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「最適な顧客体験の実現」に必要な基盤とは? グランドデザインの描き方とアセスメントの重要性

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現代のビジネス環境では、顧客体験の向上は事業成長に不可欠な要素となっています。その一方で、体験向上を追求する中で、様々なシステムやツールが導入され、部門ごとに異なるツールが用いられたり、ツール間でのデータ連携が複雑化するという課題が生じています。ツール同士の役割重複やデータの断片化は、結果的には業務効率や顧客体験に影響を与える恐れがあります。

当セミナーでは、これらの課題を解決するためグランドデザインの描き方や、システム・ツールのアセスメントについての知見を共有するため、株式会社SBI新生銀行の松永氏をお招きし、具体的な取り組みについてお伺いしました。

<スピーカー>

松永 美生 氏
株式会社SBI新生銀行 / グループ個人営業企画部リテールIT開発室 営業推進役

井上 祐奈 氏
株式会社電通デジタル / テクノロジートランスフォーメーション第1部門 CRMイノベーション事業部 第2グループ グループマネージャー

田井 義輝
トレジャーデータ株式会社 / 副社長 執行役員

(本記事は、2023年8月31日に開催されたウェビナーの内容を抜粋、編集して執筆しています)

<目次>

田井: 皆様、こんにちは。『「最適な顧客体験の実現」に必要な基盤とは?』と題しましてウェビナーをはじめます。まず簡単に自己紹介をさせていただきます。私はトレジャーデータ株式会社の田井と申します。副社長 執行役員として、4月からトレジャーデータの日本におけるGo-To-Marketの責任者を努めております。私自身、比較的長くデジタルマーケティングの業界におりますので、その観点でお話ができればと思います。

井上氏: 電通デジタルの井上祐奈と申します。よろしくお願いします。私は新卒で新聞社のデジタル部門に配属され、開発やマーケティングに携わっておりました。電通デジタルに入社後、主に金融機関向けデジタルマーケティングの戦略策定や、導入支援を担当しております。今日は、金融業界の知見というところも含めた観点でお話させていただければと思います。

田井: よろしくお願いします。では続いて松永さん、よろしくお願いします。

松永氏: SBI新生銀行の松永と申します。私は2003年に銀行に入って、いたって普通の銀行員をやるつもりだったのですが、営業とかマーケティングとか普通の業務をやっていたら、銀行でCRMをやることになり、そのリード役を務めて早7年になりました。いつのまにかクラウド製品ばかり扱う、プラットフォーム担当をやっております。本日はその現場の声の部分を担当したいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

田井: よろしくお願いします。早速本題に移ります。「最適な顧客体験の実現に必要なこと」というのは、書くのは簡単ですが非常に難しい。ポイントいくつか、井上さんからお話しいただきます。

最適な顧客体験に必要な3つの観点

井上氏: 田井さんからお話があったように、「最適な顧客体験というのは何か」についてだけでも時間が必要ですが、今日は前提ということで手短にお話しさせていただきます。

そもそも「最適な顧客体験は何か」と言われたとき、何とお答えになるでしょうか? 様々な立場があるとかと思いますが、まず顧客の立場で言えば、必要なもの、欲しいものが欲しいときに、欲しい方法で届いてほしいということかと思います。例えば、お店に行かずにWebで申し込みたいんだけど、分からなくて止まってしまっているようなときに、様々な手法でフォローを行うこと。それはお客様からするとうれしい、ハッピーなことですよね。

顧客の立場:必要なものを必要な方法・タイミングでお届けすること

企業の立場からしますと、「顧客を正しく理解して識別して、そのつながりを持ち続けること」。一度失敗して顧客が離れてしまうと、つながりがなくなってしまいます。きちんとつながりを持ち続けることが大切かと思います。顧客とのつながりと言いましても、Webだったりアプリだったりお店だったり、様々ある中で、顧客のやりたいことですとか欲しいものをきちんと理解し、実現していくのが大切だと考えています。

