総合情報サイト「All About」を展開する株式会社オールアバウト(以下、オールアバウト)では、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)を用いてWebサイト上のユーザーのインサイトを読み解き、コミュニケーションに活用しています。オールアバウトのメディアビジネス事業部 マーケティングソリューション部 橋本智明氏と、トレジャーデータのマーケティング担当 マネージャー 小林広紀が「PLAZMA 2019 in xTREND EXPO」で語った講演内容から、オールアバウトがどのようにインサイトを読み解いているのかを見ていきます。
メディアとデータを活用したコンテンツマーケティングプラットフォーム
All Aboutでは、日常生活をより豊かに快適にするノウハウから、業界の最新動向、読み物コラムまで多彩なコンテンツを発信している。2001年にスタートした同サイトは、ガイド数は約900名、記事数は18万本を超える規模に成長。現在では月間利用者は2300万人を誇り、「専門家」がガイドする日本最大級の総合情報サイトにまで成長している。
「オールアバウトはメディア事業を19年ほど展開してきました。その中で新たに『All About PrimeAd(以下、PrimeAd)』という名称のサービスを開始しました。PrimeAdは『メディアを活用する』『データを活用する』ことに特化したコンテンツマーケティングプラットフォームです」と橋本氏は説明する。
前者の「メディアを活用する」というのは、All Aboutだけでなく、大手パブリッシャーを中心にメディア間でアライアンスを組み、多種多様なコンテンツを作成したり、適切なセグメントに配信したりすることだ。提携数は130メディアに及ぶ。
提携しているメディアに共通するのは、それぞれの持つメディアの価値をより多く世の中に発信していきたいという思いだ。その仕組みついて橋本氏は、「メディアの中で広告を出し、広告主のメッセージをユーザーに伝える従来の記事広告モデルがベースです。記事広告を作るところをAll Aboutと複数のメディアがそれぞれの強みを活かして共創します。また、記事への集客も、提携メディアに対してPrimeAd独自の配信エンジンを使っておこないます」と説明する。
後者の「データを活用する」という点については、PrimeAdの基盤部分に、Treasure Data CDPを採用し、行動履歴データやアクションデータなどを蓄積し、機械学習を行って配信エンジンで活用したり、分析レポートをもとにコンテンツのプランニングに活用したりすることを指している。
ユーザーを最も深く理解できる点を大きく評価
橋本氏は、Treasure Data CDPを採用した理由について「ユーザーを最も深く理解できること」にあると説明する。具体的にはまず、内部/外部(システムや企業間)との連携の広さと容易さがある。
この点についてトレジャーデータの小林氏は、「Treasure Data CDPは、さまざまなサービスやプロダクトと連携可能です。CDPを入れた後に、いろいろな口とつながる汎用性があるため、今後のデータ活用に役立てることができます。データを貯めるだけでなく、その後、どう出していくか。ここはほかのCDPとの大きな違いとなっています」と説明する。
またTreasure Data CDPを選定した背景には、プラットフォーム事業を推進する中でビジネスをスケールさせたいという同社の目標とも関連している。
「目的に応じて選択するCDPは変わると思います。われわれはユーザーをいかに理解できるかを重要視しましたが、もう1つ大きなポイントになったのは、Treasure Data CDPは、データのログを期間無制限で長く持てることでした」(橋本氏)
さらにデータ連携の操作が簡単であるのも特長だ。小林氏によると、Treasure Data CDPでは「マーケターが自身でデータの分析まで容易にできることを定義の1つにしている」という。実際、オールアバウトでも、3ステップで外部とのデータ連携が可能なため、非エンジニアでも容易にやりとりができているという。
ライフイベント・ライフスタイルを網羅したデータを蓄積
Treasure Data CDPを採用した「All About CDP」には、現在、広告主のデータと提携メディアのデータに加えて、All Aboutの月間2300万UUの閲覧行動データが蓄積されている。さらにこれらのデータに資本業務提携しているNTTドコモが保有する7300万人分の会員属性データ(使用許諾が取れている範囲に限る)、サードパーティデータが連携されている。また橋本氏は、All Aboutのデータの特徴として、就職から、結婚、出産、自動車や住宅の購入、教育、退職、老後まで、人生の節目となる大きなライフイベント・ライフスタイルの情報を保持していることを挙げている。
これらのデータを分析し、ユーザーの背景を知ることで、適切なタイミングで最適なコンテンツを提供できると、橋本氏は考えている。
閲覧記事からユーザーのインサイトを可視化した2社の事例
橋本氏はメディアデータの活用事例を紹介した。生命保険会社におけるサイト来訪ユーザーの可視化事例だ。サイトに来訪したユーザーが資料請求などのアクションをした場合に、そのユーザーが閲覧した記事を分析することでインサイトを可視化できるようにした。
例えば、40代女性が、資料請求を完了するまでに、老後の生活費や保険会社の健全性などに関する記事を確認していたとする。あるいは、20代女性が、資料請求を完了するまでに、出産や名づけ、出産費用、医療費控除などに関する記事を閲覧していたとする。
「見えてくるインサイトとしては、ライフステージの変化と大きな出費が保険を検討するトリガーになること、アラフォー世代は子供の教育費と老後の生活費の両方に不安を感じていることなどです。この生命保険会社では、これらを生かす施策として、オウンドメディアへの記事拡充、HP上の接客シナリオの作成、LP作成・広告配信セグメントの作成などを実施しました」(橋本氏)
最後に橋本氏は「最適なコミュニケーションをするためには顧客を正しく理解することが何よりも重要です。そのためには質の高いデータが必要です。質の高いデータは企業の中に埋もれています。個人の暮らしを豊かにするために、質にこだわったデータを活用していきます」と述べ、講演を締めくくった。