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アパレル大手TSIホールディングスのCDP活用術

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NANO universe、NATURAL BEAUTY BASICなど、50強のブランドを扱う株式会社TSIホールディングス。データ基盤としてTreasure Data CDPを導入し、データ連携・活用の内製化を進めています。実際に内製化を行っている実担当者をお招きし、Treasure Data CDPの導入に至った背景、CDP活用の全体像と具体的なWeb広告・MAでの活用例、導入後の社内共有、そしてデータ連携・活用の今後の展望をご紹介いただきます。

<スピーカー>

竹山 健司氏
株式会社TSI
プラットフォーム本部 ストラテジー&アナリティクス部 データマネジメント課 課長

片岡 賢太氏
株式会社TSI
プラットフォーム本部 ストラテジー&アナリティクス部 データマネジメント課

上石 萌子氏
株式会社TSI
プラットフォーム本部 ストラテジー&アナリティクス部 データマネジメント課

菊地 美和氏
株式会社TSI
プラットフォーム本部 ストラテジー&アナリティクス部 データマネジメント課

(本記事は、2023年9月23日に開催されたPLAZMA30の内容を抜粋、編集して執筆しています)

<目次>

Treasure Data CDPで ユーザープロファイルの解像度向上を図る

竹山氏: 株式会社TSIの竹山と申します。本日はよろしくお願いいたします。私は2017年の3月にTSIの前身となるTSI ECストラテジーに入社をしました。主な業務としては、CDPを活用したデータ活用や連携、データ分析を踏まえたWEB広告の施策実施。その後の効果検証の実施や、MA、KARTE部分に関してもCDPを活用したデータ連携から配信まで対応しています。本日は「TSIホールディングスのCDP活用術」と題して、実際にTSIで実施していることについてお話いたします。

まずはTSIの紹介です。当社は、株式会社サンエー・ビーディー、株式会社ナノ・ユニバース、株式会社TSI ECストラテジーなどの計9社が合併し、2021年3月1日より株式会社TSIとして事業運営を開始しました。
保有する主なブランドは、NANO universe、ゴルフブランドのPEARLY GATES、NATURAL BEAUTY BASICなど、ストリート、メンズ、ウィメンズ等含め、約50強のブランドを展開しています。

Treasure Data CDPの導入経緯についてです。広告施策でデータ活用を行うため、2018年10月からGoogle Cloud上でデータを蓄積し始めました。複数のデータセグメントを売上及び広告表示の精度向上のために活用し、施策の中でそれらを改善していきました。

Treasure Data CDP導入の経緯

その中で、よりデータ連携可能な媒体の拡充と、自社以外の行動データの蓄積、連携を行い、ユーザープロファイルの解像度を上げていくためにも、複数のCDPを検討していました。そのニーズと合致するのがTreasure Data CDPでしたので、2020年10月に導入を決定しました。

誰にでもデータを活用できる体制を整える将来を見据えて

現状のTreasure Data CDPの活用方法について、説明します。まずデータ収集については、TSIに統合した旧事業会社におけるオンラインおよびオフラインでの購買データや、Webサイトログ、アプリのログ、広告接触ログを取得しました。データ活用方法ですが、主にWeb広告、KARTE、そしてSalesforce Marketing Cloud(SMC)での配信施策で活用しています。

こちらは、2023年3月から2024年2月までの今期のデータ活用プランです。

今期のTreasure Data CDP活用プラン

TSIのデータ活用における施策実施内容と、パートナーからの支援内容についてとありますが、まず、TSIでの「データ連携」です。Salesforce Marketing Cloud(SMC) のログ連携や、統合した一部企業でデータの自動連携ができていない部分がありますので、そのデータ連携を行っています。「施策」部分では、前年の期末にTSIが所有するCRMとの自動連携を行い、今期からKARTEとかMA部分で本格的に活用をしています。これにより、Salesforce Marketing Cloud(SMC)でLINE配信が可能となっています。

パートナーからの支援についてですが、現状トレジャーデータとデジタルアドバタイジングコンソーシアムの2社から主に支援を受けています。データ活用が可能な自社人材の育成を行いつつ、データ連携や活用を行うことで施策改善のスピード感を上げていく。デジタルアドバタイジングコンソーシアムにはその点を支援いただいています。

トレジャーデータに関しては、先ほど申し上げたような人材育成の部分に加え、Treasure Data CDPの環境に蓄積しているデータを誰でも活用できるように、将来を見越したデータの整備を共に進めています。

更にTSIは機械学習についても力を入れています。作業をより簡素化させて、工数短縮にも繋げるために、「AutoML」の本導入を行いました。また、先ほど紹介したデータクレンジングとも繋がりますが、「オーディエンススタジオ」でのGUI環境の整備に加え、「ジャーニーオーケストレーション」の導入準備などまで踏み込んで、誰にでも、ある程度までデータ活用ができる体制にしていく想定です。

Conversion APIの導入により売上111.4%増を実現!

