過去4マスの頂点として、マスコミュニケーションを代表する影響力を有していたテレビ。インターネットの浸透と急速に進むデジタルの潮流の中で、その媒体価値は相対的に低下を続けています。そのような状況で、各テレビ局の大きな方向転換を図る動きが活発化しています。 そんな中、オリジナリティの高いコンテンツを制作し、コアなファンを獲得しているのが「テレビ東京」です。同局は、番組をテレビだけでなく、ネットでも積極的に配信。さらに、そこから得られる視聴者のデータ(オーディエンスデータ)をもとに、広告媒体としての付加価値向上にも成功しています。
Webにおけるテレビ局の存在感を高めるその手法について、株式会社テレビ東京コミュニケーションズ 動画ビジネス部部長 堀 龍介 氏が「TREASURE DATA “PLAZMA” Marunouchi」にて行った講演の様子を、今回はお届けします。
視聴回数がおよそ4倍に! テレビ東京の動画配信戦略
テレビ東京が進めるネットへの動画配信は、「ネットもテレ東」というキャッチフレーズのもと進められています。実際に、この施策はどのように進められているのでしょうか。
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過去4マスの頂点として、マスコミュニケーションを代表する影響力を有していたテレビ。インターネットの浸透と急速に進むデジタルの潮流の中で、その媒体価値は相対的に低下を続けています。そのような状況で、各テレビ局の大きな方向転換を図る動きが活発化しています。 そんな中、オリジナリティの高いコンテンツを制作し、コアなファンを獲得しているのが「テレビ東京」です。同局は、番組をテレビだけでなく、ネットでも積極的に配信。さらに、そこから得られる視聴者のデータ(オーディエンスデータ)をもとに、広告媒体としての付加価値向上にも成功しています。
Webにおけるテレビ局の存在感を高めるその手法について、株式会社テレビ東京コミュニケーションズ 動画ビジネス部部長 堀 龍介 氏が「TREASURE DATA “PLAZMA” Marunouchi」にて行った講演の様子を、今回はお届けします。
視聴回数がおよそ4倍に! テレビ東京の動画配信戦略
テレビ東京が進めるネットへの動画配信は、「ネットもテレ東」というキャッチフレーズのもと進められています。実際に、この施策はどのように進められているのでしょうか。
テレビ東京では、さまざまな動画プラットフォームに広告付きの動画を配信しております。テレビ番組を放送した後に、ネットでご覧いただけるようになっております。無料です。そのプラットフォームは、当社が提供しているアプリだけでなく、テレビ局各社で共同運営を行っている「TVer(ティーバー)」。それから、Yahooグループさんで「GYAO」および「Yahoo映像トピックス」、ドワンゴさんの「ニコニコ動画」 YouTube で当社のチャンネルを持って配信しています。
動画コンテンツを幅広く展開しようと注力するテレビ東京。その背景には、テレビ局に迫る危機があることがうかがえます。特に、若年層に対するアプローチは切実な問題があると堀氏は説明しています。「動画配信のプラットフォームでUGC(User Generated Content、ユーザーが生成したコンテンツ)がどんどん増えて、若い方々がそちらへシフトしています。当社も待っているだけでなく、動画がリーチするよう積極的に展開する必要があるのです」
実際、ネットに注力することで目に見えるメリットも表れています。そのひとつが、番組が観られる頻度が大幅に増えたということです。「テレビ東京が提供しているアプリで100万回再生されたとしたら、外部の動画プラットフォームでは累計400万回くらい、約4倍のトラフィックの獲得につながります」と堀氏はその成果を強調します。
また、動画に含まれるCM再生率も目を見張るものがあるそうです。「CMの完全再生率も非常に高くて、CM配信する9割ぐらいはほぼ見られている」だけでなく、ビューアビリティの測定を行う MOAT社のツールで計測しても、良好なスコアを得ることができたと堀氏は説明します。
データから見える「視聴者像」、一方でデータマネジメントに限界も
