LiveRampが提示する、ファーストパーティデータを最大有効活用したマーケティング戦略
プライバシーに配慮しながらユーザーとコミュニケーションを取るにはどうしたらよいのでしょうか?
サードパーティCookieやモバイル広告IDが使えなくなりつつある中、広告主やパブリッシャーは対応を迫られています。LiveRamp Japan株式会社では、独自のデータプラットフォームと独自IDによるソリューションを提供しています。
今後ますます重要性を増すファーストパーティデータを活用したマーケティング戦略とソリューションを、同社Head of Partnershipsの今井則幸氏が紹介します。
※本記事はトレジャーデータ株式会社が2022年7月〜8月に開催した「PLAZMA 2022 Summer」内のプログラムをもとに編集しました。
<目次>
データプライバシー規制の現状
今井:2022年4月、日本では改正個人情報保護法が施行されました。昨今では2018年にヨーロッパでGDPR(General Data Protection Regulation)、2020年1月にアメリカ・カリフォルニア州でCCPA(California Consumer Privacy Act)が施行され、韓国やタイ、インド、ブラジルなど、世界各国でデータプライバシー規制が標準化されてきています。
また、StatCounter(※アイルランドを拠点とするWebトラフィック解析サイト)によると、Safari、Edge、FirefoxのCookieレスブラウザが、ウェブブラウザ全体の約45%のシェアを占めています。2023年後半までCookieをサポートする予定(※プログラム配信当時。Googleは2022年7月28日に「2024年後半には段階的な廃止を開始する」と発表した)のGoogle Chromeは48.7%で、ほぼ同じ比率です。
モバイル、タブレットだけにしぼると、Safariが62.3%、Chromeが31.5%となり、CookieレスブラウザであるSafariの比率が大きくなります。
モバイル広告IDに関しても、さまざまな取り組みが実施されています。AppleはATT(App Tracking Transparency)をiOS14.5からリリースし、アプリがIDFA(iOS端末のモバイル識別子)にアクセスするにはユーザーの許可が必要になりました。Googleは、Chromeで導入していたプライバシーサンドボックスをAndroidでも実装する方向性を発表しています。
さらに日本経済新聞の記事によると、IDFAによるトラッキングの承認を求められた際、7割のユーザーが「同意しない」と回答しているそうです(2022年4月29日付)。今まで使えていた広告識別子を使えなくなっていく状況が、すでに始まっています。
マーケターの意識はどう変化しているか
今井:このような現状に直面し、これまでサードパーティCookieや広告識別子を利用して広告を配信してきたマーケターの意識はどう変わってきているのでしょうか。LiveRamp Japanではクロスマーケティング社と共同で調査を行いました。
マーケターの認識しているデジタルマーケティング活動の課題としては、「サードパーティCookie排除への対応」「ユーザーのプライバシー保護」「ユーザーに関するデータ活用の最適化」「デジタルカスタマーエクスペリエンスの向上」が挙げられました。
データを分析して最大限活用することで、より有意義な顧客体験を導く、というポイントが非常に大きくなってきていると考えられます。
関心のあるデジタルマーケティング活動として突出していたのが、「ファーストパーティデータの拡充」です。そうした施策に対するソリューションの導入について「興味がある」と回答した人も多く、関心の高さがわかります。
ファーストパーティデータ活用において大切なこと
今井:ファーストパーティデータの活用に大切なのは、「許諾」「可用性」「継続性」の3点です。
まず、法律やガイドラインにあるように、「ユーザーのデータを預かること」「それを使用すること」に対する許諾が必要です。
許諾をいただいてデータを預かるのですから、それを利用できる形にする可用性も大切です。また、ブラウザやOSの影響を受けることなく継続してデータを使える環境も重要になってきます。
この調査では、「どういうことをすれば自身のデータを預けてもよいと思うか(許諾するか)」の設問に対し、「自分にとって有益な情報を出してくれるのであれば許諾する」というユーザーの姿勢が明らかになりました。
LiveRampが提供する2つのソリューション
