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お仏壇のはせがわ「成長戦略」を支える、アプリ起点の顧客理解

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お仏壇のはせがわ(株式会社はせがわ)は「大切な方を亡くされた人々」を対象に、伝統的な様式や習慣に根ざした「供養」で、人々の想いに寄り添っています。法事は何のために行うのか? 何を準備するのか? 正しい情報がわからず、不安を抱えたまま法要を迎える方は少なくありません。はせがわは顧客のお困りごとを解決するために、アプリプラットフォーム「Yappli」で公式アプリをリリースし、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを実現するため「Yappli CRM」を導入しています。アプリや顧客データを通じて、どのように顧客理解が深まり、そしてどのような繋がりを顧客と作ろうとしているのでしょうか? 株式会社ヤプリ 執行役員CCOの金子 洋平氏が、株式会社はせがわ CRMプロジェクトリーダーの増田 年秀氏をお迎えしてお聞きします。

<目次>

多死社会なのに市場は縮小!? 供養業界で今起こっていること

アプリプラットフォーム「Yappli」は、迅速に導入でき誰でも運用できるノーコードのアプリプラットフォームです。はせがわがYappliを利用して「お仏壇のはせがわ公式アプリ」をリリースしたのは2022年6月。iOS/Androidアプリとして、商品割引などの特典のほか、お盆やお彼岸、年忌法要といったお仏壇や墓石購入後の供養に関する情報コンテンツを提供しています。

「仏壇店のアプリがうまくいくのだろうか?」という心配の声がヤプリ社内でもあったといいますが、およそ1年半でダウンロード数は14万におよび、「堅調な伸び」という評価を得ることができました。「我が社も含め、ITサービスには疎い業界」(増田氏)というなかで、はせがわがアプリの開発に乗り出した背景には、供養市場特有の課題があったと言います。

株式会社はせがわCRMプロジェクトリーダーの増田 年秀氏

増田氏が挙げたのは「高齢化・多死社会」と、それに対をなす「少子化」の問題です。「高齢化・多死社会」において、死亡者数は増加の推移をたどっています。しかしお仏壇仏具や墓石の需要は高まっていない実情があると増田氏は説明します。

少子化で家庭における子どもの数が減り、かつてのように両親の葬儀やお仏壇の費用を子どもが按分し、負担することが難しくなったことで、一人あたりの負担額が重くのしかかっているのです。お仏壇にかけられる費用単価が落ち、その市場規模は現状維持どころか縮小傾向が進むというのが、供養の業界における大方の見立てだと言います。

「超高齢化社会」「多死社会」で供養に関わる事業にとっては追い風と思われるが...?

加えて価値観の多様化が進み、供養自体のスタイルも以前と比べて自由になってきました。昔ながらの仏教に基づいた供養形式にこだわらず、お仏壇やお墓はなくてもよいと考える人が増えています。そのことは市場をシュリンクさせると同時に、顧客一人ひとりの供養のスタイルや事情を考慮した、きめ細かい対応へのニーズにもつながっています。

市場が縮小する中で、いかに一人ひとりのスタイルに寄り添うのかが課題の供養に関する業界

一方で供養という行為は、一般の人にとっては、プロのサポートなく自力で解決するのは困難です。時代は変わっても大切な人を弔う気持ちに変わりはないのですから、どこまで供養を自分の自由にしてよいのかということや、故人に失礼にならない振る舞いとはどういったことかは、確たる専門的な知識と経験がなければ、判断することすら難しいのではないでしょうか。

「私は親戚にも助けられて、家族の葬儀を執り行うことができましたが、相談できる人がいなければ大変です」と、自身も一人っ子で葬儀を執り行った経験を金子氏は語ります。「そもそも、供養のやり方がまったくわからない場合もあるのではないでしょうか?」。

大切な人を亡くして精神的なショックもある中で、家族は葬儀の方法やお仏壇、お墓、初七日や四十九日の法要と、短期間に非常にたくさんのことをこなさねばなりません。すべて滞りなく済ませるだけでも心理的な負担は相当なものです。増田氏は「やり方が分からないという背景には、正しい作法や何らかのルールに従わなければいけないという観念があるのでしょう」と理解を示します。自分が望むやり方と、本来のしきたりにどれだけ従うかというバランスのさじ加減が、葬儀や供養では非常に難しいのです。

株式会社ヤプリ 執行役員CCOの金子 洋平氏と株式会社はせがわCRMプロジェクトリーダーの増田 年秀氏

はせがわをはじめ供養業界に携わる企業は、商品やサービスを提供するだけでなく、宗教的、文化的な慣習やしきたりの案内役であり、現代ではより顧客の生活や希望に寄り添うことが大切な役割になっていると増田氏は説明します。

「供養のルールやマナーは、ネットで調べるとわかりますよね。しかし現代に合ったやり方というのは見つけられませんでした」と金子氏。いわゆる「さじ加減」を顧客と企業が共に考えることが、顧客に寄り添ったサービスの提供と体験、信頼関係の向上、そしてひいては収益の増加につなげられる可能性があると増田氏は見立てます。

商材の課題を逆手に取った顧客コミュニケーション

金子氏をはじめヤプリ社内で懸念されていたのは、仏壇や墓石の販売を事業とするはせがわでは「アパレルや化粧品のように販売ラインナップが多いわけでなく、購入機会も頻繁にある商品でもない」(金子氏)ことでした。ビジネスモデルとして一般の小売業にはない課題があると考えられていました。

「お仏壇や墓石は、一度の来店で即決し購入していただけるものでもありません。お客様のご要望や条件等をお聞きした上で様々な提案をしています」と増田氏。お仏壇や墓石は決して安い買い物ではないため、店舗を何度か訪問し、店員と相談を重ねながら検討ののち購入するケースが多くなると言います。この段階で、顧客と店員の間に信頼関係ができていると増田氏も自信を持っています。

