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経済メディア『JBpress』の運営をはじめ、コンテンツメディアに関わる多様なサービスを展開している株式会社日本ビジネスプレス。同社の提供するサービスでは、動画の視聴データと各種行動データを掛け合わせることで顧客理解を深め、サービスの向上を目指しています。
2020年7月に開催したオンラインイベント「PLAZMA12」では、同社がトレジャーデータのCDP(カスタマーデータプラットフォーム)とブライトコーブの動画プラットフォームを活用することで、どのようにサービスの向上に活かしているのかを鵜山雄介氏に紹介いただきました。聞き手は、ブライトコーブのMarketing Managerである大野耕平氏が務めました。
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鵜山 雄介 氏
株式会社日本ビジネスプレス
企画推進部 Data&Insights Studio Chief Contents Data Analyst新潟放送(TBS系列)に新卒入社して記者職・営業職を務める。2010年より日本ビジネスプレスに入社。ビジネス系メディアを中心に複数のサイトを横断したDMP商品などを開発。コンテンツ接触者の態度変容などをメディアならではのデータと視点で分析し、クライアントのROIに貢献するビジネスモデルの構築に取り組む。
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大野 耕平 氏
ブライトコーブ株式会社 / Marketing Manager
大手独立系Slerにてソリューション営業を10年経験後、2016年にブライトコーブ入社。3年間の営業職を経験した後、19年より現職。様々な角度で企業における動画活用の啓蒙に注力し、様々なイベントやメディア取材で講演をしている。また、日本における大企業内での社内広報や従業員エンゲージメントにおける動画活用の提案も多数実施している。
データを統合するとユーザーフローが見えてくる
— まずは、日本ビジネスプレスの会社紹介をお願いします
日本ビジネスプレスグループでは3つの大きな事業を展開しています。1つ目の事業が、自社メディアの運営。 『JBpress』というウェブの経済メディアです。『Financial Times』や『The Economist』といった海外の有力メディアとも提携をしています。最近では、ブライトコーブさんの動画プラットフォームを使って動画コンテンツを配信したり、リアルの書籍・電子書籍なども発行したりしています。
2つ目の事業がパブリッシャー様へのシステム提供。メディアサイト構築支援運用システム「Media Weaver(メディアウィーバー)」を提供しており、 出版社さん・新聞社さんを中心に 50以上のサイトで導入いただいています。
3つ目の事業が、今回事例としてお話しする広告主様・広告会社様向けのマーケティングサポートです。
— 日本ビジネスプレスさんは、2013年にTreasure Data CDPを導入されています。どんな目的で導入されたのでしょうか?
一番の目的は「広告主に対してより高度なマーケティングサポートを提供する」ことです。具体的には、メディアでの記事閲読などの行動情報に「広告接触の情報」「動画の視聴情報」「外部から購入している企業データ」などを統合してTreasure Data CDPに入れて管理をしています。
その上で、Treasure Data CDPを介してクライアントのデータと連携したり、メディアサイト構築運用支援システム「Media Weaver」をご利用いただいてるメディアさんとアライアンスを組み、メディア側で接触したコンテンツによってクライアントサイトでどういう行動をとるかのフローの検証を行い、次の打ち手や戦略をクライアント様と一緒に考えることにデータを活用しています。
— 自社のデータだけではなく お客様のデータやアライアンスのデータもTreasure Data CDPの中で一括管理できているというのは、すごく強みになりますよね
動画広告による「態度変容」を可視化する
— 動画視聴データを活用した事例をご紹介いただけますか?
まずは、大手不動産会社さんの記事内に出てくる動画広告(インフィード)を実施いただいた事例をご紹介します。動画広告は、再生回数や視聴完了率、クリック率などが KPI になることが多いですが、動画広告の価値は直接的なクリックではなく「視聴されたことによって態度変容や意思決定に対してどういう影響が与えられたか?」ではないかと思っています。
我々は、動画を視聴した人が検索なども含めてどれだけクライアントサイトに来訪したか、という「ポストインプレッション」のデータも集めています。この事例では動画広告のクリック率は0.1%ぐらいでしたが、 25%視聴してくれた人がポストインプレッションを含めると0.3%、50%になると 0.6%と来訪率と変わってきており、視聴時間が長いと動画広告への興味関心が高まってくることがわかります。
また、75%視聴と50%視聴ではそれほど差はありませんでしたが、100%視聴になると来訪率が1.4%と飛躍的にジャンプアップすることがわかりました。つまり、このクリエイティブに関していえば、いかに100%視聴してもらうことが非常に重要なファクターになってくると考えています。
そこで、100%視聴してくれる人達のインサイトや特徴を知るために「100%視聴してる人」と「視聴してない人」に分けて メディア内の行動の違いを導き出しました。その結果、100%視聴してくれる人たちの特徴として 「モノづくり」の記事や 「日本の歴史」や「世界に誇れる日本人」といった記事を読んでることがわかりました。
こうした分析結果をもとに、新しいクリエイティブのコンテキストを設定したり 、100%視聴してくれやすいユーザーにターゲティングして 「動画広告」を配信して視聴完了率を高めたり、動画閲覧後の受け皿としての 「ランディングページ」にどういうコンテンツを用意するべきか、 導線はどうあるべきか、を考えたりなど具体的なアクションに活用いただいています。
— 視聴データと他のデータを組み合わせて、顧客のインサイトをより深く理解されているということですね
複合的な施策で「効率的なコミュニケーション」が可能になる
もう一つ、オフィス機器の販売をしているクライアント様の事例をご紹介します。
こちらの事例でも、テキスト型のタイアップ記事とインフィード動画広告を同時に展開する施策をしています。
タイアップ記事を閲読して動画を視聴したユーザーと、タイアップ記事を閲読せず動画広告のみに接触してるユーザーで「視聴完了率」と「クライアントサイトへの来訪率」を比較しました。結果を見てみると、タイアップ記事を閲読したユーザーは動画を100%視聴してくれる割合が65%サイト、来訪率も20%と圧倒的に高まっているのがわかりました。
— 一度タイアップ記事に触れることで、 製品・サービスを認知し、 動画広告が流れた際に最後まで見てみようという気分になるということですね
そうですね。施策を単発ではなく複合的に捉えることで、効率的なコミュニケーションが可能になっていくと考え、タイアップ記事とインフィード動画広告の組み合わせでご提案しています。さらには、個人情報と紐づかないCookieベースでユーザーのメディアでの行動履歴を時系列で分析しフローを可視化することで、ユーザーのインサイトをより深く理解できます。
「多くのユーザーに情報を届ける」ことはもちろん大事です。その上で、 タイアップや広告に接触したユーザーが「行動に変化を起こせたかどうか」「何かしらの情報を受け取ってクライアント様の事業に近づいていったか」をきちん見ていきたいと思い、こうした分析をしています。
今後も、クライアントさんと二人三脚でマーケティングを回していく、そんなパートナーになりたいと思っています 。
— 単に視聴データを取得するだけではなく、Web上の行動履歴データなどを組み合わせて顧客分析し自社のサービス価値を上げられている、いわゆる「デジタルイノベーション」を実践されている素晴らしい事例だと思いました。鵜山さん、ご紹介ありがとうございました。