上石氏: 株式会社TSIの上石と申します。本日はよろしくお願いいたします。
私は2016年に株式会社アングローバルに入社しまして、サイト立ち上げやバナー制作、撮影やオウンドメディア、SNS運用、ECサイト等、全般の運用業務を行ってきました。2021年3月の会社統合に伴いTSIに所属し、現在はブランドを横断したWeb広告領域の施策提案や実施を担当しています。

今回はConversion APIと店舗購買データを活用した事例を2種類紹介します。まずAPIの点で2つの事例です。

Conversion API事例

1つ目の取り組みは、オフライン店舗売り上げを、Metaにて手動アップロードから自動アップロードへ変更した事例です。OMOを促進していくという会社全体の方針と、コロナ禍において、ECはEC、店舗は店舗というようにデータを区切ることで、データ分析の難しさが加速したため、Web広告分析から店舗とECの売り上げにどう繋がったのかをそれぞれ可視化して見る必要がありました。

2020年12月から週1回データ連携を行う取り組みを実施し始め、データ取得を手動で行っていましたが、今年3月にTreasure Data CDPを介して日時でMetaのピクセルに返せるようになりました。それによりタイムリーなデータ連携が可能になり、最適化しやすくなりました。その結果、予算のアロケーションや総合的に広告の効果検証を実施することで成果の向上に繋がっています。

具体的に、ピクセルのみ返す際と比較すると、7%のコンバージョン増加を継続しています。店舗イベント開催時の訴求時には、通常のKGIにプラスし、オフライン売り上げも指標に入れた広告運用を実施しています。結果として、Conversion API導入前後の比較で、インプレッションが126.8%増加、コンバージョンが110.9%増加、売上が111.4%増加しました。

2つ目の取り組みについて。購入完了ページのみだったデータ計測を、カート・商品詳細ページでも開始した事例です。カート・商品詳細ページでも計測を行うことで、高い精度で顧客にアプローチが可能になりました。広告の最適化にも寄与しています。こちらは8月にデータ取得を開始していますので、今後検証しながら活用を進めていきます。

日次のデータ連携でECレコメンドの効果を高める

続いては店舗購買データを活用したCriteo配信についての事例です。

店舗購買データを活用したCriteo配信に関して

店舗購買者のデータを活用し、まだ店舗で購買していないお客様をECへ誘導するOMO促進目的の施策を実施しています。店舗とECの両チャネルでお客様にアプローチすることが必要になる中で、Criteoからの提案を元に、当社ブランドのSANEI bdのECにて施策を実施する運びとなりました。その施策実施にあたり、Treasure Data CDPを介して日次で店舗購買データをCriteoサーバーに連携することを実現しました。狙い通り、Criteoサーバーに連携して機械学習を通したデイリーの前日購買データをECへ送り込むことで、当日のレコメンド表示に活かし、成果向上へ繋げることができました。配信実績は、目標比で売上116.5%、ROAS100.7%でした。

日次でデータ連携を行うことがポイントであることをCriteoから伺っていたので、Treasure Data CDPの導入効果は非常に高かったと思っています。今回はSANEI bdで実施しましたが、他ブランドでもTreasure Data CDPを導入していますので、施策を横展開していきたいと思っています。

広告配信に機械学習モデルを導入し、配信クリエイティブを出し分け

菊地氏: 株式会社TSIの菊地美和と申します。よろしくお願いいたします。現在、データマネジメント課で広告運用やデータ活用などの業務を行っています。機械学習についてお話します。

TSIの広告配信における機械学習事例(1)

