Cookieレス・IDFAレス時代を見据えた運用型広告 次の一手とは? – LINE広告とTreasure Data CDPの連携 –
クッキー規制やIDFA問題によって従来型の運用型広告施策が難しくなる一方、日本最大級のユーザー数を誇るプラットフォーム、LINEの広告価値が高まっています。
トレジャーデータは、2021年8月にLINE Ads APIとTreasure Data CDPとの連携を発表しました。LINE広告とTreasure Data CDPが具体的にどう連携し、その掛け合わせでどういった施策が実現できるのか。今後の構想および予定しているアップデートを含めお伝えします。
(※本記事は、2021年9月開催したウェビナーをもとに編集しました)
黒岩 柊介 氏
LINE株式会社
広告・法人事業部 ディスプレイ事業企画室Demand Planning1チーム
アシスタントマネージャー
2014年新卒でGMOインターネット株式会社へ入社。自社メディアの広告セールスに従事。2017年1月 LINE株式会社入社。運用型広告 LINE広告(旧LINE Ads Platform)のセールスを担当後、2020年1月よりディスプレイ事業企画室にてLINE広告の新機能企画や改善業務に従事。現職。
山森 康平
トレジャーデータ株式会社
事業開発・パートナーシップ担当執行役員
ドリームインキュベータにて主にエンターテイメント業界及びPEファンド向けのコンサルティング業務と自社の投資先向けのハンズオン支援に従事。2013年より投資先のアイペット損保へ出向、後に転籍をして社長室長に。2018年にマザーズ上場。アイペットではデジタルマーケティングを活用した販売チャネルシフト、RPA導入プロジェクト、代理店向け業務システム開発、金融庁との折衝窓口、投資業務等を担当した。2019年にトレジャーデータへ参画。
<目次>
転換期を迎えるマーケティングのいま
冒頭で、LINEとトレジャーデータが連携に至る前提として、マーケティングとデータ活用をめぐる昨今のトレンドを3つ、山森が説明した。
第一は「プライバシー」の問題。2022年をめどに、多くのブラウザでサードパーティクッキーが排除されるようになる。ファーストパーティクッキーも一部は利用が制限される。
第二に「法規制」だ。海外ではGDPR、CCPAといった制度の運用が進み、日本でも2022年に改正個人情報保護法の施行が控える。企業が個人情報を利用する場合、事前の同意が前提になる。
第三には、「購買行動のマクロな変化」がある。リアル店舗からオンラインへ、購買行動がシフトしているのは周知のとおり。さらにコロナ禍の影響もあって高齢者のオンライン消費が進んでおり、変化を加速させている。
「3つの動きはバラバラにみえるが、企業と消費者のコミュニケーションは、ひとつの大きな変化の流れにある」と山森は指摘する。Treasure Data CDPのお客様から寄せられるニーズも、こうしたトレンドに対応している。
購買行動の変化に応じて、D2C型のビジネスが普及・浸透。卸や小売店を通さず、消費者と直接つながるモデルであるため、メールやLINEでメッセージを送るなど、CRM的なコミュニケーションが自然と増える。企業の効率と、消費者の心地よさを両立する運用が重要だ。
いうまでもなく、クッキー規制や改正個人情報保護法により、使えるデータは変わる。その変化に確実に対応しなければ、マーケティングの幅は狭まるばかりだ。
また、日本から成長市場であるAPACに進出する企業からは、日本と同じマーケティング基盤を利用したいという要望が増えている。グローバル展開のサポートニーズが顕在化してきている。
なぜいま、LINEとの連携が必要か?
