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データで顧客体験を変革! 湯快リゾートの成功の秘訣と未来への挑戦

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コロナ禍を経て旅行、観光についてのとらえ方が変わったことで、業界は変化への対応が求められている。マスマーケティングに頼る以前のやり方から、顧客をより深く理解し、パーソナライズしたメッセージを発信することが、優良顧客を獲得するエンゲージメントの基本戦略だ。湯快リゾートではTreasure Data CDPをデータ基盤として導入し、「マーケティングDX」プロジェクトを推進。同社の具体的な取り組みから、データドリブンな旅行産業の未来像が見えてくる。

【この事例のポイント】
・顧客データをTreasure Data CDPで統合し、Brazeでパーソナライズしたコミュニケーションを実現。体験価値(CX)の最大化を目指して施策を自動化した。
・週末空室訴求、閲覧施設リタゲ、メルマガ会員促進の3施策でエンゲージメントを強化。データに基づくセグメントでコミュニケーションの精度向上を図る。
・今後のマーケティングでは、Treasure Data CDPBrazeを活用しOne to One コミュニケーションを強化。AIの活用でパーソナライズメッセージの高度化と体験価値の向上を目指す。

<登壇者>

湯快リゾート株式会社
マーケティング本部 マーケティング部 CRM課/課長
梅村 洋介氏

湯快リゾート株式会社
マーケティング本部 マーケティング部 CRM課
岡口 めぐみ氏

Braze株式会社
カスタマーサービス本部 カスタマーサクセスマネージャー
石本 恭久氏

<目次>

「マーケティングDX」プロジェクトで突破口を開く

西日本を中心に、29の温泉リゾートホテル、温泉旅館を展開する湯快リゾート。同社のビジネスモデルは特徴的だ。廃業予定のホテルや旅館を取得し、食事提供をバイキング形式にするなどのオペレーションの効率化により、低コストかつ高品質を実現。収益性を向上させ、宿泊施設を再生させていく。

湯快リゾートはさらなる成長に向け、大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツと2024年11月1日にブランド統合し、「大江戸温泉物語グループ」として新たなスタートを切った。それに伴い、全国で65の宿と2つのテーマパークを持つ、日本最大級のカジュアル温泉ブランドが誕生したわけだ。

湯快リゾートの梅村 洋介氏は、ブランド統合の背景を次のように語る。「元々、2社は同じ投資ファンド傘下にあり、ビジネスモデルもほぼ同じです。統合することでスケールメリットが生まれるし、日本全体をカバーすることで、より多くのお客様に気軽に何度でもご利用していただけるようになるはずです」

ただし、必ずしも視界良好というわけではない。観光庁の「旅行・観光動向消費調査」によれば、コロナ前との比較で消費額は同水準まで回復しているものの、旅行者数については約11%の減となった。物価高に伴う節約志向やコロナ禍の影響による旅行習慣の意欲低下が理由にあげられている(図1)。

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図1 湯快リゾートの施策は、低コスト・高品質の旅行商品のダイレクトチャネル販売、マスマーケティングが中心だった。コロナ禍を機に旅行ニーズが多様化したことで、以前のやり方では通用しないと考え、マーケティングDXプログラムに取り組み始めた

湯快リゾートもコロナ禍で売り上げは大きく減少した。「ただ、マーケティング視点で見ると、コロナ禍を経て課題が一気に顕在化したという側面もあります」と梅村氏は語る。以前はダイレクトチャネルでの販売、マス中心のコミュニケーションがメインだったが、顧客ニーズが変化したことで、以前のやり方では顧客に届かなくなっているのだ。

求められているのは、深い顧客理解に基づくコミュニケーションである。ただし、その実現に向けては、大きく3つの課題があるという。

「1つ目は『データのサイロ化』です。メルマガ会員、予約サイト会員などのデータが別々に管理されていたため、データベースが複数存在していました。2つ目は『パーソナライズコミュニケーション』の不足です。マスマーケティングが中心だったので、仕組みそのものがありませんでした。3つ目が『収益性の悪化』です。コロナ前はダイレクトチャネルでの予約が多かったのですが、コロナ以降は予約サイト経由の割合が増えています。そこには手数料などが発生するため、結果的に収益性が悪化してしまいます」(梅村氏)