Treasure Data CDPの機械学習モデルを使用した広告配信を行うために、TSIの各ブランドサイト上にTreasure Data CDPのタグを配置し、各サイトの情報のデータを蓄積しました。蓄積したデータを利用し、「オーディエンススタジオ」で機械学習モデルを作成していきました。作成したモデルは「購入しそうなユーザー」「特定カラーを購入しそうなユーザー」「特定カテゴリーを購入しそうなユーザー」の3つです。

こちらが各モデルを使用する際に掲載したクリエイティブ例です。

TSIの広告配信における機械学習事例(2)

「購入しそうなユーザー」に対しては特にクリエイティブ内容を決めずに、ブランディング系、施策系など、様々なクリエイティブを配信しました。「特定カラーを購入しそうなユーザー」や「特定カテゴリーを購入しそうなユーザー」については、指定したカラーやカテゴリーで合致した要素をクリエイティブに反映しています。

続いては広告配信の実績をご紹介します。主にInstagram上で、MIX.Tokyoをはじめ、様々なブランドの広告を配信していました。図中下部がその配信実績です。

TSIの広告配信における機械学習事例(3)Instagram配信実績

「購入予測」「カテゴリー」の計測は様々なブランドで実施しました。リストの配信開始時はCPCが高まりROASも好調でしたが、購入確率の高いユーザーのみを抽出しているため母数が枯渇してしまい、数値が徐々に下がってしまいました。そこで、数値改善に向けて各モデルの数値を変更して調整することにしました。「カラー」や「カテゴリー」については、まず初めにMIX.Tokyoの広告を配信して様子を見ました。その結果、CVRやROASがとても好調だったので、MAEGARET HAWELLやその他ブランドでも広告配信できるように現在準備中しています。

Treasure Data CDPとの連携でMAを高度化

片岡氏: 株式会社TSIの片岡と申します。よろしくお願いいたします。私は株式会社ナノ・ユニバースで物流部門に配属後、2018年に本社に異動しました。そこから主にMA、CRM周りを担当しています。2021年の会社統合に伴い、ブランドを横断してMA、KARTEを推進する立場となりました。ここからはTSIでのMA、KARTEに関しての具体的な活用方法についてご紹介します。

Treasure Data CDP x SMC連携施策事例

元々スタッフから発信されたデータをTreasure Data CDPに連携していましたが、新たに顧客マスタデータや商品マスタデータ、購買データなどの取り込みも開始しました。現在では計10ブランドでデータ連携の取り組みを進めています。

Treasure Data CDP x SMC連携施策事例(ブラウザ放棄値下げ/在庫僅少 シナリオ概要)

具体的な施策内容としては、図中①、②の新規シナリオにおいて、Treasure Data CDPでセグメント及び対象となる商品等のデータを抽出後にSalesforce Marketing Cloud(SMC)で連携し、そのデータを元にユーザーへのメール配信を行いました。ブラウザ放棄値下げと在庫残りわずかのシナリオが①です。過去にユーザーが閲覧していた商品に対して、値下げもしくは在庫が残りわずかとなった場合に通知するシナリオです。②はお気に入りアイテムの新着コーディネート通知のシナリオです。ユーザーがお気に入り登録した商品の着用コーディネートが投稿された翌日にメール通知するというシナリオを実装しました。

結果として、①のシナリオでCVRのclick toが12.5%。②のシナリオではCVRのclick toが9.6%という実績を出すことができました。

シナリオ①の概要です。ユーザーのブラウザ放棄データを元に、パターン1の値下げか、パターン2の在庫僅少かを判断して配信を行っています。また、配信後に2日待機し、メールの開封の有無で条件分岐を行います。開封をしている場合はそのまま終了、開封をしていない場合はもう1通、件名とプリヘッダーを変更して同じロジックで配信する流れです。
こちらは②のシナリオの概要です。

Treasure Data CDP x SMC連携施策事例(お気に入りアイテム新着コーディネート通知 シナリオ概要)

ユーザーのお気に入りデータを元にコーディネートマスターデータを取得しております。更に、サブコンテンツとしてメールマガジンにコーディネートランキングを掲載するにあたり、コーディネート別のランキングデータを取得しています。①同様、1通目配信後に2日待機、メールの開封によって条件分岐をさせています。メール再送の際に変更しているのは「件名」「プリヘッダー」項目です。

