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NECが開発したAIが可能にする、ポストCookie時代の安心・安全な消費者データ連携

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Cookie規制や消費者心理の変化により、これまで通りの手段で複数サービス間・企業間の顧客データを統合し、消費者の行動を横断的に分析することが困難になってきています。今後も消費者理解を深めていくためには、別の手段を探さなくてはなりません。

NECが長年のAI・機械学習研究の成果を活用して開発した新しい消費者データ統合ソリューション「消費者属性拡張」の仕組みやCDP活用の具体的な手法を、同社AI・アナリティクス事業統括部の本橋洋介氏とデータサイエンス研究所主幹研究員の小山田昌史氏が紹介します。

※本記事はトレジャーデータ株式会社が2022年7月に開催した「PLAZMA 2022 Summer」内のプログラムをもとに編集しました。

<目次>

より多くのデータを用いて顧客を深く理解する「カスタマーインサイトサービス」

本橋:AIやデータは、顧客像の理解や複数の顧客接点によるアプローチに役に立ちます。特にマーケティング領域においては、業界を問わず、顧客データをどのように蓄積し、分析するかがポイントです。

NECは、顧客データの蓄積と分析を支援する「カスタマーインサイトサービス」を提供しています。CDPを活用して複数チャネルからの顧客データを統合し、それを基に顧客像の可視化やセグメントを生成してPDCAを回しやすくするサービスです。100名を超えるデータサイエンティストによる機械学習モデル作成やデータ整備のサポートも行っています。

顧客データ分析:カスタマーインサイトサービス

リアルとサイバーの融合による多面的な顧客像の理解に力を入れており、従来からCDPに蓄積してきた売上データやWeb上の行動データに加え、携帯電話やIoT端末からの取得したリアルの移動データや位置情報データを統合する取り組みも行ってきました。

これらのデータは秒単位のトランザクションとなるため、処理の難易度も上がります。しかし、CDPにそれらのデータを統合して分析に活用することで、より精緻なマーケティングや顧客に対するタイムリーな情報提供が可能になります。

CDPとAIの組み合わせで顧客をより深く理解する

本橋:「カスタマーインサイトサービス」においては、AIを用いた顧客データ分析も行っています。NECグループでは、AIの活用にあたって「AIと人権に関するポリシー」を策定し、分析される側であるエンドユーザーからお問い合わせがあった際にきちんと説明できるようにしています。

NECグループ AIと人権に関するポリシー

この講演では、CDPとAIを組み合わせた取り組みを2つご紹介します。「レコメンド最適化」と「名寄せ」です。

まずは「レコメンド最適化」について。初回来店や契約直後の時点で、顧客像はほとんど分かりません。そこから関係を継続して顧客像がクリアになるにつれてレコメンドの精度が向上していくといったテクノロジーを開発しています。

例えばクーポン配信においては、配信したクーポンに対する顧客の反応から、その顧客がどのようなクーポンを好むのかを学習して賢くなっていくAIを開発しています。

さらにリアルタイム度を上げていくと、買い物中に秒単位でレコメンド結果が変わっていきます。例えばスマートカートにデータを入れるとレコメンドの結果が変わるような「真なるリアルタイムのレコメンド」を、オンラインでもリアル店舗でも実現します。

顧客データとSNSユーザーを名寄せする「消費者属性拡張」

小山田:ここからは、収集した顧客データの中から同一人物のデータを統合し「名寄せ」をして顧客理解を深めるための、NECが使用している技術のひとつである「消費者属性拡張」についてご説明します。

顧客理解のためには、興味・関心等のプライベートな情報も重要です。しかし、顧客がどの商品を購入済みかという情報は入手できても、プライベートな情報はなかなか把握できないという課題を抱えている企業も多いことでしょう。

自社が持っているデータだけでは、顧客について分かることに限りがあります。1st Partyデータと外部データとの統合は、顧客のことを深く知る手段のひとつです。例えば、SNS上で顧客がどのような発言をしているかが分かれば、そこからその人の趣味・嗜好、これからやろうとしていることをある程度推測することができます。

顧客データの連携は重要

しかし、顧客データと外部データの連携・統合を阻む壁も多くあります。消費者からすれば「自身のプライベートな情報を把握されるのは気持ち悪い」という感覚は当然ありますし、EUを中心に法規制も強まっています。これまではCookieや代替IDを使って連携をしていましたが、規制強化によりオプトアウトされてしまう状況です。

Cookieに代わる手段として、メールアドレスや共通ID、居住地や名前による名寄せが試みられています。しかし、これらは引っ越しやメールアドレス変更によって陳腐化してしまう可能性があり、精度に難があります。