LINEとトレジャーデータの協業は、クッキー規制が最大のきっかけだ。サードパーティクッキーは、リターゲティング広告やアクセス解析、アトリビューション解析、さらにCDPやDMPに格納されている顧客データの管理、リッチ化などに利用されている。しかし、ファーストパーティクッキーですら、iOSなど一部では保存期間が極端に短くなっている。
クッキーの全体の有効性は下がっているし、「IDFA取得のオプトイン化」の問題も遅れてやってくる。山森はデータ活用規制により、考えられる課題の全体像をまとめた。
今までは、サードパーティクッキーを活用し、自社のデータと外部のデータを紐付けることが容易であった。自社サイト以外での個人の行動を把握、1〜2年間というスパンの購買行動を算出し、マーケティング施策を打つことができた。しかし、今後は効果測定が非常に難しくなり、施策の精度や柔軟性が下がる可能性がある。
そのような状況下で注目度を増しているのが、LINEの活用だ。他のSNSと比較して明らかな違いは、8,900万(2021年6月時点)という突出した月間アクティブユーザー(MAU)だ。カバレッジが高く、毎日使っているユーザーも非常に多い。
数だけの問題ではない。LINEでは、LINE User IDのみならず電話番号やメールアドレス、広告識別子でターゲティングを可能としている※。特に電話番号が紐付いているのは大きな特徴と言えよう。
※ユーザーの許諾を得た上で、広告配信に使用可能 |
今後のデータ活用は、個人に対する事前の同意取得が大前提となる。CMP(同意管理プラットフォーム)やCIAM(カスタマーアイデンティティアクセス管理)など認証系のツールをCDPと連携させデータを統合、MAやデジタルコマースのツールに展開する、といった一連の流れがスタンダードになると考えられている。
このような「顧客認証/同意」→「顧客理解」→「施策/活用」といったCRMの一連のプロセスを、LINEの場合、単一のプラットフォーム上で可能としている。ソーシャルログイン時に同意取得やプロフィール取得を行ったり、ユーザー識別子を利用して同意を取得する。メッセージの配信もその同意者にだけ行う、ということが一気通貫でできる。加えて、LINEは台湾、タイ、インドネシアなどAPAC諸国でも広く使われており、そうした国や地域への進出を目指す企業にとっても、魅力的なツールと言えるだろう。
LINEとトレジャーデータの協業により、Treasure Data CDPに格納する自社のデータと、LINE公式アカウントおよびLINE広告の配信セグメントデータを連携できるようになる。特にLINE広告は配信面や配信フォーマットが非常に多彩で、活用の幅は広い。詳しくは黒岩氏の解説をご覧いただきたい。
LINEとLINE広告のポイント整理
続いて、黒岩氏がLINEとTreasure Data CDPの連携について詳しく解説した。まずは、LINEとLINE広告の現況をまとめた。
2021年9月時点での、LINEのMAUは8,900万人。サービス開始から約10年経っても増え続けており、今後も増加傾向は続くと見込まれる。男女比では女性がやや多く55.6%、全年代にわたり均等に分布している。若年層が多い媒体とのイメージもあるが、実際は40歳以上が約6割以上を占める※。LINE広告でも、健康食品やコスメ系の案件が多いと、黒岩氏は指摘する。
※調査機関︓マクロミル・インターネット調査 (2021年7⽉実施/全国15〜69歳のLINEユーザーを対象/サンプル数2,060) |
また、FacebookやTwitterなど他のSNSと併用しているユーザーが多いが、LINEだけを使っているユーザーも約40%いる。すでにSNS広告を運用している場合も、LINE広告で新たな層が獲得できる。
LINE広告は、2016年のリリース以来、累計のアカウント数は3万5,000アカウント(2021年7月時点)となっている※。
※オンライン開設・オフライン開設の両方を含む1imp以上配信がされたアカウント数 |
大きな特徴は3つ。
1つは前述のように8,900万人のユーザーにアプローチができる、国内最大級のプラットフォームであること。2つめが、ユーザー数を背景とする膨大な保有データを生かすターゲティング機能。ボリュームだけでなく、ターゲティング精度の高さにも、黒岩氏は自信をのぞかせる。3つめに、申込みから広告掲載まで、オンラインで完結できるセルフサーブの仕組みを挙げた。
LINE広告でできることは、WEBサイトへの流入やコンバージョン数の増加、アプリのインストールなど多彩。LINE公式アカウントの友だちを増やすための配信は、LINEらしい特徴だろう。
主要な掲載面は、トークリスト、LINE NEWSとなる。ほかタイムラインやウォレット、LINEマンガ、直近で追加されたLINEマイカード、さらにLINE広告ネットワークで連携する他のアプリにも配信される。
フォーマットは、静止画の場合、カードやスクエア、カルーセルなどから選択する。最近では、トークリストの上段や、LINE NEWSの小枠に表示されるスモールイメージを利用する広告主が増えているという。動画はカードやスクエアに加え、タイムラインのみに配信ができる縦型のバーティカルが選択可能だ。