企業の立場:企業の立場:お客様を正しく理解・識別し、つながりを持ち続けること

今日の本題、最適な顧客体験の実現に必要なものとして、私としては3点の観点があるかと思っています。

最適な顧客体験の実現に必要なこと3点

今お伝えした顧客とのコミュニケーションをきちんとやっていきましょうということで、「コミュニケーションの高度化」ですね。2つ目は「データの蓄積と統合」、データとシステムの統合と、あとはそれを運用する人たちの観点です。そして3つ目は、リソースがないと、そのシステムやシナリオも続けることができませんので、人や、その生産性を上げていこうということです。この3つの観点から、今日は特にシステムにフォーカスを置いて、データの蓄積やリソース周りのお話ができればと思っています。

田井: ありがとうございます。最適な顧客体験の実現ってとても難しいテーマかなと思います。私も一般消費者ですので、どんどんわがままになっているなと思います。思うに私の親の世代とかさらに上の世代って、とても我慢強かったなと思えるんですよね。コロナ禍以降というタイミングも踏まえた中で、SBI新生銀行様では松永さんが顧客体験の改善のために様々な取り組みをされているかと思います。今回事例も含めてご紹介いただけますか?

SBI新生銀行における顧客データ連携基盤の現状

松永氏: 私が担当者となってから6〜7年になります。現時点で我々がどのような取り組みをしているかをご紹介します。

SBI新生銀行における顧客データ活用基盤の構成図

データ活用基盤の構成図です。一番左側が、お客様にご利用いただくチャネルです。様々なチャネルを使っていただいています。営業支店もあれば、お電話やビデオでのお取引やご面談、当然インターネットバンキングやメールといったオンラインチャネルも使っていれば、いまだに郵送で送らせていただくこともあります。銀行もお取引先が増えてきました。また、いわゆる銀行代理と呼ばれる、銀行以外の場所で銀行の営業をしていただく場合であったり、逆に銀行が保険や証券といった他社の商品を取り扱ったりという場面で、他社とお客様情報のやり取りもあります。こういったところが広く接点チャネルになっています。

かたや右側にあるのが、いわゆる基幹系システムです。最近基盤データベースを持ちながらも、考え方はオンプレミスということで、ITシステム部門がしっかり担当しています。金融機関でよく言われることとして「お客様の命の次に大事なお金を扱う」わけですので決して間違いがないようにやっていくために重厚長大なシステム群があるわけです。

けれども、顧客コミュニケーションをメインにしよう、ないしはお客様との接点におけるいろいろなことをスムーズにやっていこうという目的で、真ん中に記載したように、クラウド基盤上にプラットフォームを立てています。その中心になるのがCRM、顧客管理基盤ですが、CRMだけでなんでも済むわけではもちろんありません。そこを中心にいろいろなサービスやWebのアプリケーションを全てインターネット上に配置して、実際に使いながらサービスを提供していく。またはお客様からのやり取りを受けていく。そういった作りにしています。

中心となるCRMのところに、基幹系にあるようなお客様のマスターデータを持ってきます。お金にまつわる部分は、また基幹系システムに返す。ですがコミュニケーションの部分って、基幹システムは別に要りませんので、それはクラウド上で完結させるようにしていくかたちにしています。

こういった構成にしたメリットは受けているのは、まず当行です。営業員やコールセンターのスタッフはCRMひとつだけ見ていればそこに全部データが揃っていますし、裏側にいろいろな要素紐づいていますので、お客様との多様なやり取りが可能です。お客様にとってもいろいろなチャネルを使っていただけます。お客様は当然ですが、われわれのシステムを意識するわけではありません。お客様がどの接点を取ってこられても、応対するスタッフは全ての情報を知った上で対応できるわけです。CRMには億を越えるレコードが格納されています。アプリケーションは常に新しいものが出てきますので、その時々で良いと思うものに切り替えを行いつつ、10〜20のアプリケーションをコネクトさせて使っているという状況です。

田井: ありがとうございます。顧客チャネルでいうと「あらゆる接点」という言葉がそのまま当てはまりますね。業界が違っても、参考になる部分が非常に多いのではないでしょうか。

オフラインの業務を基盤に載せ、デジタルでエンパワーする

田井: 裏側のシステムはやはり重いですよね。

松永氏: そうですね。その意味では、真ん中の部分がなかった10年前は、1つのチャネルにおけるサービスを増やそうと思ったら1年かかります、というイメージでした。コストのインパクトも大きかったですね。

田井: 様々な取り組みやチャレンジをされている中で、大変だったところや注意点などはありますか?

