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アパレル大手TSIのCDP活用と集英社との広告連携

新規ユーザー流入率96.1%、F2転換率48.9%を実現

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ナノ・ユニバース、ナチュラルビューティーベーシックなど、50強のブランドを扱うTSIホールディングス株式会社(以下「TSI」)は、CDPを活用した様々な施策を通じて、大きな成果を上げています。
今セッションでは、出版大手の株式会社集英社(以下「集英社」)が提供する広告配信・分析サービス『Shueisha Data +』との連携事例を、TSIと集英社、そしてトレジャーデータの3社のパネルディスカッションで深堀りしました。広告主とメディアの新しい協業はどのように生まれ、どのような成果を出しているのでしょうか。

<目次>

集英社の全社的データマネジメントから生まれた『Shueisha Data +』

集英社は、漫画誌、コミックス、ファッション誌、美容誌などの雑誌や書籍を発行する出版社です。さらにデジタルメディアやコンテンツビジネス、ライツ、グッズ、イベントなど、幅広いビジネスを展開しています。特にデジタルメディアや電子書籍の売上シェアの伸張などによる事業拡大を背景に、集英社は全社的なデータマネジメントプロジェクトを2021年5月に発足させました。このプロジェクトは、外部データの環境変化を踏まえて、編集部を含む各部署からメンバーを集めて展開されています。

集英社のデータ活用と「Shueisha Data +」プロジェクト発足以前までの環境

集英社のメディアビジネス部デジタルプロデュース課で『Shueisha Data +』を担当する花澤 翼氏は、プロジェクト発足時「各事業部、編集部ごとに個別最適なデータ活用を行ってはいたが、全社横断でサービスがまたがるような形ではデータを活用しきれていなかった」と当時の課題を振り返ります。また、GDPR、ITPを初めとしたデジタルマーケティングを取り巻く環境の変化に伴い、全社データの活用が可能な体制・仕組みづくりが課題として顕在化したのもこの頃でした。Treasure Data CDPは、そのようなデータのサイロ化や、環境変化への対応といった課題を解消するための主幹ツールとして導入されました。

データマネジメントプロジェクトでは、まずTreasure Data CDPを使用してデータを集約するステップ1を行い、次にデータ統合を行うステップ2、そして全てのデータをSHUEISHA IDに統合するステップ3が進められました。現在はステップ4で、様々なデータ活用施策を検証する段階にあります。

集英社のデータ活用と「Shueisha Data +」主幹ツールとしてTreasure Data CDPの導入を決定。

さらに、2023年8月には、集英社のデジタルメディアやサービスの情報をTreasure Data CDPに集約し、広告主の要件に合わせたセグメントを作成して広告配信に連携するサービスとして、『Shueisha Data +』がリリースされました。

『Shueisha Data +』は、集英社がお客様の同意を得て保有する1st Party Dataを活用し、広告主様に価値を提供する社外向けサービスです。2000万を超えるモバイルIDや、200万以上の集英社IDを活用しています。

広告配信先は2つ。1つは集英社媒体への広告配信(『HAPPY PLUS ターゲティングネットワーク』)、もう1つは外部プラットフォーム(SNS広告など)へのデータ連携です。今回のTSIホールディングスとの取り組みでは、前者のプランが活用されました。

『HAPPY PLUS ターゲティングネットワーク』の特徴は、9つの集英社媒体に対して、小規模なアドネットワークのような形でターゲティング広告を配信できることです。各媒体が共通のドメインを持つため、集英社の1st Party Cookieのデータを活用しながら、媒体を横断してセグメント化し広告を配信できます。

集英社のデータ活用と「Shueisha Data +」TSI様のユーザーデータ(td_global_id)も活用のイメージ図

『Shueisha Data +』を活用し、新規ユーザーへのアプローチ

『Shueisha Data +』を活用して、効率的に新規ユーザーにリーチすることに成功したのがTSIです。TSIの大橋直樹氏と上石萌子氏が、同社のデータ活用について説明しました。

TSIは多岐にわたるポートフォリオを持つ総合アパレル企業であり、2021年に9社が合併して設立されました。購買データを中心にECや店舗のデータ、会員登録アプリの利用状況、広告接触のログを収集し、TSIグループ内でのデータ連携も開始しています。

広告による新規獲得に加え、CRMにおいてもデータを活用しています。具体例としては、Web広告ではMetaやGoogleに対してセグメント配信を行うほか、LTV向上が見込めそうなユーザーや購買意向の高いユーザー、一定金額以上の購入見込みユーザー、一定期間内に購入したユーザーへのアプローチを行っています。

また、メールマガジンやアプリでも積極的にデータを活用し、カート内ユーザーやブラウザ履歴のあるユーザーへアプローチする他、休眠ユーザーや初回ユーザーに向けて、メールマガジン、アプリ、LINEなどのチャネルを横断したアプローチを行っています。TSIはあらゆるデジタルマーケティング施策でデータをフルに活用し、成功を収めています。

