ビジネスパーソンであれば、スマートフォン向けニュースアプリ「SmartNews」をご存じない方はいないでしょう。日米で5000万ダウンロードを突破し、中核となるニュースコンテンツだけでなく、ライフスタイルやエンターテインメントをはじめとする様々な情報、クーポン、動画コンテンツなどを配信。多くのユーザーから支持されています。
そのSmartNewsの広告事業「SmartNews Ads」が、新たな展開を迎えるといいます。スマートニュース株式会社 アドビジネス セールスマーケティング&カスタマーサクセス マネージャの加藤雅人氏が、「スマートニュースの無意識データで拡げる顧客理解」と題した講演の中で紹介しました。
「SmartNews」は、なぜここまで成長できたのか
ここから先は、PLAZMA会員のみ、お読みいただけます。
ビジネスパーソンであれば、スマートフォン向けニュースアプリ「SmartNews」をご存じない方はいないでしょう。日米で5000万ダウンロードを突破し、中核となるニュースコンテンツだけでなく、ライフスタイルやエンターテインメントをはじめとする様々な情報、クーポン、動画コンテンツなどを配信。多くのユーザーから支持されています。
そのSmartNewsの広告事業「SmartNews Ads」が、新たな展開を迎えるといいます。スマートニュース株式会社 アドビジネス セールスマーケティング&カスタマーサクセス マネージャの加藤雅人氏が、「スマートニュースの無意識データで拡げる顧客理解」と題した講演の中で紹介しました。
「SmartNews」は、なぜここまで成長できたのか
SmartNewsは、マンスリーアクティブユーザーが日米合算1000万人(※1) を超え、1日あたりの平均利用時間が約16.7分(※2) と長時間接触するメディアだ。加藤氏は「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というスマートニュースの企業ミッションを挙げた上で、「ユーザーが拡大している要因は情報の多様性だ」と説明する。
実際、SmartNewsのアプリを開くと様々なニュースカテゴリーに加えて「自動車」「ファッション」「グルメ」など500以上のチャンネルが展開されており、そのほかにもクーポンやECサイトのタイムセールなどを展開。47都道府県ごとのチャンネルも展開しており、興味のある地域の情報にも簡単にアクセスできるのが特長だ。ニュース以外にも良質な情報を届けることで、ユーザーの興味関心に応えるのが狙いだという。
また、SmartNewsは北米にも事業を展開しており、米国内ではニュースサイトのリファラー(遷移元)サイトでGoogle Newsを抑えて成長率で1位に。その成長率は145%(2018年)と非常に高い。北米で事業を展開する背景について、加藤氏は「フィルターバブル」と呼ばれる北米社会が抱える社会問題を挙げている。
「本来ならば一人のユーザーに、(ニュースを通じて)リベラル・コンサバティブ双方の意見が届けられるべきだ。しかし現在は、行き過ぎたパーソナライズによって、届く情報に偏りが生じてしまっており情報の分断が生まれている。」と加藤氏。
米国版では、興味関心にかかわらず、政治については、いかにして多様な意見をユーザーに届けるかという観点から、ニュースのアルゴリズムの開発を進めているのだという。また、こうした良質な情報を届けるための取り組みは日本国内でも推進しており、誤った情報が拡がるのを防ぐ仕組みを作っていこうと、ファクトチェックの普及活動を行う非営利団体を支援する取り組みなどを行っているのだそうだ。
圧倒的なシェアが生み出した広告メリット
加藤氏によると、こうして成長したSmartNewsは、ユーザーが1日約17分(※2) という長時間接触するメディアとして、様々な現象を生み出しているという。
その一例が、朝の時間帯の強さだ。ニールセンによる主要アプリの利用時間帯別シェアを比べてみると、SmartNewsはTwitter、Yahoo!、YouTube、Facebookといった主要プラットフォーマーを抑えて朝7時台の時間帯シェアで43.1%と他を圧倒する強さを見せている(※3)。そもそも通勤時間帯は多くの人がニュースをチェックしており、SmartNewsではこの時間帯にユーザーに読んで欲しい情報をプッシュ通知。ユーザーの情報ニーズに応えるだけでなく、プッシュ通知によってユーザーがアプリを開く理由を明確化することで、時間帯に合わせて定期的にコンテンツを見てもらうための工夫をしているのだ。
また、SmartNewsはバーティカルメディア(専門メディア)としても支持されており、例えば「自動車」チャンネルユーザー数は最多のユーザー数を抱えているという(※2)。こうしたスケールメリットは、SmartNewsの広告事業「SmartNews Ads」でも大きな効果を生み出していると、加藤氏は説明。例えば、ユーザーが商品を購入する前にどのようなコンテンツに接触したのか、購入後にどのような情報に興味を持っているのかを、コンテンツ接触履歴の分析から理解し、マーケティング活かすことができるのだという。
