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ダッシュボードの普及と課題~トレジャーデータ書籍出版記念!一部先行公開~

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はじめに

本記事は2023年6月14日発売予定の『ビジネスダッシュボード 設計・実装ガイドブック 成果を生み出すデータと分析のデザイン』から「第1章 ダッシュボードの種類と課題」の内容を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。

単行本 https://www.amazon.co.jp/dp/4798177644
Kindle版(電子書籍) https://www.amazon.co.jp/dp/B0C37GD2RN/
目次 第1章 ダッシュボードの種類と課題
第2章 ダッシュボード構築プロジェクトの全体像
第3章 ダッシュボードの要件定義・要求定義
第4章 ダッシュボード設計
第5章 ダッシュボードデザイン
第6章 データ準備
第7章 運用・レビュー・サポート
付録

ダッシュボードに必要な要素

ダッシュボードを一言で説明すると、「様々なチャートや表など複数の情報を一つの画面に入れたもの」と言えます。

ダッシュボードイメージ

ビジネスにおけるダッシュボード活用に関して、可視化される情報の例を挙げてみましょう。
売上、利益、利益率、販売数、平均単価や、これらの指標を部門や商品別で比較したものなどがあります。これらは、ビジネスにおける重要指標です。

データドリブンな取り組みでは、重要指標を観測し、そこから課題を見つけ、アクションを起こすことが求められます。このプロセスにおいて、ダッシュボードは気づきを与える存在です。
つまりダッシュボードは可視化して終わりではなく、「ビジネス課題を解決するためのもの」です。

ビジネスニーズに応えられるダッシュボードの条件

ビジネスニーズに応えられるダッシュボードの条件にはどのようなものがあるでしょうか。
私たちのチームは、「ビジネス上の目的達成に繋がるデータがリアルタイムかつ継続的に可視化され、アクションを取るために必要な意思決定ができるもの」だと考えています。

この考えは次の三つの要素に分解できます。

一つ目は「目的に直結すること」です。
どんな目的のためにそのダッシュボードが必要なのか。ただチャートや表を複数詰め込むのではなく、利用目的に合わせたものであることが必要です。

二つ目は「アクションに繋がる意思決定ができること」です。
ダッシュボードを眺めていても行動を起こさなければビジネス課題は解決できません。可視化されたデータから目的達成に関わるCSF(Critical Success Factor:重要成功要因)やボトルネックなどを発見し、次のアクションに繋がる意思決定をする必要があります。

三つ目は「リアルタイムかつ継続的に見られること」です。
ビジネスを取り巻く状況は、日々変わります。1カ月前のデータを振り返ることは大切ですが、ダッシュボードの意義は、今がどうなっているかを常に把握することです。
データの内容やその処理方法によっては、最新のデータは前日や前週のものかもしれません。しかし、直近のデータをできるだけリアルタイムで継続的に見られることが必要です。

ダッシュボードは、これら三つの要素を満たしている必要があります。

ダッシュボードの普及を促す三要素

なぜダッシュボードは普及してきたのでしょうか。

私たちのチームは大きく三つの要素があると考えています。「データとの向き合い方の変化」「ツールの発展」「スキルアップのための情報の増加」の三つです。
書籍ではそれぞれ解説しますが、この記事では「スキルアップのための情報の増加」についてだけ紹介します。

スキルアップのための情報の増加

ツールが発展してもユーザーのスキルが向上しなければ、ツール導入の効果は最大化しませんが、今ではスキルアップのための学習方法は数多く存在するようになりました。
BIツールを提供している企業だけでなくユーザーもツールについて情報発信をしており、様々なコンテンツに触れることができます。
また、資格制度やユーザー同士による人材育成プログラム(Tableau DATA Saberなど)といった、BIツールやデータ可視化・分析の普及、スキルアップを目的とした取り組みも存在します。

もちろん、BIツールの操作方法を理解しただけでは、ビジネスニーズに応えるダッシュボードを構築するためのスキルとしては不十分です。データベースや統計に関することなど他にも得たほうがよい知識があります。

それらもユーザーが書いた記事などで、どのようなスキルや知識が必要か調べることができます。書籍で紹介しますが、ダッシュボードの設計や構築には様々な関係者が登場します。
例えば、プロジェクトマネージャー、エンジニア(データエンジニア、BIエンジニア、ソフトウェアエンジニアなど、企業により様々なエンジニアが存在)、データアナリスト、データサイエンティスト、マーケターといったポジションの方達です。組織やプロジェクトによってポジションの有無や人数は変わります。
また、ポジションによって保有しているスキルは異なります。ご自身と似たポジションの方が書いた記事を読むと、スキルアップの計画を立てやすくなるかもしれません。

以下に、学習に役立つコンテンツを整理しました。うまく活用して、学習を進めていただければと思います。

ダッシュボード・BIツール関連のコンテンツ

ダッシュボードの課題

様々な学習コンテンツを通してダッシュボードを作れる/作ったことがある方は、日に日に増えていると感じます。

一方で課題も出てきました。一言で言うと、「使われないダッシュボードの誕生」です。
ダッシュボードの構築が終わり、関係者に紹介したタイミングでは、「いろいろ見られるのですね、便利そうですね」と良い反応があったのに、使われなくなるケースがあります。