松永氏: その意味では、当行の歴史の部分でお伝えするのが良いかと思います。

SBI新生銀行の歴史

時系列的には7年前、2016年から様々なチャネルの業務を基盤に乗せるということで進めてきました。チャネルとしては、最初に取り掛かったのが営業や電話、コールセンター、バックオフィス、そしてレターという、いわゆるオフライン系チャネル業務でした。ある程度一通り業務に乗せるのに2〜3年。その後デジタル系のチャネルをどんどん増やしていきました。それはなぜかというと、使う側の人間に慣れてもらうのに非常に時間がかかるからです。デジタルマーケティングだけに限って実施するのであれば、1年くらいで実装できると思います。

当行もオフラインのところにも価値があると言いますか、結局オンラインだけであれば他の金融機関とそこまで差が出るものではないと思います。私たちの価値は何ですか?といえば、スタッフがお客様に対していろいろなご提案ができるというところに価値があると考えています。そのために、デジタル側にあるデータをオフラインのスタッフが使えるようにしていきたいという思いが強かったため、なんとかオフライン業務をこの基盤に乗せたいと考えてやってきました。

でも、これは本当のことですが、導入すると毎日のようにお店やコールセンターから苦情が来るんです。使いにくいとか。少しでも業務に変化があると、使う人間の効率が落ちるわけで、慣れてもらうまで、納得してもらうまで、さらにそこから、使う側の人たちにとって価値があるかもと思ってもらえるまでは、2〜3年という時間が必要だったかなと思っています。

「データって、手元にあると使えるようになるんだな」

田井: 潮目が変わってきたポイントはありましたか?

松永氏: 何度かありましたね。初期の頃、営業やコールセンターのスタッフがお客様のオンライン情報行動をはじめから見られるようにして提供しました。それを見慣れてくると、営業の側から、お客様はこういうことに興味関心がありそうだから、次来行されたときや、電話するときにはこういう提案をしてみよう、といった勉強会がはじまったんですね。われわれは「タイムライン」と呼んでいるんですけれども、オンラインとオフライン全部をまとめたもので気づけることはなにか、そういうテーマで大会のようなものを開催してくれました。データって、手元にあると使えるようになるんだな、と改めて気付かされました、

もうひとつのポイントは、今から2〜3年前の、デジタルマーケティング導入から1年ほど経ったタイミングです。今度は営業が、MAのシナリオを考える大会をやってくれたんです。実施したのはごく一般的な、銀行の営業スタッフです。それぞれの支店でどんな自動化メールや自動化されたツールがあれば、自分たちとお客様がもっとつながれるだろうか、というテーマからはじまって、「お客様がご来店いただく前にこういうご案内をしたい」とか、「お客様がご来店いただいたときにこういう入力をするから、それに合わせてオートメーションのご案内をカスタマイズしてほしい」と。

このことは本当に価値があると思っていて、デジタルだけ限って施策を実施すると、つまらないデータに基づいてあまり差が出ないような案内を送ってしまいがちになることがありますが、現場の協力のもと、自発的に「この方にはこういうことをやりたいからデータを入力します」というところまで行ってくれるというのが、活きたデータ活用につながっているのかなと思っています。

SBI新生銀行 松永美生氏

目的はデータそのものではなく、オフラインでいかにデータを活用するか

井上氏: SBI新生銀行様の歴史を見て私が気づいたのは、チャネルのところです。オフライン系から着手されたのが他社さんと真逆なんですね。最近導入されている場合、時代の流れもあって、まずメールから、One to Oneでやりたかったり、それをLINEでやりたかったりというご要望が多いです。営業とかバックオフィス系って、時間もかかりますし、大変だし、お金もかかるため、ロードマップを書くとどうしても後々のほうになってしまうことが多いんですよね。御行はこの領域がまず先に出ているというのは強みであり、ポイントだと思います。チャネルの順番についてスケジュールやロードマップは松永さんが考えられたんですか?

