BtoBビジネスを促進させるデータ活用戦略と成果
企業の経営課題解決に向けて、製品、様々なITソリューションを組み合わせた価値提供を行っているキヤノンマーケティングジャパン。組織再編を機に、データドリブンな営業体制の確立に向けた共同プロジェクトを、Legolissと共に取り組みを進めている。顧客データ基盤として導入したTreasure Data CDPを中心に、BIツールを組み合わせた構成によって、コンタクト数、売上実績を前年比で向上させるなど着実な成果をあげている。本講演では変革の背景や目的をはじめ、進行のプロセス、さらにはAIを活用した今後の方向性まで解説された。
【この事例のポイント】
・キヤノンマーケティングジャパンの法人向け事業は組織再編を機に、データを活用した営業スタイルの確立を目指すことになった。
・企業に関するデータ、担当者ごとの顧客アプローチデータなど、様々なデータをTreasure Data CDPに統合。データ分析環境を整えることで、精度の高い施策を打てるようになった。
・CDP構築の初年度から、管理部門の資料作成時間を年間2600時間削減。営業部門でも、コンタクト数、売上実績を前年比で向上させるなど、明確な成果が生まれている。
<登壇者>
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
IT本部 デジタル戦略部 データ分析技術課 課長代理
片岡 利之氏
株式会社Legoliss
データソリューション事業部 プロジェクトマネージャー
佐藤 慶一氏
<目次>
企業と担当者が持つデータをCDPに統合
2021年、キヤノンマーケティングジャパンの法人向け事業は、エンタープライズ領域で準大手企業・中堅企業を担当する部門の再編があった。それを機に打ち出されたのが、データを活用した営業スタイルの確立、生産性向上、そして売り上げの拡大だ。同社の片岡 利之氏はその背景をこう語る。
「お客様の情報がサービスごとに点在し、管理も属人化している状況でした。データを集めるだけでも、担当営業が各サービスの管理部門に問い合わせ、独自に集計・加工する必要があり、営業にも管理部門にも大きな負荷がかかっていました(図1)。そこで再編を機にそうした課題を打破しようとしたのです」
図1 2021年、準大手・中堅企業向け事業の組織再編が行われ、データを活用した営業スタイルの確立が求められた。ただ、顧客データはサービスごとに点在し、データを集めるにしても、施策に反映させるにしても、担当営業、管理部門に大きな負荷がかかっていた
変革に向け、同社がパートナーとして選定したのが、データを軸としたマーケティング全般を支援するLegolissだ。最初に両社が詰めたのは「データドリブンによる課題解決力を強化し、営業生産性を向上」というビジネスゴールの設定だ。
「そのゴールに向けて、AS-IS(現在の姿)、TO-BE(あるべき姿)を明確化しました。AS-ISは課題の抽出であり、営業活動の属人化によるデータのサイロ化、集計の手間、データを参照した提案資料の作成に時間がかかる、などが挙げられます。そうした課題を解決することで、TO-BEで示す属人化の解消、横断データの活用、作業時間短縮などの成果を目指すことにしたのです」とLegolissの佐藤 慶一氏は振り返る。
その際、欠かせないピースとなったのがCDP(顧客データ基盤)と、データを分析・収集・可視化するBIツールだ。データを一元管理し、見るべき情報をすぐに把握できる環境づくりに取り組むことにしたわけだ。
プロジェクトは大きく3つのステップに沿って行われた。まずステップ1となる「データ統合」については、データベースとしてTreasure Data CDPを導入。法人マスタ、売上実績、複合機利用状況など企業に関する情報と、デジタル施策反応、セミナー参加、商談打ち合わせなど、担当者ごとの顧客アプローチデータを統合した。
「ファイル数は50ほどになりますが、それぞれをつなぐ条件、集計ロジックはかなり複雑なものになっています。事業部の方々と打ち合わせを重ね、すり合わせ、どういうつくり込みをすれば使いやすくなるかを一緒に検討していきました」(佐藤氏)