そうした課題を解決するため、同社では2022年に「マーケティングDX」のプロジェクトを立ち上げた。そして、データ基盤としてTreasure Data CDP、カスタマーエンゲージメントプラットフォームとしてBrazeを導入している。

具体的にはサイロ化していた顧客データをTreasure Data CDPに集約・分析。統合されたデータを基に、Brazeでお客様一人一人に最適化したコミュニケーションを最適なタイミングで実行。体験価値が向上することで、ブランドのファンを獲得していく、という流れを生み出しつつある。

変革の基盤としてTreasure Data CDPを導入

Treasure Data CDPに予約情報、アクセスログといったデータを統合することで、どう変わったのか。梅村氏は「顧客とのコミュニケーションはもちろんのこと、いろいろな施策を自動化できるところも大きな変化であると思います。部署の人間が自ら手を動かす工数が減り、リソースをかなり削減できました」と話す。

冒頭に触れたブランド統合を機に、マーケティング部門の組織再編も行った。広告媒体やWebのクリエイティブを担当する制作課、会員システムの運用と会員へのアプローチを担うCRM課、広告企画による新規顧客へのアプローチがミッションの宣伝広報企画課。この3チームが中心となり、Brazeの運用支援パートナー、情報システム部と連携する体制を構築している。Treasure Data CDP、Brazeなどのシステム理解を共有するのはもちろん、統合したタイミングだからこそ打てる施策もあるため、両社のマーケティング関連部署で議論を重ねて、スピード感を持って取り組んでいるという。

「組織が大きくなると、システムの理解などに差が出て、属人化してしまうケースもあります」と語るのは、Brazeの石本 恭久氏だ。他の企業でも直面しがちな問題だが、湯快リゾートではどう対応しているのか。

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「Treasure Data CDPもBrazeも、分かりやすく使いやすい設計をされていますが、確かに、何もフォローしないと理解に差が出てしまう部分もあります」と湯快リゾートの岡口 めぐみ氏は、前置きした上で、パートナーとの協力体制の重要さを強調する。

「Brazeの協力のもと、活用法の勉強会を開催したりマニュアルを作成したりと、システムの理解とそれが実際の施策にどうつながるかを、メンバー全員が同じ目線で共有できるような取り組みを行っています」

こうして体制とデータ活用により顧客との新たな関係構築を推進する湯快リゾート。同社がKGI(目標を達成するために設定する指標)に掲げているのは「LTV(顧客生涯価値)」の向上だ。LTVは中長期の射程で考える必要があるが、「我々のような小規模の企業の場合、中長期だけのプランでは経営層に響かないこともあります。LTV向上を掲げながら、予約数、売り上げの数字など、KPI(プロセスを定量的に評価する指数)をきちんと見せていく必要があります」と梅村氏は語る。

ただし、それには施策の量はもちろん、質も高めなければいけない。指針となるのが、優良顧客を育てるための顧客ジャーニー設計だ(図2)。最も重要なのは左上のロイヤルアクティブを増やすこと。しかし、それには初回利用者から新規アクティブ、準ロイヤルアクティブへとつなぐ施策の強化が必要だ。

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図2 体験価値を高め、エンゲージメントを向上させるため顧客ジャーニーに基づいた施策を行っている。LTVの視点から、最も重視しているのはロイヤルアクティブの顧客層。個々の顧客に最適化したコミュニケーションが、すべての施策の前提になる

エンゲージメントを強化する3つの施策に取り組む

ただし、その施策の強化も単純な話ではない。再生事業という湯快リゾートのビジネスの特性上、施設によって個性や魅力が異なるからだ。あるホテルに泊まった顧客はリピートしやすいが、別のホテルはリピート率が低いケースも出てくる。

「Treasure Data CDPに顧客データを統合・管理することで、どこに最初に誘導すれば効果的かが見えてくるため、それを反映させたきめ細やかなコミュニケーションを行っています」と岡口氏は取り組みの方向性を示す。