また、ダッシュボードのリリース直後は使われていたのに、数週間も経つと使っている人が限定的になり、最終的には全く使われなくなるケースもあります。作った人ですら、リリース後に見ていないこともあるのです。

なぜ「使われないダッシュボード」が生まれるのでしょうか。様々な理由があると思います。
例えば、次のようなことが挙げられるでしょう。

  • ケース①
    「使い方がよくわからず、使わなくなった」
    → マニュアルを用意したり、勉強会を開催したりといった対症療法的な対策で、「使われるダッシュボード」に生まれ変わる。
  • ケース②
    ダッシュボードを見ても、「ビジネス上の課題がわからない」「次に何をしたらよいか、わからない」
    → 使い方のレクチャーだけでは解決しない可能性がある。
  • ケース③
    「そもそもこのダッシュボードの目的がわからない」
    → ダッシュボードを構築する前に、どのような目的で構築するのかという認識を関係者とすり合わせておくべきだった。

以降で「使われないダッシュボード」が誕生するまでにどのような落とし穴があるのか、もう少し説明します。

要求定義・要件定義や設計が問題

先述の通り、私たちのチームはビジネスニーズに応えられるダッシュボードの条件は、「ビジネス上の目的達成に繋がるデータがリアルタイムかつ継続的に可視化され、アクションを取るために必要な意思決定ができるもの」と考えています。
しかし、「使われないダッシュボード」の中には、次のようなケースがあります。

  • データをグラフや表にして、ダッシュボードにただ埋めている
  • 情報を盛りだくさんに詰め込んでいる
  • どんなデータがビジネスに必要なのか、曖昧なまま作られた
  • 誰がどのような業務の中で使うのか、想定せずに作られた
  • 誰に何を知ってほしいのか、想定せずに作られた

これらは一例に過ぎませんが、共通して言えるのは「要求定義・要件定義」や「設計」に問題があった、ということです。
どんなビジネス上の目的に対して構築するダッシュボードなのか、ビジネスに貢献するためにダッシュボードに取り入れるべき要素は何か、誰がこのダッシュボードを使うのかを、ダッシュボードを構築する前に決める必要があります。

データの構造や運用・サポートが問題

ダッシュボードの要求定義・要件定義や設計を丁寧に進めて構築したにもかかわらず、リリースしてしばらくすると、「使われないダッシュボード」となってしまうことがあります。
使われない理由を紐解いてみると、次のようなケースがあります。

  • ダッシュボードの動作が重く、知りたいことを調べるのに時間がかかる
  • データの更新が止まっている
  • 追加すべき機能やデータが発生したが、反映されていない
  • そもそも使い方がわからない
  • 掲載している指標の定義がわからない
  • 使い方を誰に聞けばよいのか、どこで調べればよいのかわからない

これらに共通して言えるのは「データ構造」や「運用・サポート」の改善が必要だということです。

日頃の業務でダッシュボードを活用するには、知りたい情報がスピーディーに確認できることや、業務で発生したニーズを早期に満たせることが重要です。
また、資料や勉強会、問い合わせ窓口などのサポートを提供することで、社内にダッシュボード活用を浸透させることができます。


以上が書籍の第1章から抜粋・編集した内容です。

本書の第2章以降では「使われないダッシュボード」を生み出さないために必要なことを具体的に紹介します。
以下の章構成となっており、ダッシュボード構築プロジェクトの一連の流れについて解説しています。

第1章 ダッシュボードの種類と課題
第2章 ダッシュボード構築プロジェクトの全体像
第3章 ダッシュボードの要件定義・要求定義
第4章 ダッシュボード設計
第5章 ダッシュボードデザイン
第6章 データ準備
第7章 運用・レビュー・サポート
付録

付録について

巻末の付録では、第2章〜第7章の重要なポイントをチェックシートとしてまとめて掲載しています。
加えて、付属データとして以下を提供します。ダウンロード方法については、本書の巻末をご覧ください。

  • 事例紹介
    ダッシュボード構築プロジェクトの一連の流れを紹介
  • チェックシート
    第2章〜第7章の重要なポイントを掲載
    (巻末の「付録」に掲載した内容を、Excelファイル(.xlsx)で提供)
  • テンプレート
    ダッシュボード構築プロジェクトにおいて私たちのチームが用いているテンプレートのセット

本書はダッシュボード構築プロジェクトに関わる幅広い読者を対象に解説しています。

ダッシュボード構築プロジェクトは、一人で成し遂げることは困難であり、メンバーとの協力が必要です。
また、ご自身が担当しない役割に対する理解もプロジェクトを円滑に進めるにあたって重要です。

そのため、全ての章を読んでいただけると幸いです。本書が少しでもみなさんの役に立つことを願っております。

ご購入はAmazon商品ページから!

単行本 https://www.amazon.co.jp/dp/4798177644
Kindle版(電子書籍) https://www.amazon.co.jp/dp/B0C37GD2RN/

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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