Treasure Data CDPへのデータ統合はプロジェクト全体の要となるため、十分な時間をかけて取り組んだという。このデータを基に、ステップ2ではBIツールを使った顧客軸、商品軸、組織軸での「可視化・分析」を行い、具体的な施策に落とし込んでいった(図2)。
図2 BtoB営業活動データ、顧客企業データをTreasure Data CDPに統合。LTV拡大、営業部プロセスの改善、ターゲティング精度向上に向けてデータ活用できる環境を構築した。このデータ基に、BIツールを使って可視化し、より深い顧客理解、施策実行につなげる
そして現在はステップ3の「レコメンド」に移行している。「複合機の利用状況からターゲットの抽出、個々のお客様に最適化した攻略シナリオの策定などが可能になっています。営業の担当者が見たとき、この企業はこの辺に興味がある、もしくはこの角度からアプローチする余地があるなど、営業戦略につながるヒントが一目で分かる画面をつくりました」(佐藤氏)
また、各画面で目的に応じたダッシュボードが作成されており、運用サポートのなかで寄せられた要望に応じて、ブラッシュアップできるようになっている。
プロジェクト上流からコンサルティング的に支援
Treasure Data CDPで統合し、本格的なデータ活用戦略を実行することで、どのような成果が得られたのだろうか。プロジェクトが終了してまだまもないが既にプロジェクトの成果は着実に積み上げられている。
例えば、管理部門の資料作成時間に関しては年間で2600時間が削減された。また、営業担当1人あたりのパフォーマンスは、コンタクト数が前年比で121%へ増加した。それにひもづき、売上実績も105%の増となっている。
「初年度としてはかなり手応えを感じさせる結果ですし、数字以外にもCDPや、データを収集・加工・分析するBIツールを使うことで、データを活用した営業スタイルが根付きつつある、という声もいただいています」と佐藤氏は語る。
もちろんキヤノンマーケティングジャパンからの評価も高い。「プロジェクトの計画策定の段階からLegolissに入ってもらい、いろんな観点で壁打ちしながら進められたのは大きなポイントでした」と片岡氏は語る。
通常のプロセスでは要件定義の段階から入っていくが、今回はプロジェクトの立ち上げからLegolissが参加し、方向性、進め方を含めてコンサルティング的な関わり方をしている。最初から課題と目標をしっかり共有できたため、その後のプロセスがスムーズに進んだ。進める過程では追加、変更などの要望も生まれるが、優先順位付け、リリースまでに対応可能な範囲の明示など、Legolissのハンドリングを信頼していたため、安心してプロジェクトを進められたという。
さらに片岡氏は次のように続ける。「今回のプロジェクトを通して、BtoB事業で重要指標の1つとなるフィールドセールスの効率化を図れたのは、再編した組織を持続的に機能させるためにも大きな意味があると思います。システムの部分では、Treasure Data CDPが従量課金ではなくライセンス契約なのもよかったと思います。導入当初はトライアル&エラーも多くありますし、社内のデータ探索、分析のハードルを下げ、アクティブに利用できるのもメリットです。個人的な感想になりますが、チャットサポートは非常に丁寧かつ迅速で助かっています」
一緒に目指すデータドリブンな営業スタイル
データドリブンな営業スタイル変革の取り組みの今後を、キヤノンマーケティングジャパンはどのように描いているのか。「一定の成果が表れていますし、より深く根付くように取り組みを進めていきます。また直近でも、別の事業部からの問い合わせが届いており、スピード感を持って会社内の横展開を進めていきたいと思います。機能的な面では、Treasure Data CDPの新しい機能として発表されているMarketing Copilotにはとても興味があります。生成AIのビジネス活用は既に始まっていますが、当社でもうまく活用しながら、さらなるDX化を図っていくつもりです。引き続きLegolissに協力してもらいながら、挑戦していきたい」と片岡氏は意欲を語る。
生成AIの活用には、さらなるデータの整備と、それぞれの現場ニーズに即したUIのつくり込みも必要となる。BtoBビジネスのさらなる進化に向けて、二人三脚のチャレンジは続いていく。