新規からロイヤルアクティブへ。エンゲージメントを強化するCRMの施策として、岡口氏は3つの事例をあげる。

1つ目は「週末空室訴求メール施策」で、当週、翌週の土曜日・祝前日の空室状況を一覧にしてメール配信している。以前、湯快リゾートは平日も週末も統一価格で、週末はほぼ満室状態。今もその印象を持つ顧客が多いという。価格を需要に応じて変動させるダイナミックプライシング導入後は、一部ホテルでは週末にも空室があるため、データから次回の予約がない顧客をセグメントして、メール配信している。

2つ目は「閲覧施設リタゲメール施策」だ。直近で閲覧したホテルに応じて、画像、おすすめのコンテンツを出し分けて、メールを送信する。「ホテルの情報をリマインド配信することで、予約促進を図る狙いがあります。セグメントは24時間以内に該当ページを閲覧したお客様で、行動履歴に応じてメールの内容を変えています」。

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2つのメール施策の効果を最大化するには、母数、つまり会員を増やさなくてはいけない。そこで実施しているのが、3つ目の「会員入会促進バナー施策」だ。非会員に向け、Web上のスライドバナーで会員特典などのベネフィットを伝え、入会を促す施策だ。「ブランド統合のタイミングで、湯快リゾートの会員サービスを終了し、大江戸温泉物語グループの会員サービスへ移行させる必要がありました。そこで離脱してしまうお客様にどうアプローチするかが大きな課題でしたが、この施策である程度解消できたと思います」(岡口氏)。

Treasure Data CDPの顧客データに基づいてセグメントを強化したことで、以前より粒度高く、施策の打ち分けが可能になった。それに加えBrazeの機能を使うことで、基本属性、予約の有無、居住エリア別での配信も可能になっている。

マーケティングビジョンにAIを取り入れ、One to One コミュニケーションを強化

同社ではマーケティングDXの「先」も見据えている。未来像の基本となるのは、顧客データ基盤に基づくOne to One コミュニケーションの強化だ。「特に注力していきたいのが、Treasure Data CDP、Brazeを使い、個々のお客様に最適化した価値を伝えていくことです」と梅村氏。具体的な方向としてあげるのが「ロイヤルティプログラム」だ。現在は会員ステータスが2種類しかないため、よりロイヤルティの高い顧客がメリットを感じられるような施策を打っていく。

パーソナライズメッセージをより高度化していくために何が必要となるのか。Brazeの石本氏が指摘するのは「旅中」での施策である。「旅前、旅後については今もいろんな施策が実行されていますが、旅中の強化にも取り組んでいく必要があるでしょう」。

宿泊予約した時点で過去の利用状況をデータで確認し、それをチェックイン後の案内などに利用するというシーンはその一例だ。「例えば、利用したことがない施設、観光チケットなどをフロントで案内します。当日が雨だと気分も沈みがちですが、雨が降っていても楽しめるコンテンツを紹介する、ということもあるでしょう。近隣の観光資源と連携しながら、お客様に有意義な情報提供をしていきたいと思います」と梅村氏は意欲を語る。

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また、現在はメール施策が中心だが、旅中だとメールでは届けにくい部分もある。ロイヤルティプログラムの拡充も含め、今後は顧客にとってメリットが大きく、顧客体験向上につながるようなアプリマーケティングも検討していくという。そこで重要になってくるのも、やはり顧客データ基盤だ。

Treasure Data CDPは、生成AIとの連携で新しい製品、機能を提案している。Brazeも生成AIを使った機能を充実させている。同社のこれからのマーケティングビジョンに、AIはどう取り込まれていくのだろうか。

「生成AIでメールの文章を作成するなどの機能は一部利用しています。本格対応はこれからですが、Treasure Data、Brazeからの提案、サポートを受けながら、One to One コミュニケーションを強化するきっかけにしたいと思います」と梅村氏。同社のマーケティングDXは、次のフェイズに移行しつつあるようだ。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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