TSIホールディングスの取り組みから学ぶ、CDP×Facebook「コンバージョンAPI」活用
Cookieの取得や活用を制限する動きが加速し、これまで配信にCookieを活用してきた広告主は対応を迫られています。対応策のひとつが、Cookieに頼らずファーストパーティデータを活用するFacebookの「コンバージョンAPI」です。
Treasure Data CDPはコンバージョンAPIとのコネクタを用意し、ポストCookie時代に備えています。この連携をいち早く導入した株式会社TSIホールディングスをゲストに迎え、導入前の課題や導入後の成果を聞きました。
※本記事は、2021年11月に開催したウェビナーをもとに編集しました
竹山 健司 氏
株式会社TSI
デジタルビジネス Div デジタルマーケティング Dept デジタルAD Section 長
2017年、TSI ECストラテジー入社。2021年3月、会社統合に伴い株式会社TSI所属。グループ会社(自社サイト含む)の各ブランドにおけるWEB広告領域の施策提案や実施の支援、及び、CDPを活用しデータ構築・分析・主に広告領域の施策提案・ターゲティング抽出・効果検証の実施に従事。
野本 翼 氏
Facebook Japan
Client Solutions Manager
インターネット広告代理店にてアカウントセールスを担当後、国内大手ECモールにてマーケティング職を経験。オンラインメディアへの広告出稿や、大手メディアとのパートナーアライアンスなどに携わる。2019年にFacebook Japanに参画し、現在は主にEコマースカテゴリーのクライアントを担当。
井澤 和秀 氏
Facebook APAC
アカウントマネージャー
国内広告代理店を経て2019年にFacebook APAC入社。EC、リテール業種を中心に担当し広告プロダクトの活用やアカウントサポートに従事。
<目次>
Cookieに頼らないデジタル広告への進化が急務
サードパーティCookieの段階的廃止をはじめ、クロスサイトトラッキング防止機能であるITP(Intelligent Tracking Prevention)によるCookie規制や、広告用の端末識別IDであるIDFA取得のオプトイン化等、ユーザー情報の取得に制限をかける動きは加速している。これらの動きは「マーケティングのあらゆるアクティビティに対して影響を及ぼす」とFacebook Japanの野本氏は話す。
コンバージョン数の計測やオーディエンスの構築がしづらくなるだけではなく、データが不足すれば機械学習の精度も落ちる。広告最適化の効率が悪化し、顧客獲得単価の増加、ひいてはROIの悪化にもつながるだろう。
広告主はCookieを利用できる期間はもうそれほど長くはない。これまでCookieに頼ってきた企業はこのタイミングに合わせて進化できなければ、効率の悪い広告出稿による多大なコストを背負うことになる。
Facebookの「コンバージョンAPI」は、Cookieに頼らずファーストパーティデータを活用した広告配信・計測のためのツールだ。そのため上記の影響を受けることはない。野本氏は個人データ活用によるパーソナライゼーションの重要性やプライバシーとの両立、コンバージョンAPIの活用事例を順に解説した。
広告を個人に最適化するパーソナライゼーションのメリット
個人の趣味嗜好や行動履歴に合わせて最適なコンテンツを表示する、いわゆるパーソナライゼーションは世の中の至る所で行われている。野本氏が提示した生活者へのアンケートデータによると、パーソナライゼーションに対して好意的な回答の割合は70~80%に上る。
パーソナライゼーションにより自分に関連性の高いメッセージやレコメンドを受け取ることで、消費者は選択肢の多さを楽しむことができるようになる。もし興味のない内容ばかりならば、選択肢の多さにうんざりすることだろう。
一方、ビジネスを気に入ってくれる可能性の高い人とつながることができるのは、企業にとってもメリットとなる。パーソナライゼーションは消費者と企業、両方にメリットのある手法だ。
パーソナライゼーションとプライバシーを両立するFacebookの取り組み
野本氏は、個人の属性を把握してパーソナライゼーションを実現するためのシグナルとして以下の4つを挙げた。Facebookはこれらのシグナルを活用してパターンを割り出し、関心に沿ったコンテンツを表示するのに役立てているという。
