「専門家」が情報を発信する日本最大級の情報サイト、All Aboutを運営する株式会社オールアバウト(以下、オールアバウト)では、「Treasure Data CDP」を導入して読者の閲覧履歴だけでなく、広告のクリックや閲覧データ、広告主サイトにおける行動データなどを一カ所に集約。その分析結果を多方面に活用しています。そんな同社では、どのようにコンテンツマーケティング事業を展開しているのか――。同社のメディアビジネス本部 プラットフォーム開発部 ジェネラルマネージャー の中島大輔氏が、2018年に開催された「PLAZMA 秋葉原」で語った講演内容からその詳細を見ていきます。
「データ」に基づくコンテンツマーケティング施策へ転換が必要
2001年から総合情報サイトとして発展してきたAll About。「専門家=ガイド」が情報を発信することを特徴にコンテンツを増やし、今では約900人の専門家が参画し、月間2500万ユニークユーザーが訪問する日本最大級の情報サイトとなっている。そのコンテンツは14領域のジャンル、70種類のチャネル、1300種類のテーマが設けられ、膨大な記事が蓄積されている。
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専門家」が情報を発信する日本最大級の情報サイト、All Aboutを運営する株式会社オールアバウト(以下、オールアバウト)では、「Treasure Data CDP」を導入して読者の閲覧履歴だけでなく、広告のクリックや閲覧データ、広告主サイトにおける行動データなどを一カ所に集約。その分析結果を多方面に活用しています。そんな同社では、どのようにコンテンツマーケティング事業を展開しているのか――。同社のメディアビジネス本部 プラットフォーム開発部 ジェネラルマネージャー の中島大輔氏が、2018年に開催された「PLAZMA 秋葉原」で語った講演内容からその詳細を見ていきます。
「データ」に基づくコンテンツマーケティング施策へ転換が必要
2001年から総合情報サイトとして発展してきたAll About。「専門家=ガイド」が情報を発信することを特徴にコンテンツを増やし、今では約900人の専門家が参画し、月間2500万ユニークユーザーが訪問する日本最大級の情報サイトとなっている。そのコンテンツは14領域のジャンル、70種類のチャネル、1300種類のテーマが設けられ、膨大な記事が蓄積されている。
その記事を読みにきた読者を、インフィード広告を経由してタイアップ記事に誘導し、ユーザーに商品・サービスを認知させるコンテンツマーケティングが、マネタイズの柱の1つだ。「今でこそコンテンツマーケティングという言葉は認知されていますが、オールアバウトはこの言葉が生まれるずっと前から、18年にわたって展開しており、累計記事制作本数は7000本を超えました。」と中島氏は説明する。
ただ、課題も感じていた。「メディアには、職人気質の編集や制作の人間が多いのですが、彼らが持つ消費者理解、インスピレーションや感覚を、他の人や顧客と共有できないことが課題でした。われわれもデータ主義に舵を切り、隠れた消費者の欲求をデータで示し、共通言語にしていこうと考えました」と中島氏。データを通じた消費者の理解や適切な広告施策の実現を目的にTreasure Data CDPを導入したという。
最大の決め手は「保持可能データ量」
市場にはいくつかのDMPソリューションがある中で、Treasure Data CDPを選択した理由は複数ある。1つは、読者を深く理解できるデータ基盤であること。2つ目は、300社を超えるパートナーと連携しており、同じくTreasure Data CDPを利用している広告主やメディア、ベンダーとの間で、容易に幅広い連携が可能なことだ。だが、採用の決め手は、その保持可能データ量であったと中島氏は話す。
「一般的なDMPでは1カ月でデータが消えることが多いのですが、われわれにはそれでは全然足りませんでした。All Aboutはオールジャンルのコンテンツを展開しており、就職、結婚、出産、自動車購入や住宅購入、教育、退職、それに老後と、生まれてから死ぬ直前までのさまざまな課題を支援しています。読者のさまざまなライフイベントやライフスタイルを捕捉していくには、1カ月ではまったく足りません」(中島氏)
集めたデータを分析し、新たな切り口の発掘や送客率改善を実現
こうしてオールアバウトではTreasure Data CDPを導入し、いくつかのやり方で活用している。
1つ目は「新しいコンテンツの切り口を発掘する」ことだ。例えば、あるバーベキューグリルのタイアップ記事に反応した読者が、いったいどのような記事から広告記事へとやってきたのか。オールアバウトが誘導元の記事タイトルや本文を機械学習にかけ、キーワードを抽出しクラスタ化して「共起ネットワーク」を作成したところ、いくつかの傾向が見えてきたそうだ。