松永氏: 2015年が最初の検討期でしたが、そのときの担当役員、担当部長とわれわれで検討していたとき、マーケティングは主導するけれども、データベースを回して、データを抽出して送るみたいなことは当時も一応やっていました。ですので、より効果を発揮するべきところは有人、オフラインの領域で、それはもちろん営業に対する効果や業務効率化という効果がありますから、そこからやっていこうよという合意のもと、割と早期に、すんなり決まっていた感じでしたね。

井上氏: デジタルマーケティングに携わっていると「お客様目線で」、「顧客第一」といった言葉を私たちもよく使います。一方、意外と忘れがちなのが、それを使うスタッフさんたちのことですよね。その心を掴んでデジタルに巻き込んでいくやり方はあまり聞いたことがなくて、すごい事例だなと思っていました。

電通デジタル 井上祐奈氏

田井: 顧客体験を実際に作っている方たちが非常に重要だという理解をそもそも持っていたことが、スムーズに進んだ要因でしょうか?

松永氏: 当時の経営的な課題の背景をお話しますと、それまで、お金をかけて広告をしてお客様を増やしていく、資金を持ってきていただくというビジネスがある程度は成り立っていたのですが、金融環境及び市場環境の悪化や、金利ひとつとってもパイを増やしていくことが難しくなっていました。その状況下で、既存のお客様基盤でいかにわれわれの価値を高めていくべきか、というのが出発点でした。

既存のお客様データを活用してどうやって関係性を高めるかという点では、まさに相対するスタッフ、いわゆる有人リソースを活用すべきだと考えていました。その事務仕事を減らし業務を楽にして、その能力をお客様との関係性を構築すること、深めること集中させていくこと。それくらいしか活路がないというビジネス課題だったものですから、人というリソースをどう活かすかにかかっていたことがあります。

当行はもともと、創業時よりインターネットバンキングの部分が大きかったのですが、実態として、ボリューム人数ベースではオンラインが圧倒的ですが、収益ベースではオフラインが圧倒的なんです。そのため、何を活用したいかというゴールは、オンラインのデータ自体ではなく、データをオフラインのスタッフがいかに活用するか、というところにありました。

井上氏: これだけ変遷もあり多様なチャネルが入っているとシステム上での困難もあると思いますがいかがでしょうか?

松永氏: 作るのは簡単で、きれいなまま続けていくのは非常に難しいなと思います。先程の全体構成についても、全てと理解している人というのは、数えるほどしかいません。属人化という問題もありますが、それよりも、どこに何があるか把握していないと、何ができるかというアイデアをもたらす源泉である人に伝えることができません。それが問題ですね。

インフラ側のチームが、こんなデータがここにあるのにもったいないとか、これとこれはつながっているから上手く使ってほしいのなとかと思っても、営業やマーケティング、コールセンターの現場の方々、オペレーションの現場の方々がそのことを把握していないと、自分たちの業務を良くしていくアイデアに結びつきません。結果として、データの活用ができていないということになってしまうわけです。

井上氏: 先程私のパートでお話した「データの統合」ってすごく簡単な言葉のように聞こえますが、データの流れや種別がわかっていないと、施策やコミュニケーションにどう使えるか分からないですね。

松永氏: それぞれの部門担当者が把握していることを持ち寄って肉付けしたとしてもリソースの限界があります。結果としてそれぞれの部門での施策がバラバラに展開されたり、チャネル偏りやアンバランスさが出たりしますよね。でもそれは各々の担当者のせいというよりは、ある程度全体観を持ってグランドデザインを書く人が必要だと思います。

井上氏: これまではどなたかがそういった役割を担当されていたのですか?