ところが、購入後はほとんど来店機会がなくなります。お線香をこまめに買う人でも、その頻度は3カ月に1回程度。ECサイトや自宅近くの量販店で購入する人も多いでしょう。

「お仏壇のはせがわ」が抱える問題意識

店舗で構築した信頼関係が、時間の経過とともに薄れてしまうのは事業の大きな損失です。「購入後も来店いただくことで関係を維持できないか」(増田氏)との思いで取り組みをはじめたのが、公式アプリを活用した顧客とのコミュニケーションでした。

「コンテンツのクオリティがすごいですね!」と金子氏が評価するように、仏壇仏具、墓石はもちろん、お盆やお彼岸、年忌法要といった供養に関する情報が非常に充実しています。増田氏いわく「はせがわが一番強い分野」でアプリを介してコンテンツを配信しています。

占いやクイズなどのソフトなコンテンツも存在します。それらは会員の中でも比率の高い50代女性を意識したもの。毎日アプリを開いてもらえる仕掛けは「すでに構築されている信頼関係を逃さない」また「サービス以外の接点を持ち続ける」という根本の思想を反映し「ファンや顧客と深くつながるためのチャネル」と位置付けられてのことです。

「ネットで情報を調べるのが苦手な方も少なくない」(増田氏)ため、プッシュ通知を通したアプリでの発信は有効です。特に、お盆やお彼岸などのタイムリーな情報発信で、閲覧数を伸ばしています。

「お仏壇のはせがわ公式アプリ」

「お仏壇のはせがわ公式アプリ」は1年半で14万ダウンロードとユーザー数が堅調に伸びていますが、広告等での集客は行わず、ほとんどが店舗における案内がきっかけといいます。

「導入後1年が経過して見えてきた側面は?」という金子氏からの問いに、「属性データ、アプリなどの行動データ、接触頻度を把握し、購買データに紐付けて見ています」と、増田氏は説明します。アプリを活用し、お客様にどのタイミングで、どういう情報提供をしたら良いのか、データを元に顧客理解を深めていることが分かります。

「コンテンツの提供だけならLINEなど、他のツールでもよいのでは?」という金子氏の問いに対しては、当然、他のツールも検討したと増田氏は回答します。その結果として重視したのは、匿名でのコミュニケーションではなく顧客情報の取得。それがネイティブアプリを選択した理由でした。「店舗で丁寧に接客し、しっかりとお客様の情報をお預かりした上で、お客様それぞれに見合った情報を配信していくということ」という金子氏の整理に、増田氏はこう続けます。

「アプリは企業ファン向けのチャネルであると捉えています。商品や購入頻度が限られる事業を展開するなかでお客様に寄り添う姿勢を示すことで、何かあったときには、はせがわに相談しようと頼られる存在になりたいと考えています」。

株式会社ヤプリ 執行役員CCOの金子 洋平氏

供養を軸に食ギフト、相続相談へジャンルを展開

これまで「お仏壇のはせがわ公式アプリ」では、商品割引などの特典と、主に顧客のお困りごとを解決するコンテンツを提供してきました。「これが正解なのかはわからず、まだ模索している状況」と増田氏は言います。供養に関する情報は、お仏壇や墓石の購入後1〜2年は不明点が多いので見てもらえますが、お客様の知識となり自分なりの供養が習慣化することで、そういったコンテンツの必要性は薄れることが想定されます。さらに、供養についての情報発信は、すぐに収益につながるとは限りません。

では、そういったコンテンツから顧客体験の創出、そしてそこに連なるビジネスへと、今後どう展開していくのでしょうか。増田氏は「ご供養市場からは外れない」との軸足を前提に、既に着手している事業展開の構想を示しました。

そのひとつがギフトです。すでにはせがわでは、日本の「祈り」の文化を「食」の視点からとらえた食品に関するセレクトショップ「田ノ実」を運営しています。季節のギフトを提案する事業は、日本の暦や文化と密着した供養の分野に親和性が高く、アプリとCRMを活用したアプローチにも期待が持てます。

また、遺産相続に関する問題も、大切な人が亡くなったときに必ず発生し、加えて一般の知識が不足しがちという点で供養と共通しています。はせがわでは相続相談や不動産手続きのサービスを開始。アプリでも情報発信を行っています。大切な人を亡くすという大きな痛みを伴う体験に接し、その後の新しい日常に寄り添っていくのが、供養に携わるはせがわの仕事と増田氏は熱を込めます。顧客にとっては、お仏壇や墓石という有形の商品のみならず、より広いニーズに応じたきめ細かい対応、供養の専門家としての情報提供にも価値があることを、増田氏は示しました。

本セッションは、店舗での相談をきっかけに強い繋がりを作り、顧客を理解する、一人一人にあったコミュニケーションの実現に、アプリとCRMを導入されたはせがわ様のデータ活用、CRM戦略は、ヤプリ 金子氏との対談を通して、顧客に合わせたカスタマージャーニーの実現を目指す企業への力強いメッセージと共に終了いたしました。自社のCRM戦略に添合わせたアプリの開発、運用は、さらなるCX向上、今後のCDP(カスタマーデータプラットフォーム)との連携にもつながる未来を感じさせるものでした。

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トレジャーデータ株式会社

2011年に日本人がシリコンバレーにて設立。組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できるデータ基盤「Treasure Data CDP」を提供しています。デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメション)の根幹をなすデータプラットフォームとして、すでに国内外400社以上の各業界のリーディングカンパニーに導入いただいています。
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