データ連携と活用用途について

業界でも屈指のデータ活用企業であるTSI。しかし、デジタルマーケティングを展開する上で課題も抱えていました。それが新規ユーザーへのアプローチです。従来の手法だけでは、展開するブランドへの接点が少ないユーザーを取り込むことが難しく、新たな施策を検討していました。そのなかで、白羽の矢が立ったのが『Shueisha Data +』でした。

この取り組みでは、データ規模やデータ活用に対するユーザー許諾といった点を考慮したうえで、集英社の女性誌媒体を訪れたユーザーから、ファッション感度が高く、かつTSIの新規顧客となりえるユーザーに対して、アプローチを行うものでした。

配信前に、TSIの保有する既存顧客のIDを集英社に展開し、TSIへのサイト来訪ユーザーを『Shueisha Data +』の配信対象から除外。純粋な新規顧客獲得を目指して、『Shueisha Data  +』を通じて広告配信を行いました。TSI、集英社ともにTreasure Data CDPを活用していることで、データ連携から施策実施までをスムーズに実行できたこともポイントでした。

新規ユーザー流入率 96.1%、F2転換率 48.9%の衝撃

『Shueisha Data +』を通じた施策は新規ユーザー流入率96.1%、F2転換率48.9%という脅威のパフォーマンスをもたらしました。「新規ユーザー流入率が96.1%という数字を見た時、正直とても驚きました」と大橋氏はコメント。パフォーマンスの指標はMetaやGoogleで除外配信を行ったケースを凌駕し、1st Party Dataを活用した『Shueisha Data +』のポテンシャルが実感できる結果となりました。

さらに、初回に購入した方で、2回目以降の購入につながった、いわゆるF2転換率は48.9%。TSIでブランドを横断したWEB広告領域の施策提案や実施を担当してきた上石氏はこのように評価しました。
初回購入者を2回目の購入につなげるのは一般的にハードルが高いものです。通常の雑誌媒体などに出稿する影響もあると思いますが、『Shueisha Data +』を活用することで、私たちのブランドに親和性が高いユーザーへアプローチすることができた結果、このような成果が出たのかと思います」(上石氏)
TSIとして、自社ブランドと集英社女性誌媒体との相性の良さはある程度予想できていましたが、今回の取り組みの結果は想像以上であり、ROAS(Return On Advertising Spend)も基準を満たすものでした。

加えて、高い成果を生み出せた要因として、集英社側のきめ細やかなサポートが大きかったと、TSIで広告運用やデータ活用を行う佐藤 悠歩氏は説明します。
クリエイティブの面では、どのような訴求をするのが良いか非常に悩みましたが、集英社の担当の方にこまめに対応いただいたおかげで、成果を出せました。セールの時期であればセールのバナーを出すなど、その時訴求したい内容をクリエイティブに反映できたのは大きかったですね」(佐藤氏)

また、TSIでTreasure Data CDPを活用してデータ構築と分析を実施し、主に広告領域での効果検証を行っている菊池 美和氏は、以下のように展望を語りました。
「『Shueisha Data +』から来訪した上で購入に至っていないユーザーに対して、機械学習データを活用した広告配信を試していきたい。他のプラットフォームの運用型広告を行う際に、今回の取り組みのセグメントやカテゴリを連携させて、より高いパフォーマンスをあげられるよう施策を展開したい」(菊池氏)

メガプラットフォーマーと差別化を図り、メディア独自の文脈を出せるか

今回の取り組みにより、新規ユーザー比率、F2転換率の高さを実証できたことに加え、メガプラットフォーマーと『Shueisha Data +』では、異なる層にアプローチできることが示されたと考えられます。媒体の価値が発揮されたのではないでしょうか。

トレジャーデータの塚原は、両者の間に立ち、今回の施策を推進してきたなかで、広告主とメディア企業それぞれに示唆を持っています。
広告主に対しては、まずセグメントを連携した広告配信の実施を提案。成果を感じたら自社データを用いて機械学習などを取り入れる。さらに媒体を活用して効果の最大化を図るということ。そのうえで順序は大きな問題とはならず、まずできることから着手することをおすすめすると訴えました。

メディア企業に対しては、自社独自でターゲティング配信できる仕組みを構築する必要性を説き、メディアに集客するだけでなく、読者など集まったユーザーに対する理解をメディア独自の視点で深堀りすることを提言しています。その前提に立つと、メディア企業はメガプラットフォーマーの強みである配信効率の最大化とは異なる文脈を用意して、メディア独自の価値を模索することが求められていると言えるでしょう。

これまでは純広告やタイアップ記事の出稿がメインだったメディア企業との協業。しかし、デジタルマーケティングが大きく変わろうとしている今、顧客データを軸にした新たな協業の形が生まれようとしています。『Shueisha Data +』とTSIの取り組みは、その扉を開ける第一歩と言えるのではないでしょうか。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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