松永氏: これは課題と言える点ですが、その時々、例えば新規のお客様や商品ごとのターゲットを定めてということはあったのですが、お客様全体を見て、それをどうセグメントかけるかという観点がなかなか持ってくることができなかったんですね。

田井: 大きな方向性は決め、その中である種のグランドデザインを持っていながら、施策や顧客とのやり取り、ビジネスのKPIといった切り口で見ると、ある程度個別だったり濃淡だったりが出てきていた、ということなのかと思います。

ツールのアセスメントを実施することでユーザービリティ向上につなげる

田井: 最適な顧客体験を実現するためのアーキテクチャについてお伺いします。これまで様々に基盤を整備し、実装されてこられたなかで、更に改善していこうというのはどういった部分でしょうか? 維持が難しいと言うお話もありましたが、私たちツールベンダーの視点としては、様々なツールのロゴを構成図で目にして、どういう使い分けをされているか、興味があります。

トレジャーデータ 田井

松永氏: システム、ツール、そしてデータといった技術的な点で申し上げますと、ユーザビリティを鑑みて、アセスメントを考え直しているのが現状です。若干ツールの導入が多すぎたということも反省点としてはあります。システムとツールで機能が重複している部分や、データが整理されていないことも発生していますので、シンプルに使いやすく、それでいて全体をカバーできる構成が理想かと思っています。それによって、管理の属人化も解決し、経済的なメリットもあるでしょう。使う方がサポートなく使える状態も整えなければと思っています。

田井: 一度様々なことができているSBI新生銀行様であるからこそ、いちばん大事な部分は変えずに持ちつつ整理していくというのが印象的です。

井上氏: そうですね。業界の中でも有名になっているくらいに先進的なツールを導入されて来られた中で、改めて見直しをされるのが重要いうことですものね。

田井: 見直しの提案を社内にかけられた時、どのようなリアクションがありましたか? 今色々できていているから変えなくて良いのでは? とか、どうせなら1つのツールでできないの? とか。

松永氏: 上層部に関しては、コストカット。もちろん結果的にそうなる部分があると思いますが、一方担当としての本音は、よりユーザビリティを高めて、サポートなく様々な方が使えることで、良いアイディアが出てくることを求めています。会社のスタッフにも、お客様向けにもより使いやすくなるようにということですね。ボトムアップ的な発想といいますか、いろいろな方が「こんなことをやりたい」と持ってきてくださるアイディアがあるからこそ、日々良いものが生み出していけると考えています。

SBI新生銀行 松永美生氏

一方で重要なのは、そのボトムアップのアイディアを誰が優先順位付けを行うかということ。例えば今日5本のメールがあるときに、それが実は全部同じ人に送ってしまっていませんか? ということです。その時に求められるのが、ビジネスの決め事として、セグメントがあったり、KPIがあったりするわけです。それを誰がみても明らかにわかるようになることがとても大事かなと思います。

井上氏: ツールにせよ施策にせよ、導入や実施する時点でそれを評価できるように、見える化しておくことが必要ですね。

田井: 6〜7年の変遷の中でその時々に必要なものを増やされているかと思いますが、それぞれのSaaS製品が進化しているはずなので、重複が出るのは当然ですよね。それを整理しわかりやすいシステムを作っていくときに、データの流れや格納場所をアセスメントかけていくと言う行為自体、勇気がいるアクションですよね。非常に重要かと思いますし、現場の方々が実際に使ってシナリオを組み立てていくというのが、その風土が内部で醸成されていないとできないと、改めて思いました。

企業固有のリソースやお客様に即したDXが最終的な付加価値を創り出す

井上氏: 松永様は様々なご経験からおわかりかと思いますが、よくある例として、ひとつのツールを入れることで満足してしまったり、導入が目的となるケースをよく聞きますよね。せっかく描いていたロードマップも、ひとつめを達成して息切れしてしまったり。