Web接客ツールとの連携で効果をリフトアップ

片岡氏: 続いてはKARTEにデータ連携を行った施策の事例です。

Treasure Data CDP x KARTE 連携施策事例

Treasure Data CDPに取り込んだ各種データをKARTEのデータハブにも連携し、Web接客施策や分析に活用しました。例えばMIX.TokyoやSANEI bdのECにて、お気に入り登録人数の表示、購入商品のコーディネート提案、保有ポイント有効期限をポップアップでお知らせ、商品レコメンド、直近の閲覧人数を表示など、様々な施策を行いました。効果計測時は、KARTEでは未接客と接客において50%ずつA/Bテストを行い、購入率がどれくらいリフトアップしたかというのをいつも指標にしています。施策後はどの施策においても購入率がリフトアップした結果が出ました。

Treasure Data CDP x KARTE 連携施策事例(購入商品のコーディネート提案)

SANEI bdEC上で行った購入商品のコーディネート提案の施策事例です。「リアルの店舗のように、ユーザーが以前購入した商品のコーディネート提案をECサイト上でも行いたい」という要望から施策の実施が決まりました。施策の内容ですが、直近30日以内に店舗やECで商品を購入したユーザーがサイトに訪問した際に、購入商品に紐づく商品をポップアップで表示するような仕様を実装しました。等施策の実績としましては、未接客グループと比較して購入率が約20%向上しました。コーディネート閲覧率に関しても約40%の向上と施策の実施が結果に現れているため、ユーザーによりコーディネートを見ていただくきっかけに繋がっていると実感しています。

Treasure Data CDP活用事例が売上を伸長し、データ人材とチャネル増に繋がっている

竹山氏: 続いては、TSIの経営レイヤーや上長や社内への施策説明についてです。社内への説明ですが、月毎に施策やデータ連携の内容について共有する場を設けております。内容としては、発生する施策費用に対しての各施策の経緯売上を重点的に報告しつつ、来月や半年後のタームで見て今後実施を予定する施策の社内提案を行っています。

TSI 上長や社内への施策説明について

そういった説明や提案を行う中で、社内評価が高い点としては主に2点あります。1つ目はTreasure Data CDPを活用した施策が増えるにつれ売上推移が高まっているという点、2つ目はデータ活用ができる人材やチャネルが増えている点です。

データの活用は属人的になりやすい傾向にあります。しかしトレジャーデータやデジタルアドバタイジングコンソーシアムの支援のもと、社内でデータ活用ができる人材が確実に増えていっています。更に、当初は主にWeb広告中心でデータ活用を行っていましたが、MAやKARTE、LINEといった部分までチャネルが増えており、その他のチャネルにも連携していける見込みが立っているというのが高い社内評価に繋がっています。

データ活用文化を社内に浸透させる3つのポイント

竹山氏: データ活用をうまく行うためのポイントがいくつかあります。1つ目は、まず始めてみることです。データ活用はなかなかとっつきづらいと思いますが、最初から100点を取れるようにできるものでもないので、「まずはやってみる」ということが必要です。

2つ目は、成功も失敗も共有していくことです。失敗することはあまりいいことと思われないかもしれませんが、失敗するということはチャレンジしているということです。メンバーが自分で考えて進めていることですので、失敗を元にして「次どうするか」に活かせればいいかなと思い、メンバーには前向きにチャレンジできる環境をつくっています。

3つ目が社内で勉強会を行うことです。SQLやワークフロー、あとはデータ連携しているカラム、構造といった知識を適宜共有することで、業務が属人化されないように進めています。

最後にTSIのデータ収集やその活用の今後の展望についてお話しします。

TSI データ連携・活用に関して(今後)

データの収集に、未対応となっている未統合企業の購買データ、EC店舗を含むサイトログやアプリで取得したデータ、そして広告接触ログの取得データ及び生産、物流のデータの取得を今後予定しています。活用面についてLINEチャネル、アプリ施策への活用、拡大、商品の需要予測や生産コントロールなど活用をしていく想定です。その活用施策の開始に向けて、まずはデータ項目の整理を行い、データ理解の解像度を上げて行ければと思います。

TSI データ連携・活用に関して(今後)

先ほどデータ活用について触れましたが、今まではチャネル単位での活用アプローチを意識して、MAやKARTEなどのチャネル拡充ができてきたかと思います。今後更に発展していくために、チャネル単位でのアプローチだけではなく、拡充したチャネルを横断する活用アプローチ(ユーザー軸でのアプローチ)の推進をしていきたいですね。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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