・ウェブサイトシグナル |
・アプリ内シグナル |
・オフラインシグナル |
・オンサイトシグナル |
シグナルのデータを取得する際は、もちろん個人データの保護を考慮しなくてはならない。アンケート調査でも97%の生活者が個人データの保護について「非常に心配している」または「少し心配している」と回答している。
Facebookではパーソナライゼーションとプライバシーは相反するものではないと考え、利用者のプライバシーを考慮したデジタル広告に取り組んでいる。
ポストCookie時代のデジタル広告ツール・コンバージョンAPI
Cookieが利用できないポストCookie時代においてはブラウザとデバイスがデータをブロックするが、FacebookのコンバージョンAPIはサーバー同士でデータのやり取りをすることで従来通りの計測や最適化を実現する。
どのデータをいつ共有するかを広告主がコントロールでき、クラッシュの可能性があるブラウザを介するよりも信頼性が高い。また、広告に活用できるデータの量が多いのも特徴だ。広告主のサーバーからデータを送信するので、Webサイト上でのアクションだけではなくサーバーに保存されているデータも利用できる。
コンバージョンAPIを導入した株式会社Spartyでは、Webピクセルのみを使用した広告配信と比べてCPMを23%、CPAを11%引き下げることができた。
コンバージョンAPIを導入したTSIホールディングスの事例
セミナーの後半では、コンバージョンAPIとTreasure Data CDPを組み合わせてデジタル広告配信を行う株式会社TSIの竹山氏に、Facebook APACの井澤氏とトレジャーデータの小林が質問を行った。
トレジャーデータとFacebookではコンバージョンAPIのコネクタを開発し、利用者側で開発が不要な環境を用意している。
Q.Treasure Data CDPとFacebook広告をどのように活用している?(小林)
A.新規会員登録や新規購入の増加にグループとして注力しているので、主にそのための広告配信で活用している。Treasure Data CDPを用いて購入率が高いユーザー群を予測してターゲティングを抽出し、それをFacebook広告につなぎ込んで配信している。
Q.なぜコンバージョンAPIの導入を決めた?(井澤氏)
A.サードパーティCookieやITP、IDFAへの制限と、特に今年に入ってからかなり規制が厳しくなってきた。最適化の効率が落ちてきて、ケアの必要を感じていたところに提案をいただいて導入を決めた。
Q.導入を決めてから活用を始めるまで、準備にどのくらい時間を要した?(井澤氏)
A.Treasure Data CDPにデータを蓄積できていたので、1か月程度で実装することができた。
Q.大変だった点や苦労した点はあるか?(井澤氏)
A.Treasure Data CDPからFacebook広告にデータをつなぎ込む部分で少しエラーが出てしまったことがあったが、トレジャーデータのカスタマーサクセスが迅速に対応してくれた。井澤氏にも質問をして、スムーズに回答いただけた。両社にご尽力いただき、そこまで苦労なく導入できた印象。
Q.コンバージョンAPIの導入により、どのような成果が出ているか?(井澤氏)
A.11サイトの平均で、表示回数・クリック数・コンバージョン・売り上げ・ROAS全てに改善が見られた。表示回数やクリック数が増えたことによりCVも増え、売り上げも増えたのだと思う。
Q.今後の活用のプラン、将来の期待は?(井澤氏)
A.現在ECの売り上げデータを連携しているが、今後はオフラインのデータも連携してより広告の最適化を図っていきたい。
まとめ:広告を取り巻く状況の変化に合わせ、広告主も進化を
今後さらに規制が厳しくなると予想される中、Facebook社のような広告プラットフォーマーとの連携や、顧客理解のために活用するデータの重要性は益々高まっていくでしょう。
広告を取り巻く状況は刻々と変化し続けます。真にユーザーにとって有益で効果の高い広告を配信するには、広告を出す企業側も進化し続けなければなりません。
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