配信面、フォーマットともに豊富なので、「ひとつの素材に対して、いくつものやり方を試すのがおすすめ」(黒岩氏)という。
LINE広告×Treasure Data CDPでできること
データ活用が制限される中、LINE広告とTreasure Data CDPの連携に期待されるのはターゲティングだ。詳しくは後述するが、黒岩氏は電話番号やメールアドレスなどの顧客データをLINE広告にアップロードし、類似拡張する運用を推奨する※。入札などの作業は可能なかぎり自動化し、データやクリエイティブの精査に注力すると、より効率的な広告配信ができるという。
※ユーザーの許諾を得た上で、連携可能 |
黒岩氏はまず、LINE広告のターゲティング機能を詳しく解説した。大きくは、LINEターゲティング配信、オーディエンス配信、類似配信といった3種類が活用できる。
LINEターゲティング配信は、デモグラフィックデータに基づく広告配信だ。地域や年齢、性別、興味関心、さらにテレビの視聴頻度やキャリア、配偶者/子どもの有無など、行動や属性を使えるターゲティングも用意されている。ターゲティングの手法は「みなし属性」と呼ばれるもの。LINE公式アカウントの友だち追加状況やLINE内コンテンツの閲覧状況などのLINE内の行動から推定している。
オーディエンス配信は、リターゲティングに近い。商品を購入した顧客のIDFAや電話番号、メールアドレスをアップロードすると、再度購入を促す広告を配信ができる。Treasure Data CDPの自社データとうまく連携して活用したい。その他、LINE TagをWebサイトに埋め込んで計測する、WEBトラフィックオーディエンスも利用できる。
類似配信は、元となるオーディエンスを設定すると、8900万人のデータから属性の似たユーザーを探し出し、配信する機能。類似ユーザーは上位1〜15%のパーセンテージで指定する。パーセンテージが低いほど類似度は高いが、数は少なくなるため、広告の配信量が確保できない場合がある。自動で類似配信できる機能も用意されており、特にはじめのうちは活用を検討したい。
さらに、黒岩氏は類似配信に関する2つの事例を紹介した。
①はWebサイト内のコンバージョン計測を元にした類似配信と、商品購入者の電話番号/メールアドレスを元にした類似配信を比較したグラフ。
②は通常のリターゲティングと、電話番号/メールアドレスによるリターゲティングを比較している。
どちらも電話番号やメールアドレスを活用することで、CPAが抑制されている。データ自体を洗練させることの重要性が、よくわかる実例だ。
もうひとつは、類似元の鮮度を検証した事例。購入者の電話番号データによる類似配信(A/B)は、コンバージョン計測を元にした類似配信の効率を大きく上回る。
オーディエンスソースAとBの違いは購入したタイミングで、Aのほうが直近のデータを活用している。Treasure Data CDPの自社データをLINE広告でどのように活用するか、示唆に富んだ実例だ。
なお、LINE広告の入札には、CPAなど目標に最適化する自動配信と、入札価格を自ら設定する手動入札がある。現在は85%以上が自動入札だ。
自動入札では、ひとつの広告グループにつき40コンバージョンが、学習の目安になっている。まずは、40コンバージョンの獲得に注力し、その上で適切な入札戦略を選択し、徐々にオーディエンスを広げていく、といった運用が適切とされているという。
外部の同意済みデータも上手に活用
ここまで2人が指摘する通り、LINE広告とTreasure Data CDPの連携では、電話番号やメールアドレスを軸としたターゲティング広告が軸となる。しかし、現時点で自社データを持たない企業も多い。そこで利用できるのが「他社が提供するデータ」と、山森は解説する。
例えば共通ポイントプログラムPontaを運営するロイヤリティマーケティングは、IDデータマーケティングのサービスを提供している。同社は以前から消費者に対し、データ利用の同意を丁寧に集めており、巨大なデータベースを保有。何より、ポイントプログラムだけに、店舗やWebでのリアルな購買データを持っているのは強い。
LINE広告向けのサービスも用意されており、1億以上あるPonta IDのうち約4,460万件がLINE のユーザーIDと突合済みだ。LINE広告で可能なセグメントと合わせてターゲティングすれば、単なるブロード配信や、自社の顧客データから配信するよりも、はるかに高い効果が期待できる。
ファーストパーティデータを丁寧に収集し、LINEが提供するセグメントと合わせて広告配信。そのうえで、データの母数が足りない場合は、Pontaのような同意取得済みのサードパーティデータも活用していくーーそんな施策が、データ活用規制後の効果的なマーケティングを形成していくと考えられる。
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