること。デジタル・プラットフォームを活用することで、新規ファンの獲得、既存ファンとの関係強化につながる仕掛けができるのではないか――。そう考え、LINEヤフーとF1日本グランプリの取り組みがスタートした。

施策として取り組んでいるのが、F1日本グランプリのLINEエンタメアカウントの開設である。レース当日、サーキットで観戦する際の情報提供だけでなく、レースの前後の情報収集やコミュニティでの情報交換、またオンライン観戦でも楽しめるように、すべてのF1ファンの顧客体験が向上するサービス提供をしていく。

Treasure Data CDPの上に、ファンが「集い、楽しみ、つながる」コンテンツがあり、利用によって新たなデータが蓄積され、それを活用することで、より高度にパーソナライズされたマーケティングが可能になるという流れだ。

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図2 「LINEエンタメアカウント」を中心に、ファンが集い、新たな体験をして熱狂する場所を提供することで、F1ファンの顧客体験向上を目指す

他のエンタメ・コンテンツへの展開も視野に

「まだ構想段階ですが、チケットの一部が「LINE エンタメアカウント」内で買えたり、グッズを買えたり、といったものを構想しています。レース開催当日のグッズ販売は長蛇の列になるため、ファンの方に少しでも、F1日本グランプリ体験を快適に楽しんでもらえるような提案をしていきたいですね。また、エンタメアカウント内にWebサービスも入れていて、オープンチャット、掲示板などの機能を盛り込む予定です。開催当日のサーキットを離れても、日常的にファンとつながり、交流を持つことで、F1日本グランプリというコンテンツの体験価値を高めていきたいと思います」と宮本氏は展望を語る。

メンバーシップ、つまり会員限定のコンテンツも用意し、そこではブログやゲームなどを楽しめるようにすることに加え、マネタイズも考えているわけだ。

「F1に限らずモータースポーツは、1日中サーキットで過ごす滞在型のスポーツイベントなので、時間を持て余すこともありえます。空き時間にエンタメアカウント、ミニアプリ、ゲームなどで楽しんでもらえるコンテンツがあれば、お客さまにもよろこんでいただける」と上甲氏は期待を込めて語る。

既存のF1ファンはもちろん、新規ファンの獲得にはLINEヤフーの発信力でサポートしていく。すべてのファンのデータをTreasure Data CDPに収集し、コアなファンにはマニアックな内容を、新規ファンには、F1を楽しむための基本情報など、パーソナライズした発信を今後は強化していく予定だ(図3)。

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図3 LINE公式エンタメアカウントは、ファンが集う場所、楽しむ場所、つながる場所という3つの側面から、顧客体験の向上を目指す。運用の基盤が、ファンの情報をデータとして収集し統合するのがTreasure Data CDPだ

こうした取り組みは、F1だけでなく、それ以外のスポーツ、音楽ライブ、演劇など体験型エンタメ・コンテンツの価値を高める仕組みとして、横展開も十分考えられる。「エンタメDX」の今後に注目したい。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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