例えば「レシピ」から流入してくるのは想定内だが、中には「災害」というキーワードから流入してきた人がいることが見えてきた。これにより「災害時に備えてグリルを活用する」という切り口で記事を作れないかということがわかってくる。
こうした鉄板のキーワードだけではない。「驚いたことに、『子育て』『人間関係』『保育園』といったキーワードもあり、人間関係の課題を解決するツールとしてグリルを提案できるのではないかとわかってきます。また、『お金の悩み』も無関係に見えますが、外食の出費に比べ、グリルなら内食でありながら満足感を得られるという切り口もあることがわかってきます。こうして新しい切り口で記事広告を制作する提案を進めています」(中島氏)
広告記事を作成した後、その施策の効果計測や反応したユーザーを把握するのにもデータを活用している。一例として、カネボウ化粧品のヘアケアブランドのタイアップ企画を実施した際には、タイアップ記事を閲覧したユーザーがほかに読んだ編集記事のデータを元に、ユーザーの興味関心ごとや悩みなどのインサイトを分析した。その結果、「ヘアケアに悩むアラフォー女性の多くは、白髪があることで老け見え(実年齢よりも高齢に見られること)することに悩んでいる」という仮説を発見した。このインサイトに響くような切り口でタイアップ記事を作成したところ、同施策における他の記事の平均値よりも読了率は18%、送客率は43%、効果を向上することができた。
「これを可能にするためには、データを1箇所に集めることがとても重要です。メディアのデータ、アドサーバのデータ、記事広告のデータ、広告主サイトでの行動データ、これらを1箇所に集めるために独自の集計システムを構築し、それをTreasure Data CDPに格納しています」(中島氏)
協業先の会員情報も連携させコンバージョンの背景を深掘り
オールアバウトはさらに、協業を結んだNTTドコモの会員情報基盤のデータなど外部のデータも活用して1箇所に集め、「1つのユーザーID、1つのUser Cookieでつなげ、『誰が、どのような経緯で行動の変化を起こしたのか』を見るようにしています。これらのデータを一律につなげることで、コンバージョンしたユーザーが、元をたどるとどのメディアでどんな記事を読んだかがわかるようになっていきます」と中島氏は述べた。
さらに、Treasure Data CDPのセグメントAPIを活用し、インプレッションごとに「この人はどんな人か」というセグメント情報をリアルタイムに受け取った上で、広告を出し分ける取り組みも進めている。枠を固定するのではなくユーザーごとに出し分けることで、CTRが月間平均で41%改善する効果が得られた。広告主にとってはより関連性の高いユーザーに訴求できると同時に、メディアとしてもインプレッションを効率化し、ひいてはコストの効率化につながるという。
データ活用の仕組みを幅広いパートナーにプラットフォームとして提供
オールアバウトはこうした実績を踏まえ、さらに新たな取り組みを開始した。
「いろいろなデータを収集し、活用する仕組みをさまざまなメディアや広告主に活用していただくため、『All About PrimeAd (オールアバウトプライムアド)』という名称でプラットフォーム化を進めています」と中島氏は話す。現在は約60の優良メディアとアライアンスを組み、広告主向けに、コミュニケーションプランの設計や記事広告制作、オウンドメディアの支援を協力しながら進めていく。
ここでもカギを握るのは、1つのプラットフォームにさまざまなデータを集約することだ。「メディア上の閲覧履歴データや広告主のデータなどを1箇所に集め、それを用いて1つのプラットフォームで広告配信を行います。分析レポートも同じ方法で作成し、同じフォーマットで提供していきます」(中島氏)
アライアンスメディア戦略の中で大きな一歩となるのが、NTTドコモとの資本業務提携だ。NTTドコモが持つ6500万人の会員基盤データと、オールアバウトの2500万UUの閲覧行動データの相互交換(データエクスチェンジ)を行い、さらにサードパーティや提携メディア、広告主からのデータも一カ所に集めていき、「それらをかけ算することで、ユーザーの解像度をより上げていきます」と中島氏は話す。
さらに、メディア向けに2018年11月から提供する「All About PrimeAd CDPオプション」では、「エンジニアのリソースが少なく、CDPを導入したくてもできない」と考えるメディア向けに、オールアバウトとトレジャーデータが共同で開発したCDPプラットフォームを提供していく。「『CDPを導入しても収益化できるのか』という懸念も根強いが、広告施策を進めながら収益を上げていくプラットフォームとして提供することで、そのハードルも下げられます」と中島氏。「その先、広告主からの要望に応じてデータを交換することもできるため、チャンスが広がっていくでしょう」と話す。