加えて、スケールメリットは広告そのもののパフォーマンスにも貢献しているという。例えば、アサヒビールがSmartNewsのトップページに展開した動画広告では、リニューアルした商品の広告を夜間帯に限定してトップページに表示。160万人にリーチし、55%という高い完全視聴率を実現したのだという。また、キリンホールディングスが展開した運用型動画広告では、リーチ単価0.7円、視聴完了単価2.6円という高いコストパフォーマンスを記録したとしている。「世界中の拠点でエンジニアが広告単価の改善に向けた開発を続けた結果だ」(加藤氏)。
「サイレントマジョリティの可視化」がもたらす可能性
加藤氏によると、SmartNewsは2018年から19年にかけてユーザー数が約2倍に増加するなど飛躍的な成長を遂げたという。その要因について、マーケティング視点から説明した。
成長の背景にあるのは、「顧客基点マーケティング」だという。具体的には、ユーザーをSmartNewsを知らない「未認知顧客」から毎日SmartNewsを利用している「ロイヤル顧客」まで5段階に分類し、さらにこの5つの顧客層にアンケートリサーチに基づくブランド選好軸を加えてさらに細かい顧客分析を行い、9つの顧客セグメントに分ける。そして、それぞれのセグメントに注目して顧客の声から成長の端緒を見つけ出すのだ。
「重要なのは、こうした各セグメントのユーザーの声の中にマーケティングのヒントや次のプロダクト施策のヒントが隠されている点。また、年次の推移を比較することでどのような打ち手を打つとユーザー数を伸ばせるのか、どのようなユーザー層の声をフォーカスをすれば改善のヒントが見つけられるのかが分かってくる」(加藤氏)。
そして、こうした顧客を理解してビジネスのヒントを発見するという「顧客基点マーケティング」の考え方は、SmartNews Adsにとっても重要だと加藤氏は語る。そのひとつが「無意識データ(サイレントマジョリティ)の可視化」だ。
SmartNewsは、ユーザーがふらっと訪れて情報に気軽に触れるメディアであり、その様子は雑誌を立ち読みしている感覚に近い。このユーザーの行動から見えるユーザーの無意識なコンテンツ接触を解析することで、ユーザーの潜在的なニーズを理解することができるのだ。
「しかし、SmartNewsの中だけではまだ狭い世界。SmartNewsユーザーのことはよくわかるが、例えば広告主の顧客のことはSmartNewsのデータだけでは理解できず、まだ顧客の課題解決ができているとはいえない」と加藤氏は語る。そこで、SmartNews Adsでは、この課題を解決するために、ユーザーアンケートの実施、広告効果計測、DMPや広告主の顧客データの活用などを推進し、SmartNewsの世界を外に拡張していくという。
「SmartNewsの無意識データは、広告主企業のカスタマージャーニーの中でも興味の着火地点において活用できるのではないか」(加藤氏)。
そこで紹介されたのは、自動車メーカーSUBARUとの協業事例だ。具体的には、SUBARUがデータ分析によって構築したカスタマージャーニーにSmartNewsの無意識データを掛け合わせることによって、顧客の購買前、購買後の情報接触を深く理解するという。
事例説明のために登壇した、株式会社SUBARU データエンジニアの小川秀樹氏は、SmartNewsの無意識データをマーケティングに活用する意義について「データを使うことの価値は、今までの改善をすること、新しいものを生むこと、データに対する姿勢を変えることの3点あると考えている。改善だけだとROIがでないので、新しいものを生み、姿勢をかえる2と3をいかにやっていくかがポイント。現在2つめのトライとして、車を購入したあとの顧客理解を特にSmartNewsのデータを活用することで、深めていきたい」と協業に期待を寄せた。またデータを積極的に使うという意識を会社全体で高めていくことも期待している。
一方、同じく事例紹介に登壇したスマートニュース株式会社 アドセールス オートモーティブチームリードの佐野 雄太氏は「SUBARUのカスタマージャーニーの背後でユーザーが無意識にどのようなコンテンツ接触をSmartNewsでしていたのか、それを可視化をすることで顧客の行動をより深く理解することができる。SUBARUのカスタマージャーニーの中で、ユーザーのどのような心理に着火しているのかをSmartNewsの無意識データにより可視化することができ、カスタマージャーニーの立体的な理解に繋がるのではないか」と協業の可能性を語った。
※1 2019年7月イベント開催当時。現在は、マンスリーアクティブユーザー数が日米合算2000万人を突破。
※2 2019年7月イベント開催当時
※3 2019年3月時点の Nielsen mobile net view