株式会社朝日新聞社(以下、朝日新聞社)では、顧客志向のビジネス展開に向け、オーディエンスデータの活用に取り組んでいます。社内データを統合して分析することはもちろん、新たなメディア構想をカスタマーデータプラットフォーム(CDP)で支えるほか、同じツールを導入している企業同士のデータエクスチェンジも視野に入れています。2018年7月に開かれた「TREASURE DATA “PLAZMA” Roppongi」に登壇した同社マーケティング本部 顧客データベース部部長(当時)の桧山直樹氏は、メディアと顧客をつなぐデータ活用について解説しました。
顧客データ活用のために必要なこととは?
1879年に創刊した朝日新聞社は、日刊新聞を中心にさまざまなメディアを運営する企業だ。現在の社員数は約4400人。その半数が記者や編集者としてメディアに携わっているという。報道だけでなく、全国高校野球選手権大会や、吹奏楽や合唱コンクール、展覧会といったリアルイベントなども主催しており、SNS上でも幅広いタッチポイントを有している。
朝日新聞社では、2016年に企業理念として「ともに考え、ともにつくる」をかかげた。インターネットの隆盛にともない、新聞業界は厳しい状況に面しており、抜本的な改革が急務だ。その柱の1つとなるのが、
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株式会社朝日新聞社(以下、朝日新聞社)では、顧客志向のビジネス展開に向け、オーディエンスデータの活用に取り組んでいます。社内データを統合して分析することはもちろん、新たなメディア構想をカスタマーデータプラットフォーム(CDP)で支えるほか、同じツールを導入している企業同士のデータエクスチェンジも視野に入れています。2018年7月に開かれた「TREASURE DATA “PLAZMA” Roppongi」に登壇した同社マーケティング本部 顧客データベース部部長(当時)の桧山直樹氏は、メディアと顧客をつなぐデータ活用について解説しました。
顧客データ活用のために必要なこととは?
1879年に創刊した朝日新聞社は、日刊新聞を中心にさまざまなメディアを運営する企業だ。現在の社員数は約4400人。その半数が記者や編集者としてメディアに携わっているという。報道だけでなく、全国高校野球選手権大会や、吹奏楽や合唱コンクール、展覧会といったリアルイベントなども主催しており、SNS上でも幅広いタッチポイントを有している。
朝日新聞社では、2016年に企業理念として「ともに考え、ともにつくる」をかかげた。インターネットの隆盛にともない、新聞業界は厳しい状況に面しており、抜本的な改革が急務だ。その柱の1つとなるのが、顧客志向のビジネス展開だという。
もともとメディアはコンテンツや”場”の提供を通して、読者、生活者、世の中の人をつなぐという役割がありました。一方でこれまでマスメディアは『伝える』ことに注力しがちでした。いま一度、『つなぐ』立場に立ち返りたいと考えています
と桧山氏は語る。
ここで重要になるのがオーディエンスデータの活用だ。桧山氏が所属するマーケティング本部の顧客データベース部は、まさにその部分を担っている。
顧客データベース部は、まず、朝日新聞社とグループ企業の中に散在していた顧客データを統合し、一元管理するところから取り組んだ。統合したデータは、分析してセグメントに分け、メールや広告を出し分けたり、Webでレコメンデーションしたりする際に活用する。このデータには、全国の販売店の読者データや、イベントの参加者データ、Webサイトの訪問者データなどが該当する。
データを収集する中で、課題も明確になってきたと桧山氏は語る。データ量は増えてきたものの、項目が十分でないことや、データ品質を高めなければ使いにくいこと、また、活用頻度が増えたことで高速化や多様化への要望も高まってきていることなどだ。
そこで同社では2017年、CDPおよびマーケティングオートメーション(MA)の導入に向けて検討を開始した。
導入にあたっては、マーケティング本部と、デジタルメディアを扱うデジタル本部、同社のITを担当する情報技術本部、そしてデジタル広告を担当する総合プロデュース室の4部門が連携して検討。部門ごとに目的が異なる組織で共通のシステムをどう活用するのか、コストはどのように負担するのかなども含め徹底的に議論を重ねた。そして、CDPにはTreasure Data CDPを、MAにはIBMの製品を導入することになった。
他ツールとシームレスに連携しビジネス部門でも扱えるCDPを選定
トレジャーデータを選定した理由のひとつとして、桧山氏は同社の自由な雰囲気に感銘を受けたことを挙げる。また、「GAFAと呼ばれるプラットフォーマーと伍していくよう支援すると言ってもらえたことが琴線に触れました」と述べ、トレジャーデータの企業カルチャーに惹かれたことを明かす。
もちろん、企業カルチャーだけで採用に至ることはない。ツールそのものについて桧山氏は、
IT部門でなくても管理できるツールであることが決め手となりました。IT部門に依存するのではなく、われわれ事業部門でも使える点は大きな魅力です
と話す。また、Treasure Data CDPを使ってデータを組み合わせることで顧客への理解が深まること、さまざまなツールとシームレスに連携してデータの収集や分析が可能なこと、サポートが手厚いことなどが選定の理由だったと桧山氏は説明する。
導入は2018年4月で、まだ大きな効果が出るには時期尚早だとしながらも、「目に見える変化があった」と桧山氏は語る。それは、社内の既存データベースで30分以上かかっていた数百万件のデータの内容確認とダウンロードが、トレジャーデータのCDPでは3分以内で完了したことだ。
所要時間が90%以上削減できました。部員の生産性が上がるうれしい効果です
と桧山氏は言う。
「バーティカルメディア構想」をCDPで支援
現在朝日新聞社では、「バーティカルメディア」を推進するという新たなメディア構想に取り組んでいる。これまで同社では、マスメディアとして広く情報を伝えることを得意としてきたが、バーティカルメディアではテーマごとに特化して詳しく深掘りすることをコンセプトとしている。
その一環として同社では、2018年6月に「telling,」「sippo」「DANRO」「GLOBE+」「好書好日」という5つのサイトを開設。これら全体のプラットフォームとなるブランドを「ポトフ」とし、ポトフ内にさまざまなバーティカルメディアを追加していく考えだ。マーケティング本部では、CDPを活用してポトフの裏側をつなぎ、データの流れを支えているという。
メディアがバーティカルなため、お客様の興味や関心がはっきり見えてきます。そのデータを基に、他のサイトやコンテンツ、イベントをレコメンドしています。今後はコンテンツとコミュニティをつなぐこともCDPで実践したいと考えています
と桧山氏は述べている。
Treasure Data CDP導入企業同士のアライアンスも視野に
さらに桧山氏は、Treasure Data CDPを導入している企業同士の合意のもとでのデータエクスチェンジにより顧客を深く理解し、新たな価値提案を行うことも視野に入れている。顧客データはそれぞれの企業がお客様からお預かりした重要な資産であるため慎重に進める必要はあるが、「データエクスチェンジや他社とのつながりは重要です。まずは、データジャケットと呼ばれるデータ項目や概要について話し合うところから始めたいですね」と桧山氏。同氏によると、現在すでに複数の企業と議論を開始しているという。
社会課題の解決に向けたサイトを共同運営し、そこで得た顧客データを共同利用することもできると考えています
と桧山氏は語る。
こうしたデータエクスチェンジにより、朝日新聞社と同社の読者はもちろん、提携先とそのユーザーにも価値が提供できると桧山氏。「『三方良し』どころか、『四方良し』が実現できるような活動につなげていきたいですね」と桧山氏は述べた。