今井:そのような中、「グループ内で統一されたデータ基盤となるIDを作りたい」「ユーザーのインサイトを分析したい」「オンラインとオフラインデータを接続したい」「データを拡張したい」というご相談をよくいただきます。
これらの課題に対するファーストパーティデータを活用したソリューションとして、LiveRamp Japanでは「Authenticated Traffic Solution(ATS)」と「LiveRamp Safe Haven(LSH)」の2つを用意しています。
ファーストパーティデータを最大限に活用するためのデータプラットフォーム:LiveRamp Safe Haven
今井:LiveRamp Safe Haven(LSH)は、保有するファーストパーティデータを最大限に活用するためのデータプラットフォームです。「データのエンリッチ化」「コラボレーション/Co-マーケティング」「マーケットプレイス内のデータ&デジタル・アセット」の機能を備えています。
LSHは「“接続”可能なデータによる“信頼ベース”のエコシステム」です。社内の他事業部やパートナー企業と強固なパートナーシップを構築することができます。コラボレーション先とデータをかけ合わせて分析し、最終的にそれを広告費の最適化や広告キャンペーンの結果に結びつけるには、ユーザーをターゲットできる基盤が大切です。そのためのエコシステムを提供しています。
データ活用にはさまざまな課題がつきまといます。いくつかのCRMやデータベースにデータが分散してしまう「断片化」、データ分析や効果測定における課題、さらに急速に変化する消費者行動への対応も必要になります。LiveRamp Japanは、これらの課題に対してLSHというプラットフォームでサポートしています。
独自IDによる認証トラフィックソリューション:Authenticated Traffic Solution
今井:Authenticated Traffic Solution(ATS)は、独自IDを利用した認証トラフィックソリューションです。独自の固有ID「RampID」を使用して広告のターゲティングを行います。
デバイスID、モバイル広告IDといったこれまでの識別子が使えなくなる中、課題となるのはどうやってターゲットとなる人を見つけて広告を配信するか、ということです。ATSは日本を含む世界各国のパブリッシャーと協力し、ログイン認証をトリガーとしてRampIDを生成します。
パブリッシャーから「うちのサイト・サービスにこのRampIDを持った人がいますよ」という信号を送っていただき、それを見つけていただいてやり取りをするという仕組みを取っています。
ATSは、日本や世界のDSP(Demand-Side Platform)やSSP(Supply Side Platform)に協力をいただいており、CookieやデバイスIDに代わる識別子として、現在皆様が使ってらっしゃるエコシステムの中でほぼそのまま使うことが可能です。
RampIDを活用したユーザーコミュニケーションの事例
今井:最後に、RampIDの活用事例を紹介します。
アメリカでウェアラブル活動量計を販売する企業で、RampIDを使用したキャンペーンと従来のCookieベースのキャンペーン、両方を実施して比較した事例です。
RampIDを使用したキャンペーンでは、CRM内のデータを分析して古いバージョンの機器を使用しているユーザーやあまりアクセサリーを持っていないユーザーを洗い出し、バージョンアップやアクセサリーの購入を促す1to1のコミュニケーションを行いました。その結果、CookieベースのキャンペーンよりもROASが2倍、実際の注文額が13%向上しました。それぞれのユーザー群にマッチしたコミュニケーションを行ったことで、ユーザーに「これは私が欲しいものだ」「私が今必要としているものだ」と思ってもらえたのだと考えられる事例です。
ご興味ある方は是非japanteam@liveramp.comまでお問い合わせください。
<スピーカー>
今井 則幸 氏
LiveRamp Japan株式会社
Head of Partnerships
2010年に米Yahoo!社が提供していたRight Mediaに入社し、日本市場でのAd Exchangeビジネスの定着と拡大に尽力。その後MediaMath社をはじめグローバルの広告プラットフォームで日本市場のビジネス展開、デジタル戦略とソリューションの専門知識を培ってきました。2019年3月に現在のデータを安全かつ効果的に活用するためのデータ接続プラットフォームのLiveRamp JapanにHead of Partnershipとして入社。IDソリューションをパブリッシャー、テクノロジープラットフォームといったパートナーへの提供を担当。