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シャープが目指すIoT家電データの活用によるスマートライフの未来

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テレビにエアコン、洗濯機に冷蔵庫まで、最新家電はネットワーク接続が常識となりました(IoT家電)。外出先からでもコントロールできるアプリ、複数機器の連携、購入後の機能追加など、メーカーはユーザーに次々と新たな利便性を提供しています。

そして、さらに大きなメリットが潜在しているのが、データ活用の領域です。機器に内蔵されたセンサーから、消費者の生活に関する多くのデータを入手し、ユーザーを理解することで、より高度なサービスに還元できます。IoT家電とCDPを活用し、家ナカにおける「データの高次化」を推進するシャープ株式会社 Platform事業推進部の中田 尋経氏に、トレジャーデータ株式会社 副社長 執行役員の田井 義輝が迫りました。

<目次>

シャープの「AIoT」とオープンプラットフォーム

シャープは「人に寄り添うIoT」として「AIoT」のコンセプトを推進しています。AIとIoTを組み合わせた同社の造語で、対応機器がクラウド上のAIを通してユーザーの暮らしや嗜好を学習し、動作を最適化するのが大きな特徴です。

例えば、冷蔵庫を通して、近くのスーパーの特売情報をインターネットから取得して、その食材を使ったおすすめのレシピを提案したり、エアコンや空気清浄機が、天気や気候、起床や外出の時刻、さらにユーザーの好みに合わせて運転を最適化する、といったイメージです。

2024年1月現在、AIoTを実現する「COCORO」シリーズとして、12カテゴリ910機種以上の家電が展開されています。

シャープ AIoTの仕組み

同社のAIoTで、中田氏が強調するのが「オープンプラットフォーム志向」。「例えシャープの社員であっても、家の中全てが自社の家電だけで構成されているということはなかなかありません」と中田氏。当然のことながら、家の中には複数メーカーの家電があり、スマホやパソコン、給湯器など家電以外の機器も利用しているはずです。

シャープ株式会社の中田 尋経氏が登壇している様子

一社製品だけで家庭内のプラットフォームを構築しようとすると、IoTの可能性も制限されます。同社では、2016年からAIoTを開始、メーカー、業種業界を横断して、柔軟に連携できるオープンプラットフォームによる設計志向を採用してきたと言います。「メーカーとしては、お客様を囲い込みたいと考えるのがこれまでの思想ですが、(オープンな仕組みを構築し)顧客コミュニケーションを優先している点に感銘を受けています(田井)」。

AIoTが実現する2つの「最適化」

シャープ AIoT家電の特徴

2人のセッションは、さらにAIoTのコンセプトを掘り下げていきます。中田氏は、「好みや生活習慣を学習して最適化」「暮らしの変化を察知して最適化」という2つのポイントを強調しました。

「最近の洗濯機は、操作のためのボタンがたくさん付いていますよね。でも、一回も押したことないボタンがありませんか?」と問いかける中田氏に、深くうなずく聴衆。

洗濯機には、シワ抑えモード、毛布を洗うモード、泥だらけの服でもしっかり洗い上げるモードなど、さまざまな機能が用意されており、うまく使いこなせば暮らしが快適になるのは間違いありません。しかし、多くの人は説明書を読んだり、カスタマーサポートに電話をして、詳細に使い方を調べたりはしないでしょう。シンプルにスタートボタンを押して、標準モードを利用するのが普通です。

ユーザーが使い方を知らなくても、AIoT機器側でデータをクラウド上に蓄積し、AIがお客様の好みやライフスタイルに合ったモードで機器の方から提案したり、自動運転するのがAIoTです。AIoTに対応した洗濯機は、アプリを介してユーザーから仕上がりのフィードバックを受けて学習し、洗浄力や水量などをAIが自動で調整していきます。

「(Webやアプリなど)デジタルサービスでは、パーソナライズされたコミュニケーションが当たり前になっています。同じことが、家電でもできるのが素晴らしい」と田井は述べています。デジタルで完結するWebやアプリと比較して、はるかに複雑で多様な要素が存在するのがリアルの世界です。そこで行われるAIoTの取り組みは、データ活用の新たな可能性を示しています。

シャープ株式会社の中田 尋経氏とトレジャーデータ株式会社の田井 義輝が登壇している様子

続いて中田氏は、時間軸にフォーカスしてAIoTを解説しました。家電を使い始めて買い替えるまでの5年から10年もの間、同じ人、同じ家族でも、仕事や子どもの成長によって、ライフスタイルは変わるものです。食事なら、若いうちは手軽に作って食べられるものを好んでいても、子どもができれば栄養バランスをより重視するようになるでしょう。子どもの進学や部活によってお弁当が必要になるかもしれませんし、さらに年を重ねれば、より健康を気遣うようにもなるはずです。