「配信先のプラットフォームによって、全く異なる視聴者層にリーチできるのも大きなメリットです」と語る堀氏。分析を重ねると、プラットフォームごとに、人気の動画や視聴者層が大きく異なることが明らかになるそうです。「たとえば、当社が提供しているアプリだと、看板番組や認知度が高いレギュラー番組などが観られます。また、性別も男性層が多かったりします。一方、「TVer」はドラマの視聴頻度が多く、視聴者も女性が多かったりします。また、「GYAO」だと、35歳くらいの方々が多いのですが、Yahoo!の影響もあって視聴者数が急増することもあります」
動画配信先を分散させるメリットについて説明する堀氏。一方で、当時抱えていた課題についても言及します。それが、「データマネジメント」の問題です。
テレビ東京では、データマネジメントを積極的に進めていました。たとえば、プラットフォームごとで異なるソースや形式、頻度で提供されるレポートデータをETLツールで自動抽出、加工し、DWHへ送信するシステムを構築。動画再生数の分析などを行える環境を整えました。また、自社サイトやアプリでは、ユーザーがフルスクリーンで動画を視聴しているかなど、細かい視聴者行動も計測可能になりました。
しかし、肝心な点が実現できませんでした。それがオーディエンスデータの統合管理。
「デジタルマーケティングを考えたときに、オーディエンスデータは必要不可欠。広告価値を証明するには、オーディエンスデータをキーに視聴者属性を可視化するしかありません。これを実行できる手段を探しました」
Treasure Data CDPでオーディエンスデータの統合が可能に
そこで、堀氏が出会ったのがTreasure Data CDP 。これにより、堀氏が抱えていたデータマネジメントの問題は一気に改善されました。
Treasure Data CDPでは、2種類のデータを統合管理しています。そのひとつが、広告配信・再生のログです。
「広告サーバーからクリエイティブを配信すると、ピギーバックのような形で番組のキーや広告IDなどのログがTreasure Data CDPに蓄積されます。また、広告は、動画のプリ/ミッド/ポストで配信されますが、このログを集計することで、視聴者行動のログも収集可能です」 もうひとつは広告価値の算定に不可欠なオーディエンスデータ。視聴者が動画を観たプラットフォーム、視聴デバイス、番組などのオーディエンスデータをTreasure Data CDPで統合管理し、CRMや2nd Partyあるいは3nd Party データと連携することに成功しました。これにより「視聴者像をより明確にすることで、広告価値を証明できた」とコメント、その成果について堀氏はここである事例を紹介しました。 テレビ東京では、「経済番組プレミアム」というインストリーム広告商品を提供しています。カンブリア宮殿など人気経済番組3つをターゲティングして、広告を配信できるのですが、販売促進にあたり視聴者のよりリアルなペルソナデータが求められていました。そこで、Treasure Data CDPとあるビジネス系アプリの登録情報とマッチングして、21,000以上のIDを分析することができましたその結果は、商品の成約や引き合いを増加させる重要なデータになっていると堀氏は説明します。
番組視聴者の58.3%が役職者で、21.8%が企業の代表や役員クラスということが判明しました。このデータをお客様にご覧いただくと大変好評で、営業も商談を円滑に進めることができています。
媒体価値向上に不可欠な「データ連携」と「AIの活用」
Treasure Data CDPにより、データマネジメントを改善することに成功したテレビ東京。しかし、「今後もやるべきことはある」と堀氏はその先を見据えます。そのひとつは、データ連携をより促進することです。
テレビ局には、通販などの事業系データをはじめ、まだまだ眠っているデータがたくさんあります。これらのデータを活用すると同時に、パブリックDMPを提供されているデータホルダーのみなさまとも協業を進めたいです
また、広告枠の在庫管理も改善の余地があると指摘します。そこにはAIの活用が有効ではないかとコメントしつつ、
より正確に管理できるよう機械学習によって予測モデルを構築したいですね。動画の再生はボラティリティが大きく、バズったときなどに空き枠ができてしまう懸念があり、マニュアルではどうしても限界があります。
メディアの王様として君臨し続けるテレビ局。しかし、その座に甘んじることなく、最新のデータマネジメントツールをはじめ、テクノロジーを駆使することで変革を遂げようとしています。データを活用したテレビ東京の新たなビジネス展開、今後の動向にも目が離せません。