田井: われわれは外からご支援する立場ですから、井上さんがお話された、導入時点でアセスメントできるように費用対効果を見ることが重要だと思いました。同時に、導入から数年後、事業会社側でしっかり評価を行わなければならないというのは、これもまた大変ですよね。私の立場でいうと語弊があるかもしれませんが…

松永氏: 私がケチなのかもしれませんが(笑)、導入したツールのコストやそれに対する効果は、全て把握しています。ですから、使われていないのにコストが掛かっているものに対しては「もったいないな」と感じます。だったら他の新しいツールを試しにいれて見るべきですし、自分たちのお財布の枠内で新陳代謝させていきたい。

こういった、いわゆるDXを担当している人間が、どんどん新しい製品を使っていくことが求められていると思います。一方追加していくばかりでは時間もお金もかかりすぎる。いわば、家のクローゼットと同じですよね。着なくなった洋服を捨てて新しい洋服を買い、最新の状態にしていきたいということです。それが自分たちのスキルを高めることにも繋がります。加えて、実際に使っている方々がその効果を考えるということは、その後の企業としての可能性を広げるという意味でも重要だと思っています。

SBI新生銀行 松永美生氏

井上氏: DXに関して私たちがご提案している中でひとつ掲げているテーマがあります。それはDXを牽引する人、推進する人が大切です、ということです。松永様のように、お金のことも分かっていて、チャネルやデータ、システムにも明るい方が牽引していくことがとても重要なんだなって、お話を伺いながら思っていました

田井: グランドデザインを変えず、そのコアを持ちながら、着脱しやすい。洋服の話はとてもわかりやすいと思いました。ブランディングや顧客体験価値を大事にしつつ、様々なことを試して、最適なかたちを考える。例えばネクタイをちょっと変えるくらいの変化は許容できるかなということが、データの中身やシステムを把握されているので理解できているため、事故は起きないわけですね。この部分を切り替えたら体制に影響が出るということをわかっていらっしゃる。

アーキテクチャのあり方で一番大事なのは、お客様の体験を提供していく社内の仲間をどういうふうに作っていくのかを、松永様はすごく意識されていますね。その方々が使いやすいシステムとか、使いやすい順番で大きくロードマップを作っていかれている。

「人間はすぐに変わらない」というのが印象的でしたが、そのペースに合わせて、担当者が使いやすい状態をつくりながら、ツールにはアセスメントを行い、変更が必要であれば変えていくということなのかなと思いました。

松永氏: 企業によっては四の五の言わずにトップダウンのかたちで成功されることももちろんあると思います。しかし、企業が持っている固有のリソースを活用していこうという視点ではなく、まずDXという文脈ありきで進めた場合、どの会社もできることはおなじになってしまいますよね。その結果、DXやった価値って、単なるコストカットになりかねない。企業固有の人材やお客様に合わせていこうことで、最終的な付加価値を出したいなと私は考えています。

田井: そうですよね。顧客体験というテーマで今日はお話していますけど、みんな同じ顧客体験を提供していたら顧客から選ばれることはないでしょうね。最低限の顧客体験を提供すればよいのではなく、優れた顧客体験をどう提供していくのかということが非常に重要で、そこを目指されているアクションから生まれるシステムと、やらないといけないからやったシステムの場合、大きな差が出てくると思います。そのためには、ビジネスとデータ、テクノロジーそしてアプリケーションをどうすべきか、日々振り返っていくことが求められていると思います。最後に松永様よりメッセージをお願いします。

SBI新生銀行 松永美生氏

松永氏: ありがとうございます。通常であれば当行のサービスの宣伝となるかもしれませんが、今回は、ぜひ私たちと一緒に働きませんかとお話できればと思います。いろいろな製品、いろいろなツールが直接生で触れます。データもたくさん触れます。今後も新しい製品をどんどん導入していこうと思っています。ビジネスでクラウド系の製品のスキルを身につけることが実現できる職場だと思います。ぜひお気軽にお問い合わせください。本日はありがとうございました。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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