例えば調理家電が、このようなライフスタイルの変化に応じて、ユーザーの操作や面倒な設定変更を待つことなく、レシピを提案してくれたら快適になるかもしれません。生活に関するデータを日々取得しているAIoT機器なら、それが可能。「暮らしの変化を察知して最適化」できるというわけです。

田井は、「IoT家電が登場した当時に、「こんなことができそうだ」と考えていたイメージが、着実に実現しているのですね」と述べました。家電のデータ活用は、今まさに新たなステージへ向かうための過渡期にあると考えられます。

トレジャーデータ株式会社の田井 義輝が登壇している様子

高次化することでデータに命を吹き込む

ここで田井は、ここまで語られたAIoTと、Treasure Data CDPが統合する顧客データの組み合わせについて、さらに話題を掘り下げていきます。果たして、シャープは何のために、どのような家電のデータ活用を進めているのでしょうか?

中田氏の回答は「データの高次化」です。例えば、AIoT対応の冷蔵庫であれば、ユーザーの許諾を得た上で、ドアの開閉データを取得することは簡単です。しかし、生のデータそのものは大きな価値を生みません。取得したデータを分析する必要があるのです。

朝6時半にこまめにドアが開閉されていれば、朝食の調理を行っていることが推定できます。また、夕方16時に長時間ドアが開かれていれば、買い物から帰って、食材を冷蔵庫に入れている可能性が考えられます。この分析を一定期間継続することでユーザーのライフスタイルを高い確率で予測できるようになります。

このように、データを生活にひも付いた情報として扱い、生活者を理解することで、はじめて価値が生まれます。これが、中田氏の言う高次化です。

シャープ株式会社の中田 尋経氏が登壇している様子

「お客様に寄り添い、生活者をもっと深く理解し、最適なサービスをお届けしていくために、よりレベルの高い高次化データを生み出していくことが必要です。そのために、CDPの仕組みを幅広く活用していきたいと考えています(中田氏)」。オンライン/オフラインの顧客データを統合し、インサイトを抽出できるCDPは、データを高次化するまたとないツールです。

家電の連携が家を丸ごとネットワーク化する

シャープ IoTで解決可能な社会課題ユースケース例

IoT家電とCDPによるデータの高次化は、ユーザーの暮らしを快適にするだけでなく、より広い社会課題の解決にもつながります。中田氏は、家電が「どの家にもあること」を、ポイントに挙げました。しかも、日常的に使うものなので、故障したまま放置されることがありません。常に家ナカでフル稼働し続けるIoT家電は、さまざまな生活データをモニタリングし、異変を察知するのに最適な機器なのです。

シャープは前述のとおりオープンプラットフォームを進めており、IoT家電どうしをメーカー問わず連携させる取り組みを主導しています。家中の家電から収集するデータをクラウドに上げ、CDPで高次化すれば、さまざまなことができるようになります。

例えば、ヘルスケア領域での活用です。高齢者の体調変化やフレイルの予兆を、健康を損なう前に検知し、対策を講じることができます。石川県能美市の事例では、IoT家電のセンサーを活用して、高齢者の見守りシステムを開発しました。

また、防災の領域では、家電の稼働データから被災者の救助支援のシステムも検討しています。例えば土砂災害などで家が倒壊したとき、直前まで家電が稼働していれば、その家に人がいる確率が高いと判断し、救助活動に役立てることができます。音声機能付きのエアコンや空気清浄機であれば、自然災害が発生した際に家電から警報を発して、避難を促すことも可能です。

さらに、IoTエアコンの温度を、クラウドから一斉制御することもできるでしょう。各家庭のエアコン温度を少しずつ緩めることで電力消費を抑制し、地区一帯の電力逼迫の対策やカーボンニュートラルに貢献する、といったデマンドコントロールの構想も披露されました。

シャープ エッジクラウド一体で思考直データを活用するIoTへ

「シャープ、三菱電機、パナソニックや東芝など、さまざまなメーカーのIoT家電を連携させ、ひとつの基盤でコントロールするような仕組みは、既に技術的には可能でCEATEC 2023において、参考デモ展示も行いました。家電だけにとどまらず、家の中の電子機器すべてをつなげることが当たり前になる時代が、すぐそこまで来ているのです」と中田氏。

そうなれば、「将来的にはユーザーとIoT機器を音声で操作するような会話も、IoTデータとして活かせるようになる可能性があるかもしれません。(中田氏)」というように、より快適な暮らしに還元できるデータは飛躍的に増えるはずです。そこで欠かせないのがデータを高次化するCDPであり、その活用レベルが「もう一段階上がる」というのが中田氏の見立て。シャープのAIoTオープンプラットフォーム戦略は、IoT家電だけでなく、家全体をインターフェースとした顧客体験の大変革が、静かに、しかし着実に近づいていることを示しています。

トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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