このポストCookie時代の名寄せに対するアプローチとしてNECが開発したのが、これからご説明する「消費者属性拡張」という技術です。

顧客データの連携は難しい

「モノ」の情報から「ヒト」の類似性を推測する「消費者属性拡張」の仕組み

小山田:「消費者属性拡張」を用いた顧客データの名寄せを大まかに説明すると、自社がデータを保有する「顧客A」がTwitter上のどのユーザーと同一人物か、あるいは似ているかを推定し、似ているTwitterユーザーの情報を「顧客A」に引っ張ってくる、というものです。

例えば下図の例では、「顧客A」が購入した保険商品のデータを銀行が保有しています。そのデータを手がかりにして、SNS上で「顧客A」に類似するユーザーを発見します。類似ユーザーが発信している内容から、「顧客A」も同様の興味・関心を持っているのではないかと推測し、顧客の属性情報をふくらませることができます。

NECの消費者性拡張は「安心・安全」な顧客データれん連携を実現

この仕組みの実現には、共通IDを使用していません。「ヒト」の情報の連携をするために、「モノ(商材)」の情報の類似性を使っているのがこの技術のポイントです。

元々NECは、モノの情報の類似性を測る「NEC Data Enrichment」というサービスを2021年から展開しています。「似たものを買っている人は似た属性の人だ」という考えのもと、購入した「モノ」に応じた属性情報をユーザーに付与するサービスです。

下図では、「生命保険」「学資保険」を購入した顧客Aに対し、「NEC Data Enrichment」で「健康」「子供」「貯蓄」という属性を付与しています。この属性情報を基にAIが「ヒト」の類似性を推定し、SNS上から類似ユーザーを発見するのが「消費者属性拡張」の仕組みです。

どうやってデータを連携させるのか - ドメインの連携-
どうやってデータを連携させるのか - ユーザの連携-

ここで発見された類似ユーザーの発信内容には、「投資セミナー」というまだ顧客Aに紐づいていない情報があります。ここから「今後顧客Aも投資に興味を持っていくに違いない」と推測し、「NISAファンドを勧めてみよう」という意思決定が可能になります。

このように「消費者属性拡張」は共通IDを用いずに手持ちのデータだけでデータ連携ができるため、新たなシステムやAPIを開発する必要がありません。また、従来の居住地・性別・年齢のようなデモグラフィックだけではなく、趣味嗜好・興味関心といったマーケティングに直結するサイコグラフィック情報を付与することができるのが特徴です。

営業支援・マーケ支援における消費者属性拡張のユースケース

小山田:最後に「消費者属性拡張」のユースケースをご紹介します。

拡張した属性を用いてレコメンドやターゲティングの質を向上させることができるので、小売業界における個人向けの営業支援に使用できます。

ユースケース①:リテール領域における営業支援

また、ある商材を購入した顧客のデータを「消費者属性拡張」で拡張し、それを集計することで商材の分析に使うこともできます。例えば学資保険を購入している顧客の分析をする際、これまではデモグラフィックしか使えず傾向が見えづらかったところ、消費者属性拡張によって拡張されたサイコグラフィックを用いることで、新市場の開拓や商品開発に活用されています。

ユースケース②:マーケティング支援(1/2)
ユースケース②:マーケティング支援(2/2)

本橋:NECでは、顧客データの統合だけでなく、AIを活用したレコメンドや顧客像の推定に取り組んでいます。これらを網羅的に行うことで、より効果的な顧客データの活用やマーケティングを可能にします。

本講演内容にご興味をお持ちの方は、是非、下記までお問い合わせください。

<NEC様のお問い合わせ先>

NEC AI・アナリティクス事業統括部 ci-contact@cdp.jp.nec.com

 


<スピーカー>

本橋 洋介

本橋 洋介 氏

日本電気株式会社

テクノロジーサービス部門 AI・アナリティクス事業統括部 上席データサイエンティスト

2006年NEC入社後、人工知能・知識科学・機械学習・データマイニング技術と分析ソリューションの研究開発に従事。 機械学習の実問題適用を専門としており、これまでに機械学習技術を用いた分析サービス・システムの導入について30社以上に対して実績あり。 AI技術やサービスの広報役としてビジネスカンファレンス等での講演を多数行うと共に、企業トップ層へのAI活用に関するコンサルティングを実施。

小山田 昌史

小山田 昌史 氏

日本電気株式会社

データサイエンス研究所 知識ベース学習研究グループ グループ長 / 主幹研究員

日本電気株式会社において2013年からデータマネジメント、自然言語処理、機械学習の研究に従事。デジタルマーケティング領域を得意とし、開発した独自の消費者行動分析アルゴリズムをメーカや小売など複数社に導入。現在は研究所においてデータ統合・自然言語処理領域の研究を推進しつつ、新規事業開発部門において研究所開発技術にもとづくNEC Data Enrichmentサービスの開発責任者を務める。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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